12月の映画よもやま -マトリックスとYouTube-

 土曜午後、封切り2日めの『マトリックス レザレクションズ』をメルパ岡山で観る。

 実のところ、シリーズとしての『マトリックス』にさほど好感しているワケでもない。

 第1作めは、もう22年が経過したものの、いまだ目映い光輝を放ってるけど、後の2作は、う~~む、というのが感想。なので第1作めだけで完了し、後はま~、オマケのような感触をなが〜く持っていた。

 

 が、その22年ぶりに4作めが出て、死んじゃったハズのキアヌ演じるネモとキャリー・アン・モス演じるトリニティーがカムバックというのが気にはなり。

 という次第で映画館に足をば運び、それも……、マイ・マザ~が没しちゃったんで介護から解放されたという都合とも相まってるんで、連続で、字幕版と吹き替え版を観ちゃうのだった。チョイっと、持てる時間に余裕が出来たワケだね。

 連続といっても、昔のように、そのまま席に居座れるワケじゃ〜ないんで、字幕版を終えたらいったんチケット売り場に出て、チケットをまた買うという次第だけど。

 

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 ほいで観た結果として、

「あらま~、わるくないじゃん」

 悪態つくようなトコロがなく、いっそ、監督の努力が垣間見えて、丸のハンコを1つ押していいかもと思ったわいね。

 最初の『マトリックス』が1999年。で、22年経っての今回の『マトリックス・レザレクションズ』、その時間ギャップを感じさせない構成に眼をひらかされた。

 というよりも、必然として意識されるであろう役者達の経年(トシをとってるよね)を逆に活かした脚本と演出構成に、

「へ~」

 監督ラナ・ウォシャウスキーの”存在のでかさ”を、スクリーン眺めつつ感じさせられるのだった。

 仮想現実という土台を踏まえた上での、諸々の展開構成……、おそらく撮影に至るまでの脚本執筆時、ラナ監督は難渋し、胃がいたむような苦悶を抱えたろう、思う。

 けど、彼女は苦悶に沈まず、書き上げ、糸を紡ぎきった……。

 かつての3部作でもって1つの完結した円を描いたであろうに、その円をさらなる円環に紡ぎ直した20数年かけての奮闘馬力に、こちら感服、敬意じみた感慨を抱いたのだった。

 

 衝撃だった22年前の映像表現を越えるものじゃ~ないし、さほど大きな感動もないし、過去3部作を観ていないと理解できない部分もあるけれど、22年前の作品を22年後にうまく合致させ、そこの違和を消去させているという点で、今回のは「見応えアリ」という感触を受けた次第。

 メルパ岡山の席に座った直後は、ま~、せいぜい45点くらいの作品やろなと思ってたけど、字幕版と吹き替え版両方を観終えて、64点くらいは計上してもイイかしら……、評価アップなのだった。

 

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 その得点アップを後押ししてるのは、キャリー・アン・モスだろな。

 キアヌを演技上手とボクは思ったこともないけど、劇中の彼女は子供3人を持つ女性として登場し、その年齢ゆえの深みと幅を巧く演技し、どこか軽々とキアヌを越えている。

 過去作品のようなハデなアクションはもはや難しい年齢に達した役者としてのキャリー・アン・モスを補助すべく、仮想現実の物語という利点を最大限活かして、格闘シーンを若い女優さんにクロスオーバーさせた監督ラナの構成力もピッカピカしてた。

 逆に、64点にとどめたのは……、近頃のアメリカン・ヒーローものの集団格闘やら、続々わいてくるっぽいゾンビを描いた映画たちと同じ土俵に本作のアクション・シーンを置いちゃったトコロかなぁ。

 22年前の『マトリックス』は時代の先にあったけど、こたびのは、時代の中……、それが残念に思えて、36点ほど、値引きしちゃった。 

 

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 YouTubeでみた、ブライアン・フェリーの2020年3月13日の公演映像。

 コチラでも記した通り、世界ツアーのスタートとして本公演は、でっかいステージとして開催されたけど、直後、コロナウイルスの大拡散。

 渡航禁止でツアーはすべて中止。それで参加ミュージシャン達の1年分の仕事が吹っ飛んだ。

 なので救済を目的に、同公演のライブCDを出し、収益配当にあてているワケなのだ。

 

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           Bryan Ferry - London Royal Albert Hall - 2020/03/13

 

 この映像はむろんオフィシャルなものじゃない。観客席からの映像だ。しかもステージの上手背後からのもの。良いポジションとは云いがたい。

 しかし、観客席(アリーナ側)が常に映っているんで、レアな映像という点ではポイントが高い。様子がよく判る。

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 イッチャン高額であろう最前列あたりの観客すべて、どう見たって、若くない。

 50代~70歳代という感じが濃厚。

 ま~、そういうコトなのだ……

 ブライアン・フェリーであろうとも、時代を抱えているワケなのであって、最前列席界隈に2030代のオーディエンスは持てないのだね。

 そのあたりの実情がよ~く判って、いたく感慨させられるんだった。

 

 ロンドン最大の劇場ロイヤル・アルバート・ホールは、観客席数7000

 いま建立中の岡山シン市民会館というか文化創造劇場が2000ちょっとの席というから、桁違い……

 ステージ側面はおろか背後にも席がある。(円形劇場ゆえ)

 さらに当日券(立ち見)として1200人分が用意される。これはステージ真後ろを含む、高さが15メートルをかる~く越える場所(だから天井桟敷という)なんだけど、この映像を眺めると、そこも埋まっているのが判って、

「あらま~ッ」

 感嘆されられもする。

 

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            天井桟敷の立ち見の皆さんも、やはり中年だらけ

 

 フェリーは7000のヒトを呼べるミュージシャンという次第ながら、2030代といった世代のヒトの姿は少ないわけで、それで感嘆が感慨に変わる……

 身に沁みてくる。

 が、ひたぶるにうら悲し、とはならない。

「ま~、そんなもんだ」

 と否応もなく納得もするのだった。

 フェリーがROXY MUSICだった頃の、70年代末からのリスナーというかフアンが、フェリーと 共に年を重ねている だけのハナシ。

 

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 したがって我が手元にあるライブCDで聴こえるワ~ワ~・キャ~キャ~・ワオ~! の歓声は、概ね平均60歳越えたくらいな方々の歓喜の声なのだニャ。

 

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 なのでこういうYouTube映像は、ありがたいような、迷惑のような、不可解な妙味があって、

『陽は昇り陽は沈む』

 を否応もなく意識させられるんだった。

 否定でなく肯定として、我れ思う・故に・我れもまた、という感慨が濃厚スープとして喉元をゆるゆる通過するんだった。

 若い人がいなくってもカマワン構わん。映像の観客席を眺めるに、

「されど我れ大いに愉しむ」

 の空気に満ちていて、オ~、同胞たちよッ、結局、ニヤリ北叟笑んだワケなのだ。

 

  

             CD未収録の曲も見聞き出来て、イイのだけど……

 

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                  別の当日のYouTube画像

 

 2001年のROXY MUSIC再結成のツアーを、東京国際フォーラムで観覧したさいは、ちょっと空席があって残念に思ったけど、バックにクリス・スペディングもいて、いいアンバイなライブだった。もっともその頃はスペディングもスリムな体型だったけど、こたびの映像の中の彼はお腹の肉もたっぷりな体型で、これはこれで、ま~、微笑むっきゃ~ない。サックスはわたしが大好きなジョルジャ・チャルマース。