BONSAI

 

 某日の夕刻、谷本玉山氏の盆栽展を見学。

 逞しい作品の数々にご健勝を感じ、何やら安堵混じりの感慨がわく。

 今回は花物が多い。

 開花のコントロールが大変であろう難物が、幾つも並んでいるのを眺めると、どれだけの時間がさかれているのかと、いささかアタマが下がるような気がしないではない。

 私にゃ、と~て~出来ない。

 だから余計、魅せられる。

 いまどきの日本で、

「盆栽やってます~」

 という若い人をボクは知らない。

 でも海外に眼をむけると、メチャに多いというワケではないにしろ、それなりの割合で若い人が興をもち、BONSAI ワールドに足を踏み入れているらしい。

 

 盆栽は、大木のカタチやイメージを極小の鉢の中に生成させるというミニチュアリズムが要め。

 ミニチュア文化が長い英国やベルギーやフランスなどでBONSAIが着目されるのは、多分にそんな「人形の兵隊」やら「ドール・ハウス」などに一脈通じているからだろう。

 けども、盆栽というのは、フィニッシュがないんだね。

「よっしゃ、出来上がりだぁ!」

 というのが、ない。

 製作者本人が納得した翌日には、も~、枝が生長したり、あるいは、萎えたりで、とにもかくにも生きているワケで、そこのフィニッシュ感覚が模型とはゼッタイ的に違ってる

 ま~ま~、だからこそ、盆栽作家は次々続々に新たな鉢で、新たな作品に挑み続けるという宿痾の悦びと苦悩を味わい続けるのだろう……。

 

 海外でBONSAIがブームになったのは、1970年の大阪万国博覧会の日本庭園が発火点だったらしい。

 当時、多くの日本人にとってこの日本庭園はEXPO70の添え物的施設と見ていた感が濃ゆいけど、わざわざ来日した西洋人の眼には、鮮烈おどろきのガーデンであったらしい。

 南北の幅は200mながら、東西長さ1.3Kmというデッカイお庭で、日本における庭園史を見せるべく、上代・中世・近世・現代、という区分に分けて展開し、西洋のガーデン感覚とはまるで違うジャパンのグリーン・ワールドを提示したわけだ。

 

 で、その現代地区にあったのが多数の盆栽と水石たち。

 ここを訪ねた海外の方は、

なんじゃ、こりゃ?!

 一鉢づつの、スモール・ワールドにオッたまげたらしいのだ。

 本物の樹木でもって、その樹木の大木となったスガタを小さな器の中に表現するミクロコスミックなミニチュア感覚に、

「ガッチョ~~ン」

「やられた~ぁ!」

 うたれたらしいのだ。

 

      

 EXPO70の10年後、1980年に梅棹忠夫を中心に編まれた写真集『 日本万国博覧会10周年記念 世界の盆栽・水石』。国内では話題にならなかったけど英国などで販売部数を重ねた本。

 

 万国博覧会の46年後、2016年度の日本貿易振興機構がまとめた数字によると、同年の盆栽輸出額は80億円を超えたという……。

 トヨタやHONDAの輸出額とはケタ違いに小さい数字じゃあるけれど、1つ1つのそのサイズと造られたエネルギーを思えば、80億円という輸出額は額面以上に、おそらくデッカイ数字と思える。

 ヨーロッパ圏や米国で自宅に盆栽を置きたい方がかなりいるワケだ。〔以前にも書いたけど映画『ブレードランナー』の主人公の部屋には大きなBONSAIが置かれ、それが実に効果的だったですねぇ)

 

 いっそ、このBONSAIに、閉塞感漂う日本の秘めた真価、かつて明治になって日本人自身が捨てた浮世絵がゴッホなどヨーロッパの方々に強い刺激をあたえ、「こりゃスゴイ」と感心させたように、もっとアピールしてよい“文化的カタチ”のような気がしないでもなく、

「おじいさんの趣味じゃろ」

 っぽい、つまらん位置づけの払拭にもつながるようにも思うんだけど……、ね。

 ま~、ともあれ、開催尽力に努めた玉山氏のご子息と場を提供のPetit Pineさん(預かって水やりする苦労も含め)、さらには、展示工夫に一味くわえ、リトル・ヘルプを惜しまなかったコ~ヘ~ちゃんに、コ~ベたれて感謝の念ワックワク。

 

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 某日の夜。城下公会堂にて、ライブ。

 PAのバランスに難ありだったけれど、楽しい集い。

 アレあり、コレあり、のミックス・ジュースの旨味。

 時にバナナ味、時にシナモン味、時に爆音レモン味、酸味あり甘味ありで、飽きなかった。

 アートとミュージック……、二艘の舟の合体が何より、ヨシ。

 

 主催KUROSE氏のオリジナル曲の、シュミ的マニアを綴った歌はなかなか意味深で、ご本人もまた何事かについてはマニアだろうし、当方とてその気質の含有量が高いから……、その昂揚ゆえの悲哀が行間に滲んでいて、同氏の密やかな凄みを感じたりもしたが、ま~、今回イチバンに着目したのはピアノのIZUMI FUZIWARAちゃんだったな。

 また聞きたいと、これまたコッソリ思ったわいね。

 

 テルミンとギターとピアノ。ひさしぶりに聴いたテルミンも味わい深かった。テルミンという楽器は奏者の動きの幅が狭くって、写真ではその魅力が伝わらない。やはり動画が最適なのかな? 魅惑いっぱいの楽器であるコトにマチガイはないんだけど。