ウフーラ

 

 ちょっと前にも書いた通り、庭中央のセンダン。とにかく成長が早いのだ。

 6月末にほぼ裸同然くらい剪定したというのに数週後には、もう下写真のように葉を拡げ、今月8月にはさらに……。

 

                      7月10日頃……

                      8月1日……

 

 ニンゲン尺度でみれば尋常でない。

 なるほどニンゲンとて小学1年と6年を眺めれば、6年間の成長っぷりが目映いわけだけど、センダンの6年後を思うと、空恐ろしい。

 ひたすら大きくなろうとする意志の強さと硬さが、ハンパでない。

 

 センダンは背丈が25~30mの大木になるまで、ひたすら成長し、30mくらいになったら、グロー・アップをゆるめ、以後、放っておけば800年から1000年へと年輪を重ね増していくらしい。

 

 

 周辺を圧倒し席巻するカタチのままに、悠々たる時間を喰(は)む。

 ニンゲンでいうところの「思惟」の境地に至るのかどうかは知らんけど、イメージとしては、ま~、そんなもんだ。デカルトの「我思う、故に我在り」はヒトのことよりもセンダンを含む長寿な樹木にこそ、あてはまりそうな感もなくはない。

 

 いま、『ジュラシック・ワールド』の最終章が映画館で上映中だけど、現実としては、恐竜たちが跋扈する前までの数億年、地球は文字通りの緑の世界だったワケで、我が宅のセンダンなんぞをはるかに凌駕する途方もない樹木がモジャモジャ密茂。

 高温で多湿の環境。羽根の長さ70〜80㎝ものトンボがいた事は化石が証明している。樹高300メートル・オーバーのシダなんて~のはザラにあったかも……。

 それらが湿地に沈み、生暖かいままに堆積に堆積して、化石燃料としての石炭や石油が形成されたワケで、それだけの遺産(資産か?)を残すだけの膨大で尋常でない植物・樹木が地表をながく久しく覆っていたんだから、いちど、タイムマシンでそのリアルな景観を眺めて驚きたいもんだ。

 けど、どこまで行ってもグリーンしかないとなれば、当初は眼を見開いて、

「わ~、すっげ~」

 感嘆するだろうけど……、やがて、飽いちゃうだろなぁ、きっと。

 

 その「飽いちゃう」という気分はニンゲンの特性だよね。樹木はたぶん、「飽き」の持ち合わせがないハズで、そこを思うと、きのどくだ。

 飽くから、ニンゲンは次のステップを踏むべくアレコレ情動し行動をもするんだけど、樹木はそうはいかない。1000年のながきに渡って、ただただに思惟はするものの、

「我思う。けど、我1000年あいかわらず」

 光合成でひたすら酸素を生みつつも、八方塞がりの円環の中で、実は、悶えてる悲しい存在なのかも知れず、そこが気の毒ではなく、“木の毒”なのかもで……。

 

 6月に次いで2回目、またチョキチョキ刈り込んだ。

 

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 NaoさんとK殿下が贈ってくれた映像集の中、『TAROMAN』があり、眺めて笑い、笑いつつ超現実な味わいを堪能。画面比率4:3。懐かしさを装い、フェークをフェークのままに愉しめという危ういバランスも感じたけど、これもまたなんだか……、時代の花の1つ。

 

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 RSK山陽放送の壁面、岡本の作品『躍進』。

 1972年、同社が山陽新幹線開業にあわせて岡本に発注し、ながく岡山駅にあったけど、新社屋新造で天神町に移動したのはご承知の通り。

 そう……。亜公園があった場所に、今、岡本太郎作品アリなのだ。

 

 

 ぶ厚い信楽焼650枚によるレリーフ・ボリュームは近場に寄ってはじめて堪能できる味わいだけど、遠くからでも構図の大胆さは伝わる。

 ただボクには、“躍進”より“躍動”とイメージされる。太陽光の放射のもと、擬人化された樹木やらヒトそのものが皆な、両手あげての日光讃歌、踊り出し、

「ぁぁあ、今日もノビノビ、活きちゃいましょうや」

 って~な感じがする。

 

 

 

 このレリーフ、朝には直射光を浴び、ひどい風雨時にはきっとズブ濡れになるはず。すぐそばが道路ゆえ、排ガスで汚れもするだろう。

 そこも好ましいな。「芸術でござい」とお高くとまらないポジションに置かれているのがイイ。家屋の一部としてのレリーフ岡本太郎も頷くだろう。

 いっそ、『朝日のあたるTARO壁』と呼んでも、イイかしら……。

 

 

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  先月7月30日に89歳で没したニシェル・ニコルズさんを偲んで、劇場版の『スタートレック』を複数、観る。

 デューク・エリントンに見いだされた新人歌手だったけど、『スタートレック』のウフーラ役で誰もが知る存在になった。(日本語吹き替え版はウラ中尉だったね)

 60年代、米国TV史上初めての、白人と黒人、カーク船長とのキス・シーンは、当時の米国の方々には衝撃だったらしい。

 CNNのニュースではじめて知ったけど、ウフーラという役名はスワヒリ語で「自由」を意味し、反対や異論を封じ、彼女自身がこのキャラクター名を決めたという。

 カッコ良い女性の1人だった。

 謹んで合掌。

 でも映画の中の彼女は永遠。いつでも会えるのが、あ・り・が・た・い。

 

CBS/Getty Images