彼岸チョイ前

 

 さぁ、この土曜には、また坊さんがやってきて仏前に座る。

 お彼岸だ。秋分の日を真ん中においてその前後の3日、合計7日間が“正しい期日”らしいから今月20日~26日が該当するけど、お寺さんの檀家廻りの都合で、数日早い17日の土曜が指定されての前倒し。

 ま~、べつだん、早過ぎぃ~、と文句をいうホドのもんでなし。

 なので仏間を掃除し、ちょびっと準備しなきゃ~いけない。熨斗袋、まだあったっけ? 茶菓子は明日買いに行こうか……。

 せわしくはないけど、わずかにおちつかない。

 ちなみに、仏教系の本を読むと、お彼岸という行事は他国の仏教にはまったくないコトが判って、

「へ~っ。日本だけかよ~」

 ややあきれる。

 というコトは、何を意味してるんだぁ? お寺さん維持のための方便かいなぁ? などとヒッソリ思ったりもするんだけど、来てくれる坊さんに、そのむね、告げるワケでなし。 

 

 だけども、昨年9月のお彼岸参りではマイ・マザ~が健在だったことを思うと、彼岸と此岸、その二極の距離と、その幅の意味を、意識させられもするのだった。

 

 で、彼岸とは関係もないけど……、3枚組Blu-rayGet Back』の1枚めを観て、懐かしいはずのものが何故にこれほどに鮮烈で、かつ緊張するものとして眼前スクリーンに映ってるのか……、奇妙をおぼえている。

 しかも、全8時間に及ぶワケゆえ、一挙3本見て通過させてしまうのが、あまりに惜しいと……、ヘンテコな貧乏性めいた気分も味わいつつの、ゲット・バック。

 ジョージ・ハリスンがジョン以上にズバズバ意見する場面、あるいはギター奏者として自分はクラプトンのようにはいかない……、吐露する場面などなどなど、おどろき連打の4ビート。

 

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 その昔70年代、大学に、家がお寺さんという同窓生がいて、そのコいわく、ときどき真夜中、家の廻りをお墓全体がグルグル廻る……、んだそうで、高2の時に、またぞろその感覚に囚われ、窓を開けたらホントに廻っていると見えたんで、翌日の夕飯時、住職である父親にそれを話したら、

「ぁあ、ときどき、廻るよなぁ」

 平然と返されて、

「わたし、笑っちゃったわよ~」

 これまた屈託なく、そうボクに教えてくれて、こちらの方が面喰らったコトがある。

 

 彼女は今はどうしてるだろう?

 跡取り娘だったゆえ、婿養子をもらって、そのヒトが坊さんとして住職になってるのかな?

 で、あいかわらす、グルグルと墓は廻ってるんだろか?

 フッ、と懐かしく思いだすと同時に、Let it Bleedのジャケットが頭に浮かんだ。

 

 

 いいねぇ、なんど聴いてもゾクゾクするGimme Shelterの出だし。45回転のシングルでなくLPの33回転に実に似合っていた、あの出だし。

 ストリーミングじゃ、ヴィジュアルとして音が廻ってる感覚って~のは、味わえんわなぁ。CDも回転するけど、33回転のグルグルとは違うよねぇ。

 レコード盤へのノスタルジ~を云うのではなくって……、曲を聴くその感覚の違いを、いまだうまく言葉で表現できないのがもどっかしいけど。

 

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 4日後、エリザベス女王2世の国葬

 ボクが生まれる前より彼女は、英国とその連邦14カ国の君主として、世界を見つめ、誰よりも多くの諸々を見聞きしたはず。もてなされるままに最高で最良の諸々もまたたくさん、味わったはず。

 一方で、多くの権限を持ち、もっとも政治に近い所にありつつ、それに口出し出来ない立場の悶々、かつ、家族のアレコレをも抱えて、おそらく休まるところなき日々だったろうとも、思う。

 それら激動連打の中で、確固として揺るがない英国連邦の定点であろうと奮闘されもしたろう。

 その奮闘努力の痕跡を、彼女はあの微笑みでもって、見事、覆い包んでた。

 人類史の中で、たぶん、もっとも、そのスマイル顔が知られた女性でもあったろう。

 

 1965年10月に女王よりBeatlesに勲章(第5級勲位)がおくられたさい、ロンドンで販売された記念メダル。長髪の20代の青年4人に勲章授与というコトで同列の勲章をもらってた英国退役軍人さんたちが猛然と反撥というようなコトもありましたなぁ

 

 女王の国葬でもって、感触として、20世紀が真に終わるような感が、ある。

 すでに21世紀も20年ほど経過しているけど、さっぱり21世紀の味覚なく、彼女が去ったことを軸足に20世紀のエンドを意識すると、手から離れた風船みたいに、どこに向かっているのか判らんチ~ンの21世紀は、実にまったく頼りなくって危うゲ~。

 ぁあ、いやいや違うっ。20世紀とて危うかったんだけど、英国クィーンは渋顔見せず、眉間に皺よせず、モナリザめく笑み続けていたというトコロがよく、その笑みに鬱屈を緩和させられた方々もきっと多くあったろうと思うと、英国という一領域にとどまらず、存在そのものが希有な、文字通りの大粒の玉石だった。

 おつかれさまでした、と、20世紀と彼女を哀悼する。

 で同時に、20世紀が産んだBeatlesやRolling Stones、CreamやHollies、Pink Floyd、Bowieたち数多が自分の中で継続してガンゴン鳴ってるのを、ありがたがってもいる。