冷たいご飯

 

 さてと前回は、第20回目となった『中銀前ジャズナイト』の前日に本ブログを記したわけだけど、こたび明日6日は、ルネスホールでの『Revival of JAZZ UNDER THE SKY』なのだった。

 なにゆえの「リバイバル」と訝しむ方もいらっしゃるだろうけど、コロナ以前、下石井公園での4000人規模のビッグなステージに何度も登壇してくれたShihoさん(フライド・プライドとして)TOKUさんを迎え、新たな家屋が建ってもはや大型イベントの場所でなくなった下石井公園での良きイメージを追想……、というようなニュアンス込みでの「リバイバル・ジャズ・アンダー・ザ・スカイ」。

 ルネスホールはあくまでホール。アウトドアじゃ〜ないけれど、インドアだって、空の青さとその元での活き活き音楽はイメージ出来よう……。

         

 

 なので例によって準備がため、早起きしなくっちゃ~いけない。かといって、そうヒドク早いわけでもない。ShihoさんやTOKUさんと楽屋で言葉を交わすのが楽しみだ。

 

 過日10月1日の『中銀前ジャズナイト』は、朝8時20分に会場入りで機材搬入からはじめ、アレありコレありしつつ本番は夕刻6時半から。

 想定を上廻る入場者で開場と同時に席は埋まり、立ち見の誘導やらやらで世話しなく動き廻り、片付けも含めいっさい終えたのが夜10時半。およそ15時間の長丁場。

 毎年のことながら吉野家で遅い夕飯。けど疲労困憊でメニューを眺めるのもヤヤ面倒。

「ぁりゃ、今日から牛丼も値上げなのね」

 収入は増えないのに食品がドンドン値上がりする不都合にブ〜イングしつつ、ビールと並盛りをモグモグ食べてるさなかにゃ、もう眠くっていけね~。

 

 明日はどんなアンバイで進行するんだろう? 主催の一員としていつもの通り、小さな不安と大きな期待を抱えて、いま、この時間を過ごしている。

 

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 ごく最近、江戸時代の食文化についての博士論文を読む機会があって、つらつら読み通してみるに、重大な欠落があるのに気づいて、

「詰めが、あまいぞ」

 小さくひっそり呟いた。

 同論文では、江戸庶民は「かけ飯」を食べることが多かったと指摘し、

 かけ汁を作り、飯の上から汁をかける方法である 中略) かけ飯は現在のお茶漬けの形式にして食べるようで、すでに江戸時代に流行していたようである。

 と、結んでる。

 う~~ん。そうじゃないでしょう。

 この、若い方の論文には、ご飯を炊くという行為のバックヤードとしての経済感が欠けてるんだな。

 スイッチ1つでご飯の保温が出来る今じゃ~ないんだ。

 ご飯を炊くには、がいる。

 朝炊いて、夕にまた新たに炊く……、というようなコトは江戸暮らしの庶民には、まず出来ないんだ。

 だって、山に入って薪を取ってくるなんて~コトは出来ないんだから、薪や炭は買うわけだよ。必ずしもメッチャ安いシロモノじゃ~ないんだから、1日に2度もご飯を炊くという経済的ユトリも生活のユトリも、ないはずなんだ。

 そうでなくとも江戸っ子は、見栄張って、高額な初物を買って喰らったりで、生活の中の支出バランスがヘンテコなのだ。

 なので、ご飯は朝に炊き、昼食・夕食は冷や飯というのが常だったのが江戸時代の実相だ。(夕方に炊いて翌朝は冷めたご飯を食べるというコトもあったようだ)

 

 冷めたご飯は嬉しいものじゃない。ならば、それを補う手法としての「かけ飯」が生活の工夫として出てくるのは必然であって、「流行」とかいったレベルじゃ~ないはずなんだ。

 

 時代考証を極めてしっかり押さえて映像とした『たそがれ清兵衛』では、真田広之演じる下級武士宅でも、冷や飯を「かけ飯」にして食べていた。味噌汁らしきをご飯にかけて食べていた。

 

武士の家計簿』では、下級の武家ではないけども、堺雅人演じる御算用役人の家の夕食シーンでも、冷めたご飯のようだったし、描写の仔細に徹底的にこだわった黒澤明の『用心棒』でも、宿場町の居酒屋ケン飯屋の主人が三船敏郎演じる主人公に、

「飯は冷たいぞ」

 ことわり入れて食事を出す。それをとっくに承知して主人公は、平然と、囲炉裏にかけられた鍋の芋と汁をご飯にかけて喰らうんだ。

 

 我らがキムタク主演の『武士の一分』の夕食も、シーンとして明確に示唆されてはいないけど冷めたご飯だ……。茶碗を口にあてがい、キムタクが搔っ食らうトコロからも、それが冷めたメシというのが判る。

 

 ご飯を炊くという行為には、とにかく薪が必要なのであって、費用を思えば、そうそう易々には炊かれないのがご飯なのだ……。

 なので、良く出来た論文で参考になるコト多々でもあったけど、ご飯を炊くための経済という視点が欠けていたのが、

「玉に瑕じゃな~っ」

 ひっそり、こっそり、思うんだった。

 ちなみにアナタ……、最近、自宅で冷たいご飯を食べたコト、ありますか?

 たぶん、ないっしょ~。そこが江戸時代との大きな「喰い違い」ですねぇ。

 

 さてと明日のルネスホール。どのタイミングでご飯食べようか?

 おそらく何やかんやで、イベント終了後にやっと……、なんだろうなぁ。

 ま〜、これも自分にとっては年に数度あるかないかの特殊事情の1つ。大いにそれを、愉しもう。