さぁ、年末です。あと10日も経てば新年。
という次第ゆえ、親戚宛の年賀状をば、書きます。
そも、年賀状は出さない主義で通しておりましたが、マザ~が没っす2年ほど前より、筆を持てなくなった彼女に変わって親戚向け賀状のみ出しており……、ここでやめるのもナンだし、これのみ継続であります。
メンド~といえば面倒だけど、普段は思い出しもしない親戚の顔を、チラ~ッと念頭に浮かべるのは、ま~、わるくはないですね。
ほいじゃ~友達や仕事関係者にも出したら? というような見解もありましょうが、それはソレ、コレはこれ。
賀状を出さなくとも友達は友達として、例えこの数年、あるいは10年会ってなくとも大事極まりない位置に鎮座しておりまして、賀状の有無はカンケ~ないのでありまするぅ。
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星新一に『夜明けあと』という本があります。
大判で全15巻からなる史料本『新聞集成 - 明治編年史』から、明治期の事件や事物を選んで抽出し、そのままではなく、星新一1流のショート・ショート的超短文にまとめあげた本で、これがアンガイおもしろいのです。
星さんが「おもしろいや」と眼にとめた記事達なんだから、彼がアレンジする前から既に愉快が踊ったり驚きがシコ踏んじゃってるワケですけど、それらをショーティに刈り込んで辞書のように羅列したコトで、素材に旨味が加わって、いっそうダイナミックに、お・も・し・ろ・い、んです。
『新聞集成 - 明治編年史』全巻 図書館などは購入するだろうが一般人はほぼ買わないであろう本。旧漢字かつ旧仮名遣いゆえ読みにくい……
その全15冊の大部な過去の新聞記事から星新一がチョイスして、彼なりにまとめあげたのが本書。
そういう性質の本だから、どっから読んでもイイ。読むというより眺めるみたいな感じですか。
明治という時代の明や暗、政治的状況を含めての、マジメやらハチャやらメチャやらグッチャラケやら、
「へ~っ」
「おや~?」
「は~っ」
「なんとまぁ~」
ちょこっと空いた時間にページを開き、行き当たりばったりの拾い読みに最適で、この1冊……、年末にうってつけ、であります。
例えば、こんな調子––––––––––––
● 明治四十二年(1909)
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ピアノの国産化は山葉(やまは)氏だが、バイオリンも鈴木政夫氏が成功(大朝)
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自動車、東京だけで、なんと三十八台。うち、国産は八台、馬車、人力車は、ほとんどふえない(国民)
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陸海軍が外国より軍需品購入に関し、リベートを取ると、議会で問題になる。集団でやるので発覚しにくいと(読売)
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昨年に米仏を回って帰国の、永井荷風。作品『ふらんす物語』が発禁になる。
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韓国皇帝、国内を巡行。爆弾などの噂あり、伊藤博文総監その車輌に同乗す(報知)
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香港の華紡(水上レストラン)で爆竹から大火災に。歌妓など三百人が死に、ほかにも負傷者千名の惨事(国民)
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東京市が米国ワシントンの、ポトマック河畔の公園に、桜二千本を寄贈(大朝)
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横浜での不良少年、堕落学生などの集団の愚連隊。警察が追い散らしたが、翌日今度は不良少女の集団が出没(万朝)
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社会主義者の北山という男。美人に一目惚れし同居。同志の平林という男、すきあらばと近づく。両者いがみあい決闘となるが仲裁が入り中止。しかし、女性は仲裁男性と駆け落ち(報知)
ねっ。たったこれだけ抜粋しただけでも、「ほ、ほ~」でしょ。
YAMAHAって山葉という方が造ったのね。(山葉寅楠氏が明治22年に創業のオルガン製造の山葉風琴製造所。ピアノは明治33年に山葉氏と同社の技術者・河合小市がトライし、アップライトピアノ開発に成功。河合はその後に独立しカワイ楽器を創設)
明治42年には東京に38台も車があるという驚きが新聞に載り、それを後世の星新一がピックアップして逆にその少なさに驚いたり、今年だっけ、007でもロケされた香港の水上レストランが沈没しちゃって姿を消しましたよねぇ……。
ま~、そんな『真実で裏打ちされた小話』が安政5年から明治45年にかけての54年分、たっぷり、ズラ~~、ビッシリ~っと並んでるんだから、頼もしいのです~。
一方でまた、年数ごとにページをめくっていくと、長い鎖国の時代から開国に転じたゆえの歪みに裏打ちされたリキミも否応なく垣間見えます。この世には美味い食事が多々あるけれど、旨くて美味しい政治というのはホボないんですねぇ。そういうコトもチラリ~ンと感じさせてくれる本です。
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さぁ~て、これをもちまして2022年の本ブログは、お・し・ま・い。
チョイと早い冬休みです。
来年こそ、「良い1年だったにゃ~」といえるような年になればイイのですが、どうでしょねぇ。
たぶん、う~~ん、トホホ~な繰り返し…… なのでしょうが、ともあれ、良い年が来ますよう祈念します。
大きく期待はできないけど、希望めいた灯火が、小さい明かりであろうと消えず点灯し続けているよう、願います。
本年もおつきあい、ありがとうございました。新年が到来し、正月気分が抜けて慌ただしくなり出した頃合い、いわば『夜明けあと』に、またお会いしましょう。