398円 → 498円

 

  新年この1月になって近所のスーパー店頭に、昨年ヒンパンに買って食べた「豆ごはん弁当」が並んでたんで、

「おや、もう豆ごはん、出たのね」

 好感して、レジに運ぼうと手に取ると、

ゲッ!

 値段あがってんじゃん。

 それも、398だったのが498だよ。好感急降下。

 モロモロ食材が高騰してるから2030円値上げされても仕方ないけど、100円アップって、あっ、あげすぎじゃない?

 年末のカー・ショップに並んでた398万円の車が、正月あけると498万円にすり替わったに等しい、ハチャな値上げ。

 なのでレジへは運ばず、

「買ってやらんわい」

 プイッと背を向けた。

 

 

 以後、1月中、断固買わんぞのスタンスでいたけど、けどだねぇ……、そのスーパーに行くたび、食材コーナーの「豆ごはん弁当」に眼が向かうんだ。

 なんだか先方が必死こいて、こちゃらを呼んでるような感がしないこともない。

 喰えば、そこそこ美味いコトも承知しているんだ。100円アップに腹がたつけど、豆ごはんは好きなんだ。好物が眼の前にありながら心閉ざして鉱物になってるのも、どうもヨロシクない。

 

 それで、食材コーナーの前を行ったり来たりし、苦悶の表情を峻烈にさせて大いに悩んだあげく、

「ええい、この便乗値上げ品めぇ~」

 口惜しい思いが充満しているけど、お豆の誘惑に負けちまった。パートのレジのオネエサンのレーンでなく、セルフ・レジでこっそりコマメに精算した。

 

 

 これがフランスあたりだと、きっと、

「不当な値上げだ~!」

Contre les hausses de Prix!」

「値上げ断固反対ぁ~い!」

Je suis en Colère !!」 ← ボクちゃん怒ってるんだぁのフランス語

 抗議の声があがり、揃いのグリーンのTシャツなんぞを着てプラカード掲げ、豆ごはん弁当愛好者達が一同に介し、スーパーの駐車場あたりでデモ行進し、スーパー側の要請で駆けつけた警察隊とにらみ合い、小競り合いになり、ついに、プッチン切れたヤツが、

「鬼はソト~~!」

 若い警官さん達に手にした豆を投げつけたんで、威力業務妨害、逮捕~っ、トホホ~、って~なコトになるんだろうけど、ここはジャポンだ、抗議のデモも声もあがらない。

 グリンピースを投げたりもしない。そも節分にも早い。

 という次第で、孤独の豆ごはん愛好者のボクちゃんは、流されるままに、398円から100円アップの弁当を黙して買って、家でモクモク食べるんだった。

「ぁぁ、やっぱ、旨っま」

 と舌は素直に喜ぶが、敗北の塩味も濃かった。

 

 

 398円が498円に値上がっただけの話ながら、このアップの背景にどのような構造が横たわり、どうイビツなモノなのか……

『世界で最初に飢えるのは日本』という本を読んだけど、政府の指示で北海道だけで14万トンの牛乳生産を減産しつつ、一方で13.7万トンの牛乳を米国から割高で輸入しているヘンテコリンな国家ゆえにの、これはその綻びの、糸がもつれた不細工の、端末的一例なのかも知れない。

 

           

 

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 過日の25日、全国的に大雪になった日。大阪宛の小包1つをクロネコヤマトに持ち込んだら、

「物流すべて止まってまする」

 とのコトで、通常なら翌日には配達できる距離ながら、結局、先方に届いたのは3日後だった。新幹線は動いてるけど、道路網はズッタズタだったのね……

 ま~、自然災害だから仕方ないねぇ。実際、25日の朝日新聞香川県で印刷している関係で配達されず、翌26日に、26日朝刊と一緒に配られた。わずか1日遅れだけど、もう新聞じゃ~なくってシンブンシに成り下がってたのがマザマザで滑稽だった。  

 荷物とて新幹線で自分で運んじゃえば、その日の内にまる〜く修まってたんだろうけど、それじゃ〜逆に面白くなかったろうねぇ。

 荷物まだ来ないよ〜、と先方の首が伸びに伸びてキリン化してるのを、こっそり嗜虐的に想像出来たのが、こたびは、よろしかったのだ。

 

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