赤胴鈴之助

 

 実のところ、その名は幼い頃より知ってはいたけど、読んだコトがなかった。

 ぼくが生まれた同年に『少年画報』で連載がはじまった漫画だけど、身近にあるようで実際はそうでもなく、モノゴコロついてからは、

「いまさら読んだってしゃ~ない」

 とも思って、ず~っと接したコトがなかった。

 そも、自分にとって、生誕直後のモノゆえ、古めかしいでしょう…… という思い込みが強かった。

 ライブで楽しむには幼すぎたワケだ。

 

 しかし川の水は流れに流れて、当方のココロモチも変化あり。

 近頃は、新しいモノより古いモノに旨味が多いとも気づいているんで、機は熟したか……、懐古としてではなく、よ~よ~、『赤胴鈴之助』に辿り着いた次第。

 

 全巻すべてを読み通したワケでもないけど、フムフム、なるほど面白いや。

 支那服に中華ハットかぶった中国人が道場破りにやって来るといった、今では描写されないであろう性質のヘンテコリンな所も含めて、総じて、お・も・ち・ろ・い。

 

 

 ただ当然に、これが月刊ペースで連載された昭和29~35年頃の少年のような眼には戻れないから、ワクワクハラハラは沸かない。

 何を面白がってるかといえば、過去となった時代の中の漫画ゆえの、その時代的空気感だろうな。それに清廉をおぼえ、かつ美味しいと感じてるワケだ。

 ま~、そういった意味ではノスタルジ~的ではあるんだけど、コマ割にしろ展開にしろ、今このように描かれるコミックスは皆無だから、逆説な鮮度があって、眼に醍醐味が飛び込んで来る。

 

 赤銅という性のコトに無自覚に接していたけど、これはアダナというか通称だった。なので、

「あらまっ」

 金野(かねの)という性がチャンとあることに小さく驚いたりもし、いまさらながら、ようやく初めて、近場にある山の頂きに登ったような悦びを味わった……。

 

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 4日ほど前、郵便局から電話アリ。

宮古島からの船便に遅れが出て、配達が遅れております」

 とのこと。

「んっ、何っ?」

 宮古島といえば沖縄県。台風直撃ナンバーワンの離島じゃないの?

 まったく心当たりがないんで、キョト~ン……、としてた翌々日、宮古島発のゆうパックが到着。

「あらまっ!」

 差出人は、チョイっと前に鹿児島から焼酎のミニ・ボトルを送ってくれた、一廻りほど若い、福山の我が友Y君。

 封を解くと、宮古島で作られた泡盛が1本入ってた。

 

 

 なので即に、前回同様に福山に電話。

 あんのじょう……。

 こたびは宮古島界隈にヒズ・マザ~と旅したそうで……、驚くべき海の色を堪能しつつ、ミニ・ボトルではないサイズのをお贈りしたとの由。

 離島からの発送ゆえ送料がメッチャ高く、安いお酒を送ったら送料の方が高くなってしまう。なのでヤヤ高いのを送ったという。

 もちろん、メッチャ・クッチャに有り難い。

 嬉々炯々として礼をいう。

 

 と、それにしても、Y君親子は立て続けで、北海道、鹿児島、宮古島界隈と長距離な旅行の連続だぁ。

 訝しんだけど、すぐに理由もわかって、大きく頷いた。

 

 Y君の妹は、一昨年に死去している。

 心臓に問題があって幾度か手術もして、けども20代30代の頃はとても元気で、ルネスホールでのジャズフェスのイベントにも何度かわざわざ来てくれたりしていたのだけど、40代半ばになって急に……、という次第だった。

 まったく口惜しい……。

 Y君は無論ながら、ヒズ・マザ~が受けた悲しみの大きさは、計りようがない。加えてコロナによる規制がイチバンにきつかった頃だったので、葬儀とて家族2人のみという二重の憂苦を味わったはず……。

 昨年、弔問したさい、

「こたびは、いけませんでしたなぁ」

 と当方コトバ少なく申したら、母堂はうなだれたままに、

「ほんに、いけませんでしたっ」

 短く返してくれたけど、その短かさに悲嘆の長く太い消息が凝縮してた……。

 

 なので一周忌を過ぎた頃より親戚の方々が何かと心配し、コロナ騒動の間隙をぬって、気分の転換をと、母堂に旅をすすめ、いざなっていたようなのだ。

 それで親戚の方々とのツアーにY君も同行……、というのがコトの次第。

     

 当方は、そのオコボレみたいな感じでお土産を頂戴しているワケなのだが、宮古島の古酒を眺めつつ、『赤銅鈴之助』がリンクした。

 この漫画の基本旋律は、親子の情愛と師弟愛と友愛だけど、その親子の情愛部分とY君の旅行が、「愛の透明な濃さ」として、妙にマッチし符合した。

 ま~、ブログに記すようなことではないのかもしれないけど、昭和前期の漫画の中の親子も令和時代の親子も、LOVEあってのものなんだなと、痛感させられ、時代のうつろいなんぞは関係ない「不偏な心」というものを、再確認させられた。

 またまたビートルズを持ち出すけど……、『All You Need Is Love』、愛こそはすべてを濃く感じさせられて、ジンワリ嬉しくもあった。(ジョン・レノンの歌詞は単純な愛礼賛でない)

 ぁあ~、もちろん、上質な泡盛が眼の前にあるのも嬉しいかぎりだけど、しかし、赤胴鈴之助君はお酒はどうやら呑まないようなのだった。まして泡盛など。

 というか……、今のメ~で見れば彼は未成年者でしょう。だって少年剣士というくらいだもん……。

 けどリアルな江戸時代の慣習でいえば、成人年齢は12~16歳という次第だから、鈴之助君が呑んじゃ~いけないワケでもなかったんだろうし、漫画の中でも、やがて良き友となる竜巻雷之進君は居酒屋で吞んで荒れてる描写なんぞもある……。

 ま~ま~っ、そこは、いまさら、どうでもヨロシイな。 

   

             鈴之助君と雷之進君     (C)武内つなよし