矢野さんの歌声

 

 久々に夜の街に出る。

 ロッコツを傷めて以後、吞みに出るのを自粛というか、用心というか、家吞みに終始し、なのでズイブンにお久しぶり~な感じでチョイ新鮮。

 ま~、こたびはかねてより予定していたワケだけど、たかちゃんの店で、矢野啓三郎さんの歌声を聴く。

 岡山在住の不動のボーカリスト。たかちゃんはかつて彼にジャズ・ボーカルを学んだので、師弟の関係。

 ベースにサトウヤスオ御大。

 こたびはノーチャージでの異例の身内的な催し。

 とはいえ当方、矢野さんとさほど懇意なワケでもない。

 もうだいぶんと前になるけど、彼のCD「桜」を買ってしばし愛聴していたコトがあるにはあるけど、時にどこかのBARでバッタリ遇ったり、どこかで歌声を聴く程度で、親しく話したコトはない。

 けどもいつも、その佇まいに清廉を感じてはいて、ベチャっといえばカッコ好いと当方が想っているヒトの1人。

 カッコ好いと想う岡山在住のミュージシャンは、そんなに多くない。

 DATEさん、黒瀬さん、福武さん、矢野さん、サトウさん、池田さん、などなどなど……。皆さんスタイルやスマイルが違うけど、音楽の陽射しの中を飛んでるイカロス達。

 イカロスは一気に高く登ろうとして翼を焼かれたが、我が敬愛の皆さんは無茶しない。けども羽根をピンと張って飛行しながら、嗜好は違えど、中空に音楽でもって宮殿を創り続けるアーキテクチャー、建築家としての永劫感覚を同じくして、かつ、根っこがすこぶるピュア~。

 そこに“信”をおけるよう想ってる。

 表現者としての澄明な視線を維持し続けてらっしゃる姿勢に、惹かれる。

 ま~、そんな理屈っぽいコタ~どうでもよろしい。

 たかちゃんの店のさほど広くはないけど居心地良い空間でアルコールを口にしつつ、醸されたゆるやかな時間を食(は)んだ。

 ハシゴ酒をと当初は思ってたけど、矢野さんの歌声とサトウさんベースの、その波の豊穣に浸かり、この夜はこれにて円を閉じ、シメとしちゃお~と、そう心変わり。

 浮遊感あって昂揚も上昇したミニ・ライブだったと、雨あがりの、帰りのバスの中でニッタリ北叟笑む。

 終演後、ボーカリストの昌子さんとのスリ〜・ショット♥