マンボ

連休があけて、やっと休みが取れる人もある。
そんな人と一緒に久々にマンボに出向く。
マンボは古くから岡山にある大衆的な焼肉店
いっときは足繁く通ったもんだが、馴染みだった従業員のおばちゃんが辞めてからはいささか遠のいた。
傍らに立って注文品をササッとメモするのだけど、おばちゃんのその字がびっくりするほど綺麗。
立って片手にメモを持ち、さらりと記すんだけど、とにかく流麗な文字で、常々に感心したもんだ…。片手を机にして字を書くというのはアンガイ難しいもんなのに、実に美しい文字が紡がれるんで、もうそれだけで密やかなフアンになったもんだった。
その彼女が辞めてもう数年。
たしか去年はただの1度も出向いていない。
今、高名なイラストレーターの作品展を開催中で、連休明けにやっと1日休みを持てた同行者によれば、
「2年ぶりくらいじゃないか…」
とのこと。

七輪を使うから油煙があがる。
メガネはハズした方がいい。
まずは常套、ビールにタン。
タンはレモンで。
ここではロースよりハラミがうまい、と思える。マンボには、なにかそういう雰囲気が店内にあって、1等より2等の方に軍配が上がるような感触がある。
トントロもいいな。
やれた椅子。くすんだテーブルに壁。
そこが大衆的というもんなんだけど、マンボの旨味の核となるのはタレだよ。
自家製のタレがいいんだね。肉にうまくからむ喰いつき、浸透力が上等なのだ。甘みと辛みのバランスが少しだけ辛味に傾斜していて、ニンニクの配分もいい。なのでハラミで充分な満足が得られる。
小皿のタレに焼けたハラミなりトントロなりをちょっと浸け、ちょっと浸け、を繰り返してる内に肉汁がタレに馴染んで来た時が最高にヨロシイ。
多くの焼肉店のタレは、ちょっと浸けを繰り返す内に味が薄まっていく感じだけど、マンボのタレは芯が太くなってく感じ。
辛味がたって来る。この絶妙な変化がマンボの秘密。
久しぶりに味わうから余計においしいし、ビールもうまいわな。
ビールがうまいから、さらにお肉を注文し、お肉がうまいから、さらにビールを追加する。
この循環が醍醐味。

途中にmiphoちゃんもやってきて、miphoちゃんというのはお友達。
いわばA面を堪能しきり、miphoちゃんの到来でレコードのB面にとっかかるみたいで、満足の重量感アップずっしり。
七輪での肉焼きはユッタリに限る。
性急にたくさんに肉をのせると脂が炭に落ちて、これが油煙の原因となるし、肉に炭の微細粉がついて黒くなる。
だからユックリ。時間を急ぐな。
今回は、A面とB面という2部構成が幸いしてか、1分を120秒くらいなスローに展開させたがゆえか、炭はよくおこり、綺麗な紅色で燃え続けてくれた。
だから、マンボだ。
ゆっくり泳げ。ユルユルと焼け。
より正しくには、焼いちゃいけない。炙るんだ。
ヨモヤマな話をしつつ、海苔巻きみたいにキムチでゴハンをくるんでハフハフハフ。
半分ほど噛んだところで良く焼けたレバーを、もちろんタレをつけ、口に入れモグモグすれば、肉と米とキムチの多層で重厚な大陸的な豊満の熱味を味わえる。
「あ〜♪ 喰った喰った〜♪」
身体中が笑った火曜日。