犬島でノンビリする


連休中の某日。
犬島に出向く。
連休だし、現代アート中心の瀬戸内国際芸術祭の期間でもあるから、ゆえに人も多いかしらと思ってたけど、多いかな〜、なんてもんじゃない。想定したより3倍くらい、多かった。
宝伝港と犬島をつなぐただ1隻の船あけぼの丸はたちまちに定員オーバー。よって船は乗客全員をさばくために3往復。
ボクはアートをみたいワケではないから、多くの人が集う方角には足を向けない。
島は小さい。
通常の歩調の4分の1の速度でダラダラしちゃっても、島内は40分くらいで一周出来る。
船からおりて、前や後を歩いてた影がやがてまばらになり、終いに、誰もいなくなる。

昨年9月に坂手洋二と劇団・燐光群が野外芝居『内海のクジラ』を行った入江は、あんのじょう、人っけがない。
なので、見渡す海はぜんぶ… ボクのもの。
気持ちが良いね〜。
持参の弁当をひろげて、しっかりとくつろいだ。
沖を通過するタンカーをみやり、何分後に、その航跡としての波がやって来るか、ひっそり計測してみたりもした。
チャプンチャプンと波の音。
日差し。
揺れる緑の藻。
潮の香り。
スーパーで買ったありきたりの弁当ながら、場所がダシになる。うまい。
瀬戸内ゆえ、大洋の広大さはないけども、海は海だ。
気持ちがいい。
藻を揺らす波の永遠めいた動きがすこぶる、いい。
何かを覚醒させてくれるようだし、一方では、甘睡を誘われもして、おまけに誰も来ないから気持ちが、いい。
波静かな岩場の向こうじゃ、淡い茶色のクラゲが幾つも浮いてる。
朝に昼に晩に、24時間、365日、彼らはそうやって浮いて沈んでの生活に終始しているワケだけど、気持ちがエエな〜とか… 思ったりするんだろか?
きっと、あるに違いないな。
ひょっとしたら、人間よりもはるかに大きな悦びの中に生きてるのかも知れない。

ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』の挿画に、ノーチラス号内展望サロンの窓の絵があるけど、それには大型のクラゲが描かれてたっけ。
なのでフッと… 犬島に、水族館があればいいな、と思ったりもした。
大型で珍しいのが入っていなくていい。ただもう瀬戸内の海の中を見せてくれるだけでいい。
ママカリが、酢漬けになってない生きたヤツの群泳があればいい。
現代アートばっかりじゃ、疲れるし、直きに見飽きちゃう。
ママカリにタコにクラゲにマダイにアナゴにイカナゴに…。
上記の挿画みたいに、大きな窓1つのボックスを海にチャポンとつけるだけでもいい。
生きた自然を眺めたい、な。