歯科医院に出向くのが嬉しくってタマランというヒトはいないと思う。
「明日は歯医者だ、キャ~♥」
前夜お布団の中で足ドタドタさせちゃうヒトは、いないと思う。
私もそうだ。
歯科の門をくぐるのはガマン限界を超えた頃合いで、ござんしょうや。
でもって、通院となっても、
「ぁ~、明日は午後3時から受診かぁ~」
ドンヨリ気分が薄氷のように表皮を覆うのがセキノヤマんボ~なのだった。
しかし、何10年もメンド~を診てくれた歯科医がいなくなると、それはそれで大いに困りもするのだった。
当方は40年ほど、K歯科医に歯の健康を委ねていたけど、そのK氏が、引退し廃業した。
英断だ。
お医者が、それも70歳を契機に医院を閉じるというのは過去聞いたコトもないが、果断な勇断だ。
眼もショボショな爺いと化して尚もズルズルと営業できる開業医制度の中、スパ~っと区切りをつけた決断は、でっかく良いコトのよう思える。
かつて彼とは昼間は弓之町界隈でよく会い、夜は吞み友達でもあり、双方のプライベートもある程度知ってる仲でもあって、早く引退するとは聞いていたものの、しかし、いざそうとなると……、患者の立場としては、向かうべき庵を失うワケで、これはこれで嬉しいこっちゃ~、ない。
マーフィーの法則じゃないけど、K氏が廃院した直後に、歯1本、痛み出した……。
なんで、こういうタイミングなの? と嘆いてもしかたない。
あらたな医院を見いださなきゃ、いけない。
なワケで、自宅から徒歩数分のトコロにある某歯科医院にオズオズ電話し、
「マイナンバーカードを持参ください」
と云われ、カードは持ってはいるけど、マイッチャッタナァ〜・カードっぽくて未だ不信感が拭えない、なので従来のペーパー保険証で願いたいとし、診てもらうコトとなった。
K氏同様、あらたな医師は紳士かつ真摯な感触。
明日、2度目の受診。
K氏は歯科医の重圧から離れ、次なるステップを踏み、当方は次なる歯科医のシートに腰掛けてクチあける。
40年ほどの間で馴染みきったK医院の待合室や治療室とは趣きが違う医院の、その光景を薄めあけて見遣りつつ、面白いこっちゃ……、と思う。
長きに渡って当方の口の中を診てくれたK氏に、
「おつかれでしたぁ」
労をねぎらいつつ感謝という一語も膨らむ。
次ぎに会ったら、天地真理のチョット上向き加減な鼻のチャ~ミングについて、微笑みつつ語らいたいがや。