カルメン

 

 ここ1週間ほど、卓上で小さな作業とかやってるさい、ヘビーローテーション気味に聴いている、カルメン

 カルメン・マキでもオペラのカルメンでもない。

 70年代のロック・バンド「CARMEN」。

 久々、何年ぶりかで聴いて、その超絶にあらためて耳がとんがった。

    

 初めて接したのは1974年か75年頃で、大阪・梅田の大月レコード店だかで、内容を知らぬまま、いわゆるジャケ買いした。

 グッとくるジャケットじゃなく、むしろドンクサイ感じの方が先に立ったけど、ひょっとして当たりかも……、という予感があったのかもで、聴いてビックリ。

 フラメンコとロックが1つの鍋で煮えてるじゃないか。それもグラグラと。

 

 当時、音楽情報を得るには「ミュージック・ライフ」とかいった月刊本しかないから、当方も、どういうミュージシャンなのかも判らぬまま、

「でも、いいじゃんかコレ」

 って~なアンバイで嬉々として聴き、数ヶ月後だか、1学年下でブリティッシュ系ロックを好んでたS嬢に貸し出して、それっきり。

 なのでこのLPは手元にないけれど、それから1年ほどして2枚めのLPが出た。

 

 フランスの煙草ジタンのアートをそっくり流用してのパッケージに、グッと来た。

 前作の垢抜けない感触から急激にポップ・アートしちゃって、この高名なジタンブルーの旨味にノッかってるんで、眼をひかされた。

    

                     これはタバコです

 

 で内容は、前作の徹底的バージョンアップ。新たな要素はないもののブラッシュアップ感がたまらく良かった。

 啖呵を切るような勢いで、フラメンコをロックでステップする弾みと、一方で歌詞は、悲恋ゆえの情熱のやり場なき彷徨い……、とでもいう感触で、熱狂と沈潜、ドライとウエットが同時にゴッチャに迫り寄ってくるという巧妙さ。

 まいった。

 

 上記の2枚が2枚組CDで発売されているのを、つい最近知った。

 ジャケットは工夫のないつまらないモノだけど、遠い昔に貸し出したまま聴くチャンスをなくした1枚めを再び聴いてみたくなって、こたび買ったのだった。

 それで今、この2枚はヘビーローテーションされてるワケだ。

 

 スペイン、ジプシー女性、フラメンコ、といった強いイメージだけど、実際はメキシコ系米国人バンドが英国に渡り、T・レックスやデヴィッド・ボウイをプロデュースしたトニー・ヴィスコンティの眼にとまってブリティッシュ・ロックとしてレコードを出したという流れ……。

 早い解散が惜しまれる。

 

  今に残るライブ映像デヴィッド・ボウイの番組「1980-Floor Show」に出演)を観ると、いささか時代を感じないワケでもないけど、CDで聴くかぎり、フラメンコのあの、

 タカタカタカン♪ スッタンタン♪ 

   タッカタカタカ・タタンタン♪…… 

 凄まじいほどのツッパリ感とその躍動を、ロックとして味わう新味が、70年代半ばから既に50年経過しているのに、錆びず古びず、依然として新味のフレッシュのままでいるコトが嬉しいったらアリャしない。

「ええぞ、ええぞ~!」

 って~なもんですな。


 

 という次第で倉庫から2枚めのLPを探しだし、ジャケット眺めながらまた聴く。

 良い

 けどねぇ、あんまり頻繁に聴いてるとキキ過ぎで飽きが来ちゃうんだよねぇ。

 なので徐々にセーブし、あえて聴くのをガマンする昨日と今日。そうすると、麻薬がきれた薬物中毒者みたいな禁断症状が出るんだわいね。

 そこがミソだぞ。

 飢餓な状況に追い込んでから、聴く。

 すると五臓六腑カラダ中が、タッタカタッタ〜♪ 痺れちゃう。

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 さてと台風10号……。お手柔らかに願いたいところですが、直撃しそうな気配で、いささか心配。接近・遭遇・通過と、ナンギさせられる予感。

 数日後の、強雨と強風にご用心ご用心。