他県では2ヶ月前に封切られたドキュメンタリー『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』が、やっと岡山でも上映されたので初日に観に出向く。
すでに我が友の1人は、広島方面まで出向き観覧しているけど、当方、そこまでの熱情はない。
だけども学生の頃、加藤和彦には甚大な影響を受けており、熱エネルギーが失せているのではない。
没後15年だが、未だその影響力の下にいる。
彼が創ったいずれかのメロディが、生活の中のどこかで顔を出し、アタマの中でフレーズの一部が 湧き出る。
バスの窓からボンヤリ車窓の光景を見つつ、「不思議な日」とか「どんたく」とか「シトロンガールズ」とかとか、メロディがそよぐ。
かつての昔の諸々を想い出し、あったかい湯のような感触に浸るコトは、さほどないけれど、それでも体験したアレコレは、ハートの中の宝として炯々としている。
サディスティック・ミカ・バンドの頃、1974~75年頃の当時のチケットの一部
ま~ま~、ともあれ、そういう次第でシネマクレールのスクリーンを眺め、多くのかつての関係者たちの姿を見、声を聴いた。
数年前の岡山国際音楽祭で私たちのイベントにつのだ☆ひろを招いたさいは、打ち上げをMO:GLAでやったけど、「サイクリング・ブギ」について話せたコトも嬉しく想い出す。
歌詞を創ったのが松山猛と思ってる方が多いけど、つのださんの作でドラムも彼。70年代初期、フォークしか聞いていなかった自分はパワフルなドラム音に衝撃させられ、大コペルニクス的転換のウズに放り込まれましたわ、と申したら、同氏は頬を膨らませて破顔した。
“加藤和彦の時代”を当方も生き、今もこうして活きているコトを、嬉しく想う。
✿✿✿✿✿————✿✿✿✿✿ ————✿✿✿✿✿————✿✿✿✿✿
ドンヨリお天気の連打かと思ったら、一転、ヒリヒリするような暑さになったり……。
寝っ転がって『ゲゲゲの鬼太郎』を拾い読む。
チョイっと前にamzon primeで『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観たので、その延長というか……、ゲッゲッゲ~♪
この新作アニメーション、巻頭部は市川崑の「犬神家の一族」やら、黒澤明の『夢』の怖いトンネル・シーンなどの摸倣で、さらに展開的には「獄門島」やら、押井守が描いたラムとアタルのラブ模様まで連れ込んで、
「おいおい、借り物競走かよ~」
アッケにとられたけど、まぁトータルでは、悪い印象は薄かった。
時代背景が昭和31年というコトで、主人公が盛大にシガレット(ピースだ)をくわえ吸うのも納得というか、禁煙キンエン・嫌煙ケンエン、猛った咆哮めく圧力のみが正しいとされる昨今では珍しい描写を堂々と見せてくれて、そこはポイント高かった。
鬼太郎たち幽霊一族とタバコの煙に、マイノリティ立場に追いやられた似通う悲哀を思わないでもなかった。
2年ほど前に、貸本時代の『墓場鬼太郎』を全巻読んでいるけど文庫版サイズが気にいらなかった。
漫画は文庫じゃ小さすぎる。
出版元で微妙に変わる本のサイズ。小さいと絵の魅力も減退する。1コマ1コマの漫画家とアシスタントさんの労力が見えにくくなる。というか、版が小さいほど、絵の躍動までが縮小され、ヨロシクない。
ホントはやや大判で初出順にキチンと並んだ『水木しげる漫画大全集』を眺めるのがイチバンなんだろうけど、今回は90年代頃に販売されていたサン・コミックス版を古本で買い求める。
どの話もやはり、おもしろいねぇ。敗戦後の昭和的光景と水木御大の独特な自然体ユーモアが何よりイイ。
とんでもない事が起きているさなかの、登場人物達の脱力ぎみなヒトコトフタコトが逆にリアリティーを補強して、水木ワールドをいっそうチャ〜ミングにみせている。
一方で、「おや~?」と立ち止まるような話もある。
たとえば「だるま」では、マンション・ビルを持ってる男が、存在しない4階を妖怪に貸し出したコトで起きるドタバタが描かれる。
縁起をかついでそのビルは4階がなく、3階の次は5階というコトになっている。
そこに妖怪・だるまがやって来て、
「4階を貸してちょうだい」
というワケで、男は当初は、4階はないから貸せないと困惑するのだけど、だるまが大金をつんだので受け取って貸し出す。
途端、ないハズの4階が生じ、妖怪達が出入りして他住民からクレームがくる。
警察も呼ばれるけど、3階から上にあがると5階の人間の住まいがあり、そこから下をみると、おやおや? 4階が生じている。おりると、でも3階でしかなく、4階はやはりないのだけども窓から見上げると4階が見える……。
ややこしい。
ペットのイヌやネコも行方不明となるから、住民達は気味悪がり、立ち退いてしまい、男は家賃収入がなくなって途方にくれる。
そこを鬼太郎が救くい、妖怪をビルから追い出すんだけど……、待て待て、ヘンテコだ。
おかしいじゃないか。
妖怪は大金投じて4階を借りてるワケで、チャンとした権利を持ってるはずだ。
おまけに妖怪だるまは、街中に住まう妖怪仲間らの「悩み相談室」みたいな空間として、4階を使っているようだ……。
4階は存在せず、けども明らかに妖怪仲間達が日常出入りしているというケッタイ状況を、鬼太郎がニンゲン側に加担して妖怪を強硬に追い出すのは、はたして合法なのか、正義なのか、鬼太郎流チョ~法規なのか……、ついつい真顔で考えてしまいそうになるから、お・も・し・ろ・い、んだ。
水木御大は、このエピソードを鬼太郎の失敗談として描いたような感触無きにしもあらず。
いや、描いている途中から、
「はたしてコレでいいのか?」
ご自身が困惑したような……、感じも無きにしもあらずなのだ。
相容れない2つの軸と軸の狭間での、鬼太郎の振る舞いが、良きコトなのか悪しきなのか、そこの振幅が味わえるのも水木ワールドの醍醐味とみた……。