チキチキバンバンの名優


最近は「チキチキバンバン」のサントラをよく聴いている。
綺麗な曲が多いし、なんといっても大好きな映画でもあるゆえ…。
この「チキチキバンバン」に出てたライオネル・ジェフリーズさんが亡くなったという。
ハリーハウゼンが特撮を担当した1964年の「月世界探検」にも彼は出ているし、その時点ですでに充分にハゲ頭だったから、もうズイブンとお歳を召されたであろうと思ったら… 享年は83歳。
というコトは昨年の1月に亡くなった「プリズナーNO.6」のパトリック・マクグーハンに近い年だったのだな… と、ちょっと、思ってたより若かったのでビックリしてしまった。
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「チキチキバンバン」では、ポッツ家のおじいさんという役どころで、発明狂の息子に負けない変人ぶりを発揮していて、とても良いのだった。
穏やかながらも秘めた決意ある人物といった役にピタリとはまり、かつ、不思議な品がある人だった。
「チキチキバンバン」の中では再々、屋外のトイレに出向くシーンがあって、そのたびに彼は、軍人であったり探検隊員であったりとコスチュームを換えて登場し、トイレにしゃがんでの沈思黙考に"愉しみ"としての華を見いだしている気配を暗に匂わせてくれるのだが、それが下品にならないのが、まことに良いのだった。そこにボクはこの人の風格を観て、
「さすがです。感服しました」
と、絶賛したり唸ったりさせられたのだった。
ご承知の通り、「チキチキバンバン」の原作はイアン・フレミングで、この映画の製作は007シリーズをてがけたアルバート・R・ブロッコリだ…。
余談だけど、主役が変った「カジノ・ロワイヤル」以後の007をボクはちっとも好きになれないでいる。"大人の童話"めいた匂いも気配も失せさせたリアル一辺倒の007の、どこが面白いのかと、訝しんでいる。殺伐とした荒涼をわざわざ映画に観ることもあるまいに… とボクは思ってるんだ。

で、話を戻すけど、「月世界探検」でのライオネルさんは主役のエドワード・ジャッドを完全にくっている。
上記した品格と存在としてのユーモアがエドワードさんを上回っていて、イケメンがハゲに負けているのだ。
土俵際で逆転なんて〜もんじゃなくって、ハナっから、ライオネルさんが自転車で川沿いの道をやってくるところでもう… ハゲ勝ちなのだった。
亡くなってはじめて知ったわけだけど、「チキチキバンバン」ではおじいちゃん役ながら、実年齢では主役のディック・ヴァン・ダイクとほぼ同い年なのだった。この辺りが映画の面白いところなんだろうけど、なんか妙なアンバイでもあるね。
ともあれ、60年代から70年代にかけて活躍した、華ある方が、また1人なくなってしまったので… 寂しいな。
※ 写真:上-「チキチキバンバン」より  下-「月世界探検」より