ちょっと一服



某日午前。
百間川の橋の上から、眺める。
3羽のシラサギが昼食を狙う。
およそ4分ばかり付き合ったけど、収穫なし。
その間、3羽ジッと動かず。
見飽きて場を去りはしたけど、尺度の違う根気強さを思わずにいられない。


この11日に、ダグラス・レインさんが死去したね。
2001年宇宙の旅』で HAL9000の声を演じた人。
ハルといえば、その静かな声。
静かな声といえば、ハルを思うほどにボクの頭の中では1つの独立したボックスに収まる声だった。
概ねで静かな声というのはさほど印象に刻まれないものだけど、ハル=レインの声は転写作用が大きかった。
声だけが出てきて姿がないから……、と思ってしまいがちながら、姿は常に、ゆるぎない自身に満ちた”健康体”としてのディスカバリー号という宇宙船というカタチで出ている。
HAL9000ディスカバリー号
しかもチャンとした目的意識を持って。
なのでこの”健康体”は、内部に搭乗した3人の科学者と2人の飛行士を、当初は良き善玉菌ではあったけど、悪しきなガン細胞にそれらが転化したと考えだす。
コンピュターが殺人を犯した初事例とかいうけど、HAL9000は自身の健康維持のためのウィルスの駆除を開始した……、と、いまだこうやってアレコレ解釈したくなる。
だから、近頃の自動車業界やらがAIの自動運転めざして躍起になってるけども、はたしてボクはその手の車に乗りたいか? といえば、ノ〜ノ〜と今は答えるっきゃ〜ない。



17日の午後、講演。
推薦入試に文化祭。ピタリ重なって先生方不在。やや空席が目立つコトになってしまったけど、しかたない。
でも、思わぬ方が聴いてくださったり。


ほぼ定刻にて終え、某所でかる〜く乾杯。
打ち上げは来月某日と決まってるから暫定乾杯、でもこの機会はこの時でしかないから、ナ。
イベントは常に裏方に徹してくれる方々あって成立するもの。終えて一同しちゃうのは嬉しいなぁ。
ホッとしますなぁ。
かる〜くなつもりが、チャカポコ3時間。


翌日18日。
某高層マンションの一室にて、ミニなパーティ。
講演がらみじゃなく、プライベート。
やや慣れ親しんだ、見晴らし良きそのマンションから別マンションに我が友が転居というコトで、惜しむような、祝うような、が同居した「猪鍋パーティ」。
幸いかな、何ぁ〜〜んも気兼ねしないですむ仲ゆえ、やっぱ、この団欒、ホッとしますなぁ。
病欠となったKちゃんをば心配しつつ、シシ肉つっつき、熱いジューシーな脂をばビールで流し込む。



来岡中のS氏持参の、コマイなる魚を初めて食べる。
氷下魚、と漢字でかくそうな。
北海道産。岡山には出廻らない。
タラの親戚らしいが、骨組み頑丈でちょっと食べ方にコツあり。
熱々が旨く、これは日本酒の肴じゃな……、即座に思ったら、S氏いわく「その通り」とのこと。
ハシでなく手掴みでもって背骨をさけるようにしてかぶりつけば、身離れがよくって、骨は綺麗に分離する。



ひとしきり食べ、大いに談笑後、ケーキ。
ワタクシめが、ラ・セゾン・ド・フランスという店で買ったもの。
いや〜、しかし、これが甘いのなんの。
アルコールと肉でまったりした胃がその甘味に驚いて、やや拒絶ぎみ。
「若い頃ならペロリじゃけど、さすがに年齢……、甘すぎぃ〜」
オノケーちゃまが笑う。
けども全員、完食。


ああ、しかしだね、新幹線とローカルの速度違いを上から目線で眺められるこのマンションとはお別れだ。
甘い口元ほころばせ、少し寂しい感じを呑み込んで、記念写真をば撮ってもらう。
でもま〜、「次は転居パーティだな」と大いに北叟笑む。
いうまでもないけど、次はケーキはよしましょう。
……、などと思いつつ、フッと巻頭で紹介のシラサギの姿がよぎる。
小魚追ってジッと我慢で川面を見つめる姿が、チラリ。