プラモデルランナー風 御朱印

 

 5日ほど前、神奈川の友人が亡くなったとの連絡を受け、暗澹に沈んだ。

 9歳年下の彼に初めて会ったのは1970年代後半だったか……、模型をこよなく愛し、大人になった天使のようなヒトで、最近こそまったく会ってもいなかったけども、大事な友の一人だった。

 ただもう残念でしかたなく、茫漠とし、訃報後数日経っても、どうかしたはずみ、彼の面影がよぎる。それで、しばし追想に浸かる。

 彼が独身時代、同じ神奈川のK君とひょっこり車でやって来て、我が宅に1週間ほど滞在し、バカ話やマジ話に熱中したコトを数日前のことのように思いだしたりしつつ、悲しい気分よりも、楽しかったアレコレを宝のようにいつくしむ。

 事実、それはキララと光る我が輩だけの宝玉……。

 

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 5月アタマの連休に、徒歩数分の近所に住まう我が友人夫妻は静岡を旅し、後日に土産を頂戴した。

 静岡市の、久能海岸にごく近い場所にある久能山東照宮にもお参りしたそうで、そこの御朱印を土産として持ってきてくれたんだ。

 ありがたい。

 プラモデルのパーツとランナーを模した御朱印で、限定頒布だという。

 いかにも模型王国・静岡らしくって、なかなかヨロシイね、と感心させられた。

 静岡といえばお茶が最初にアタマに浮くし、ワサビも浮き、浜松方面の「うなぎパイ」もくっついてくるけど、当の静岡市は模型産業が大きなウエイトを占め、その関連団体が5月5日を「模型の日」と定めたコトもあって、市内アチャコチャに色々なカタチでのプラモデル・ランナー風味なモニュメントやらを設けている。

 もう30年くらい前、当方も模型仕事に関わって、毎年のように静岡ホビー・ショーにも出店者側立ち位置で滞在したものの、最近の静岡市内のことはほぼ知らないんで、友人が撮ってきた写真を眺めて、

「へ~、こうなってんだぁ」

 ランナー風の公衆電話のカタチとか、やはり模型がストレートにイメージ出来るアレやコレやらが点在する光景に……、眼をば細めた。

 地道なタミヤやハセガワ、ガンダムを中心にしたバンダイや、時に扇情的な製品展開をみせるアオシマなどなどが功を奏して、「プラモデルの街」というイメージと気概が、この地に定着しているのだろう。

 射出成形に必需なランナーは、しかし模型作りには必要のないモノ。それを、パーツ同様に活かす試みはおそらくタミヤがはじめたよう思う。2010年版「TAMIYA CATALOG」にも、パーツ パネルという名で“アート化”した試みがみられる。

   

     厳密にいえば、このシリーズではランナーはなく、パーツを切りとって見せている

 

 かつて昔、徳川家康は没すると久能山に埋葬され、併せて栃木県日光市久能山に、2つの東照宮が造営される。

 江戸幕府としては日光東照宮を家康メモリアルの総本庁的なものとして位置づけ、家康本人が安置された久能山の方を分社的な位置に置いたようだけども、なんせ地元だ……、駿府静岡市)住人としては、「こっちこそが大事ぃ~」という感覚もあろうかと愚察するけど、そんなこた~どうでもいい。

 日光のそれとほぼ同様な神宮、それも家康のみを祀っているという一点こそが基礎の基礎。

 家康存命の頃に彼の命令によって全国から腕の良い木工職人らが集められ、江戸城をはじめ、あれこれの築城やら神社仏閣建造や装飾にたずさわり、その人達が結局は駿府に住み着いて、やがて竹細工や雛人形といった木工製品を造るコトで生計をたてるようになったのが、プラスチック模型へと至る母体となったというヒストリーが、こたび、久能山御朱印にまで反映しているというのが、とても、お・も・し・ろ・い。

 プラモデルという“植物”の興隆は、徳川家康という“土”があったからこそ……、という図式だ。

 この御朱印の、モチーフとしてパーツ化しているのは、久能山東照宮が所蔵する、家康愛用の太刀「無銘光世」、通称「ソハヤノツルキ」。

 

 今年になって初めての試みのようだが……、いささか微笑ましく思えたのは、プラモデル・ランナー風とはあるが、実はペーパーなのだ。

 素材はプラスチックではないんだ、ね。

 やや厚みあって硬度が高い紙加工だ。(一見では紙と判らないよ)

 そこも、お・も・し・ろ・い。

 頒布が開始されたのは連休に合わせた4月末で、しかも限定というコトゆえ、5月連休時に観光で多数の方々が訪ねたろうから、相当数が売れたというか“頒布”(無料じゃないよ)されたよう思えるし、事実、我が友にこうして頂戴しているワケゆえ、おそらくSOLD OUTにはなるだろう。

 で、来年には、今度はホントにプラスチックを素材にした、より立体化されたパーツとして、家康愛用の兜なんぞが射出成形されるかも……、知れないなと思うと余計、お・も・し・ろ・い。

 そうなれば、いっそう、静岡市イコール模型+家康……、という感じが濃くなろうとも思うし、地域特性を活かしたグッズを販売出来るという点で、福井の諸々な恐竜グッズ同様、いささかの羨ましさも感じないワケでない。

 なので否応もなく、我が岡山のことをも思ってしまう。

 産業を観光に結べるものとして、何ぞあるや?

 べつだん、なくとも構いませんがぁ、チョイっと寂しいような気がしなくもない。

 

 とかとか思ってる矢先、1週間ほど前にニュースあり。

 バンダイが、家康ゆかりの甲冑をモチーフにしたガンプラを新発売するとの報。

 

   

 当方、ガンダムには興味も関心もないものの、

「やりますなぁ」

 その邁進っぷり、商売っけぷりに、チビっと蒙を啓かされ、刺激させられた。

 ここ岡山でなら……、桃太郎にモバイルスーツを着せるのはどうよ? 当然に胸あたりには白桃を想起するような何かがデザインされてなくっちゃ~いけない。

 くだらない妄想をチビっと湧かすんだったが、そんなモノを岡山で作って売れるの? そも、何のイミあるの? という疑念の方がでっかかった。進行中の大阪夢洲(ゆめす)の万博建設同様に。

                             

 けども、しかし、当方密かには、侵略 and 略奪者っぽい桃太郎より鬼の方に同情含みの感心が向かうゆえ、鬼達をこそ攻殻モバイルスーツ化し、士郎正宗風の電脳化も有りで、より強靱な団体に引き揚げて、ある日とつぜんに攻め込んできた桃太郎チームと拮抗するだけの装備を持たせてもヨロシイのでは……、と妄想もするのだった。

 桃太郎側はイヌ・サル・キジといった家来やら戦法やらエネルギー源としての吉備団子が知れているのに、鬼側はいまだ、生い立ち、生活スタイル、組織の実態、規模、個々のプライベート、何もかもがアヤフヤ不明瞭なのがイケナイんだな。

 パーツも判っていないのにランナーで結ぶコトは出来ないんだわさ。

 5月にイチバンに興をひかれた酒。高梁市宇治町の有志達が作った、もち麦焼酎。その名も「ONIGASHIMA」。

 総社市の農マル園芸で売っていた。安くはないので買わなかったけど……、パッケージも好さげ。