51年前の5月25日・スカイラブ2

  我が友、丸山徹也の作品が『第80回記念現展』、さらに『日仏現代国際美術展』でも入選。

「現展」の方は、奨励賞&会友推挙ともなり、なんだか我が事みたいに嬉しやピ〜ヒャララ。

 

 この先がいっそう愉しみというか、作家はいっそうのプレッシャ〜を味わうコトになろうけど、のんのんズイズイ〜っと進んじゃって欲しいぞよ。

 入選と受賞の木彫り作品たち。左より「新世界Ⅰ」、「新世界Ⅱ」、「新世界Ⅲ」↑

 いずれも息するのを忘れるくらい素晴らしい。

 次作として「新世界Ⅳ」かと思いきや、好いヒノキを入手したらしく、別テーマの作品に挑むらしい。表現者としての意欲のでっかさにも乾杯だ。

 わずか数時間、あるいは数分で描き追えるような現代絵画じゃなく、おなじ現代でありながら木彫りに要する時間は昔のそれと変わらない。

 その忍耐的コツコツと根気的ジワジワでもって、丸山徹也は脳内幻想をカタチある実在物として彫り上げる……。

 けれど作品には製作時間の堆積は感じられない。感じられるのは作品そのものに彫り入れられた悠久の時間のみ。そこが素晴らしい。

 

 展示日程は下記の通り。

 第80回記念 現展  5月29~6月10日 国立新美術館

           7月9日~15日  愛知芸術文化センター

           7月23日~28日   京都市京セラ美術館

 日仏現代国際美術展 6月12日~24日   国立新美術館 展示室3A

 

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 さてと模型の話。

 米国のフランクリンミント社は今はもう存在しないけど、秀逸な置き物を製造直販し続けた良き企業で、アポロ計画の模型も6種類ほど限定で出していた。

 幸いかな全部を持っているけど、そのうちの1つ、同社のアポロ・シリーズの最初のものは倉庫にうっちゃったままに放置していたゆえ、汚れに汚れて気の毒な状態になっていた……。

           黄ばみ、塗装も部分が剥げ落ち……

 それをば引っ張りだし、チョイっと思案の末、スカイラブ2仕様の模型に変じてやろうと、決めた。

 洗剤で洗い、湯で拭いてやると、『千と千尋の神隠し』の風呂上がりの神さんみたいに綺麗になった。

 よし……、改装だ。

 

 アポロ計画が17号でもって打ち切りとなり、次の18号、19号に向けて宇宙船やらサターン・ロケットが造られていたのを有効活用するために、NASAが実施したのが宇宙ステーション運用だった。

 スカイラブ1という実験棟を宇宙空間に置いてヒトを滞在させ、諸々な試みをおこなう計画だ。

 スカイラブ1はサターン・ロケットのパーツを大改造したモノで、無人で打ち上げられ、次いで3人が乗った宇宙船スカイラブ2が打ち上がって、1に搭乗するというダンドリだ。

             スカイラブ本体(実験居住区)部分

   

              発射台のスカイラブ1

  

              こちらがスカイラブ2

 

 51年前の1973年5月25日、スカイラブ2はケネディ宇宙センターから発射された。

 ホントは15日が打ち上げ予定だったけど、先行で打ち上げられたスカイラブ1が打ち上げ時に深刻なダメージを受けており、その修理修復も兼ねるというコトで10日遅れのスタートとなったワケだ。

  

    準備中のスカイラブ2。はるか後方にスカイラブ1が見える

 

 船長はアポロ12号で月面に立ったピート・コンラッド。宇宙に出向くこと4回めのベテランだ。

上写真:アポロ12号打ち上げの朝、ステーキ食を食べるコンラッドさん。左腕に刺青をいれているのが特徴で好感度高いナイスガイ。手前はアラン・ビーン

 軌道上のスカイラブ1に接近したスカイラブ2からコンラッドは外に出て、打ち上げ時にちぎれてしまったスカイラブ1の太陽電池部分や熱保護のシートがけなど、修復にかかる。

 本来は実験棟の船体左右で展開予定だった太陽電池パネルは、片方は完全に失われ、もう片方は足が折れて展開出来くなっている。それをコンラッド船長が宇宙遊泳しつつ修理し、展開させて居住区をかねた実験棟の電力を回復させたワケだ。

 本体の外壁も破損しているので、壊れた屋根にブルーシートをかけるのと同様、太陽光直射での室内高温化を抑制のためにゴールド箔シートもかけた。

 コンラッドさんは忙しかったろう。

 

 以上の作業をこなし、実験棟室内の温度が下がってからスカイラブ2の3人の乗員はスカイラブ1に移乗。以後28日間、3人は滞在し続け、米国発の宇宙ステーションとしてスカイラブ1を機能させた。

        スカイラブ1船内でトレーニングマシンのペダルを廻すコンラッドさん

 

 スカイラブ計画は、いわばアポロ計画の応用と流用でもあって、コンラッドの修復作業で保持されたスカイラブ1には、以後、スカイラブ3,スカイラブ4と乗員を迎えいれて宇宙での諸々な実験をおこなうコトになる。

 野口さん滞在などでお馴染みのISS国際宇宙ステーション)の礎となったのが、本計画だ。

      

 1/116スケールのペーパーモデル:右がスカイラブ1搭載のサターンロケット。左は通常のアポロ・サターン

 

 ま~、そんな背景を念頭に、フランクリンミント社のアポロ司令船の置き物を、スカイラブ2号にスリ換えてみたのだった。

 とはいえ大きな改造は必要なし。そもそも同社のは置き物としてのウエートが高く、部分詳細まで造り込んだ精密模型とは一線を画す。

 そのあたりのサジ加減もくわえ、ほどほどの改造。ほどほどにオモチャらしさも残す。先端の金属バーは同時期に発売の月着陸船をくっつけるためのもの。

  

 先端コマンド・モジュール部分は、フランクリンミント社がデカール処理で再現した排気孔などはそのまま活かし、全体は実物同様にアルミ箔で覆った。

 本物のそれは、スコッチ・テープ社がアポロ計画のために開発した断熱素材としてのマスキング・テープで覆われていた。

 そのゴールド・バージョンは、月着陸船でも大量に使われ、かの「太陽の塔」でも使われている。「太陽の塔」の呪術的黄金の顔部分は、だから当時のピッカピカなハイテクニカルなフェ〜スでもあったワケだ。

 

 改造後。

 誰が見たって、

「あ~、アポロの模型っすね」

 としか映らないんだけども、資料写真を元に、コンラッドさんが船外に出て修復作業するための、手すりなんぞも付け加え……、

「ちゃいます。これ、スカイラブ2でごわす」

 云いはるのだった。

 厳密に云えば、アポロ15号〜17号にもこのテスリはあるのだけど、それはそれ、これはコレ、ですわ。

  

 完了後は倉庫に戻さず、60〜70年代のグッズを集めたガラス棚に収めた(最下段)