経年で傾ぐ

 

 90年代初頭頃に、高額だったけどガンバって買った米国フランクリン・ミント社のアポロ13号の金属模型。

 司令船と着陸船を結んで宙に浮かせたカタチの模型なのだけど、いかんせん無重力空間ではないのだから……、重力の影響を受けて久しい。

 金属ゆえ重たい着陸船部分がいささか傾ぎ、見るからに危なっかしい。

 司令船と着陸船のジョイントも金属パーツだけど、両者を分離出来るようになってもいて、すなわち抜き差し可能という構造で、結果、長期に渡ってのこの“姿勢”にはムリがあるというか、金属ジョイント部分に負荷がかかりっぱなし……。

 たしか10年ほど前に1度、傾くのを抑止するために補強作業したのだけど、その後の10年でやはり、ゆっくり、水が鍾乳石を造るようなアンバイで、

「重さがしんどいわ~」

 と、傾ぎだしている。金属バーを受け入れる樹脂部分がへたってるんだね。

 

 

 なワケで、また修繕してやろうとは思っちゃ~いるのだけど、また一方では、この傾斜の危なっかしさに、アポロ計画の綱渡り的側面を見るような感もあって、これはこれで味わいがあるような気がしないでもない。

 ただのディスプレー・モデルが波瀾含みのデンジャラスを内包して、とりわけ、これがアポロ13号の模型なのだから余計、

「よくぞ地球に戻ってきたなぁ」

 感慨がわく。

 うん、そうだな……、もチョット、修繕せず、この傾げた姿を“愉しもう”。

 

 

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 アマゾン・プライムで『MERU / メルー』を観る。

 ヒマラヤ山脈のメルー峰に登頂するドキュメンタリー。2008年の登頂断念と2011年の登頂成功を順追って見せてくれているのだけど、クルーが3人という共通点もさるコトながら、過酷さにしろ決断力の発揮にしろ、アポロ計画での「冒険」を凌駕するような感を受けた。

 ……いやいや、そうじゃないな。凌駕じゃないな。

 アポロ計画もこの登山も、どちらも激烈な難事業、死と隣り合わせでの、それゆえ決して無謀はしない、自分を制御する勇気の在処と維持は同じくして等しく崇高。

 頂上に後100mという所で中止を決定するあたりの壮烈さを含め、見終え、ひそかに拍手するんだった。

 崖から宙づりにしたテント内で過ごす登山家たち(上写真)……。身動き出来ないその狭小な空間にアポロの船内を想起させられた。なにより、驚くほどドラマチックな人生をおくっている3人の登山家が素晴らしく、久々、喰い入るように画面を見つめちまった。