たつの経由で姫路の もう1つの城へ

 

 たつの市に向かい、イトメン本社の直売所に入る。訪ねるのは2回目。

 岡山市内では売っていない同社のインスタント・ラーメンを買う。

 

 

 イトメンの「チャンポンめん」に初めて接したのは高校生の頃で、以後50年ほど、ず~っと交際している。

 ず~っと、といっても大阪で学生だった頃は交際が切れてた。

 阿倍野界隈、近鉄南大阪線界隈では売っていなかったよう記憶する。

 入手しやすかったのはハウスの「シャンメンたまごめん」だったな……。たしか40円以下とダントツに安くって、ビンボ~学生には救世主的インスタント。少年マガジンに連載中だった松本零士男おいどん」を読みつつ下宿の小さな部屋ですすり、主人公のトホホっぷりと当方のトホホっぽさを苦々しく重ねつつ、毎度お汁まで全部平らげたもんだ。

 でも帰岡して「チャンポンめん」に再会し、以後はず~っとね、大きな浮気なし。

 

 

 だからこたびも複数の違うインスタントを買ったけど、たぶん、「チャンポンめん」を越えるモノではないだろう。

 舌は強情な保守主義に徹してる。でも、当方が久しく好感寄せるイトメン社の、その他製品を買うことを反対したりはしない。舌先三寸のところで黙ってる。

 ま~、近頃はさほどインスタントラーメンを食べなくって、2週に1ケ食べる程度なので、複数買ったけど消費はいつになるのやら判らんけどね……、キッチンにインスタントの在庫がないと落ち着かないんで、同じ置いておくならイトメン製品がイイなぁという次第で、わざわざ本社に買いだしだ~。

 

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 小雨の中、龍野城のすぐ近く、たつの市街を一望できる場所にある聚遠亭(しゅうえんてい)に行く。

 龍野藩の藩主・脇坂家のかつての上屋敷

「御涼所(おすずみしょ)」を中心に、「浮堂」や「楽庵」といった茶室が配置され、冬場ではなく紅葉の秋に訪ねたら、さぞや良かアンバイな景観を愉しめるだろうとも思ったけど、御涼所の三十畳敷きの広い部屋での盛大な茶会などを空想し、江戸時代のここの殿さんが、自慢の茶器を招待客に見せてエツにいってる様子をアタマに浮かべたり、した。

 

 脇坂家は徳川家綱の時代、寛文12年(1701)に龍野に入り、以後明治に至るまで延々に代を継いできたから、小藩とはいえ、たぶん、そこそこの茶器も集積させていたろうと思え、

「この器はな、ひい爺さんの先々代が江戸城ナンとかの間で将軍様よりもろ〜たもんやでぇ、ウフフ」

 ってな風に自慢顔でホッペを緩ませているのを想像し、広言したって、お咎めなしの昨今がヤヤ嬉しい。

 

  

        質素ながら風雅な聚遠亭の静かな佇まい。浮堂が良い感じで見蕩れた……

 

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 相生方向に引き返し、道の駅「あいおい白龍城」に入る。

 白龍はペーロンと読む。

 海辺にあって、何度も立ち寄ってるけど食事したコトはなかった。

 えきそばで高名なまねき食品が運営しているレストランがここにあって、えきそばの上に相生産のカキをのっけたのがある。オマケでカキ飯もついている。

 海ぎわの席に座り、それを頂戴す。

  

 夏には味わえないシーズンもの。暖冬ぎみでこの冬はカキの身が小ぶりらしいが、プリップリッとし、えきそばの味と上手く合体していた。

 

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 食後、姫路に向けて駆け、太陽公園に行く。

 かねてより、チビッと興味があって、どんなアンバイかしらん? とは思ってたので、このさいだ……

 こたびは男3人のミニ旅ゆえ、メルヘンぽ~い場所は如何なもんかという気もなくはなかったけど、訪ねたことがない施設ゆえに、まずは見てみなくっちゃ~何ぁ~にもいえないワケで。

 

 

 で、入場料1500円でモノレールみたいなので山頂へ上がってくんだけど、

「あいや~~」

 近づくに連れてドンドン大きく見えてくるのでチョット畏怖した。

 

  

  

 ノイシュバンシュタイン城を模し、1/3程度にまとめた白鳥城は、1/3規模とはいえひたすらデッカイ。

 

 中は7階の層があって、まずは4階にあがり、5、6、7階を見学後に3階におりて、そこから四方を城壁で囲んだ中庭見学、さらに下におりて別の庭見学という順になっていて、トリックアートを含め、アレやコレやソレやらの展示室多数。

 とはいえ、驚くような展示物はなし。トリックアートでチョイっと遊ぶ程度。

 

 

 城を出て、モノレールで下山し、「石のエリア」へ。

 石をテーマとしてはいるのだけど、感じとしてはゴッチャ煮のチャンコ鍋、それも常軌いっしたデッカイ鍋。

 凱旋門をくぐるや、モアイ像多数が並び、被さるようにインカやアステカといった方面の石のアレコレが大量ボリュームで配置される。ボリビア太陽の門をくぐれば遠方に紫禁城やら中国山西省の双塔寺1/1レプリカが見える。

 

「なんじゃぁ、ココは……

 男3人、絶句し、苦笑し、呆れかえり、

「ケケケっ」

 不明な哄笑を漏らす。

       天安門的な広場を歩いて向こうの紫禁城へ行くのは、雨ゆえ、ヤヤつらい

        広大過ぎの上に雨天。双塔寺のかなり手前で足を止め、その先は見学断念

 

 眺めみれば、すべてが「場違い」の匂いをたてているような感じが、なくはない。

 映画のセットは時にチープなものがあるけれど、「映画」という主語があるから意味をしっかり持っているが、ここには主語らしきがみあたらない。

 個々はしっかり造り込まれてはいるけれど、得られる感触の中に、

「なんだか、やたらに虚しいぜ」

 って~な空疎が混ざってくる。

 

 

 宏大な地所を埋め尽くす膨大な石のアレコレに、莫大なお金が注がれているのは一目瞭然でその物量大作戦には感嘆あるのみながら、出てくる気分は、

「けっきょく、何なの?」

 灰色のモヤモヤ。

 モノはモノの背景となるヒストリーがあって初めて「モノガタレ」る存在となるが、ここではそれが欠落している。大量に設置されながら、逆になぁ~にもない……、という奇妙感。

 

 が、いささか感じいったのもある。

 兵馬俑1/1スケール展開の巨大なイミテーション……。この規模には感嘆させられた。

 ここではイミテーションが徹底され、徹底したがゆえに、中国の本物リアルがヴァーチャル的に浮き上がりつつあるような気迫と気配があって、

「まいった……」

 降参せざるをえなかった。照明はいっさいなしで自然光のみというのもイイ。

 

  

            1/1原寸による巨大模型。3人共々、感嘆あるのみ……

 

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 腕がもげちゃった巨大埴輪にいささかの哀愁をおぼえつつ、そこからテクテク園内をおよそ1Km歩いて引き返し、退出……。

 総じて顧みると、感覚が無くなって量とて推し量れない虚無を味わえたし、一方で兵馬俑の原寸再現に、「あっ」とも驚かされ、雨に濡れ、広大過ぎて足は棒になるしと……、気分はさがったりあがったりと賑やかだった。

 愉快体験としか云いようがない。つい拍手したくなるほどの異界っぷりが、お・も・し・ろ・く、もあった。

    

 

 経営母体は社会福祉法人で、パークに沿って、というか、パークと大きな老人ホームや介護施設をうまく共存させている。

(パーク来訪の我々は万里の長城を模した全長2キロメートルに及ぶ石の道を歩き、介護施設関連への家族やらスタッフやらとは一定の距離を保つ仕掛けになっている)

 おそらく施設には、かなりの方が入所されているんだろう。身体不自由して毎日眺めるこのパークの光景はどう映えているのだろう? 

 尋ね聴くワケにもいかないけど、イチゲンさんの当方には異界でも、入所している方にとっては、桃源郷めいたカタチなんだろか? そこのところ……、不明。

 得体のない空虚もおぼえたけど、スタッフはいずれの方も親切で丁寧で気持ちがいい。雨天でない時にもう1度くらいは再訪してもイイかとも、ちょびっとおもったけど、車に戻るや、

「さぁ、晩ごはんはどこで何を食べようか?」

 早や気分は移ろっているんだった。