点描

 

 1月半ばにたつの市イトメン本社直売所で買った「チャンポンめん 海鮮風とんこつ」を、ようやく食べる。

 豚骨味を前面に出したものと想像していたけど、同社チャンポンめんの滋味をより切れある味わいにした感じで、やや意表を突かれたけど、美味しくいただけた。

 馴染んだ滋味の強力装甲バージョンみたいな感触を受けつつ、お汁までぜ~んぶ平らげご馳走さんでした。プラスで稲荷も1つ。

 次回にたつの市に出向いたら、これをまた買わねばと欲をうごめかせた。

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 近年、大部の著作「日本のブリキ玩具図鑑」(創元社刊)を上梓した大阪ブリキ玩具資料室の熊谷信夫氏より、冊子がおくられて来た。

 大正時代の初期、四国高松で郷土玩具と人形のことをコツコツと調べたりコレクションの展示会を催した女性(安井齢子さん)がいて、彼女は「趣味のおもちゃ」なる、500ページを越える手描きの記録を残している。

 熊谷は、複数年に渡って高松で開催のその展示会での写真や手描きの記録を入手したようで、後世に残さねばと……、まずは冊子によって、その存在を知らしめ玩具文化というカタチを継承しようとしているのだろう。

 実に良いことに思え、15ページほどのこの冊子の写真をば、しげしげ眺めた。

 地方での玩具資料というのは、アンガイとない。皆無といっていい。オモチャというカタチは文化的財産とは見なされず、記録されることはなかった。

 それが500ページ越えの記録として記されているのだから希有にして貴重、熊谷が身を乗りだした気持ちはよく判る。

 大正時代の崩し字と旧仮名遣いは、今となっては立ちはだかる険しい山のようなもので、それを現在の言葉に交換する作業は容易でないだろうけど、文化史への大きな貢献となるだろう。

 元来なら、地域の図書館やら行政の文化部門が関与すべき事案に思えるけど、それを一個人が進めようとしている熱情にアタマがさがる。

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 最近やたらにヒンニョウぎみで、3時間を越える映画となると……、映画館に出向くのが躊躇される。

 29日公開予定の『オッペンハイマー』は早く観たいとも思うものの、中座してトイレに駆け込むようでは落ち着かない。不憫だなぁ~。

 この3時間越えの映画に関しては、試写会で接した方々より、広島・長崎が描かれていないという批判があるようだけど、はたしてどうか?

 その視点とオッペンハイマーへの視点は、同一線上にあるものだろうけど、1本の映画の中に幕の内弁当みたいなボリュームを望んでも詮無きことのようにも思える。

  おそらくは、監督のノーランもそこは悩んだはずなのだ……。

 ま~、観ずしては何も語れないんだけど、原爆の父という名で呼ばれてしまったヒトの葛藤を描いた作品が大きな賞を得たことが感慨深い。

 必見だねぇ。

ゴジラ-1.0』」と宮崎作品の受賞も喜ばしい。

 かつて『ALWAYS 続 三丁目の夕日』での山崎貴監督と白組による巻頭のゴジラ・シ〜ンに脱帽し、そこを観たいがゆえに2回映画館に出向いたコトもあって、なので余計に喜ばしい。

 

 クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』の次回作は、かの『プリズナーNO.6』 らしいというハナシがある。

 ただのリメークなら興醒めだが、このハナシが現実化するなら、パトリック・マクグーハンの編んだ、あの驚くべきイメージをさらに大きく越える作品として登場して欲しいと願う。

     

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 過日に画廊で会った丸山徹也氏より頂戴したテレビ録画のブルーレイ。

 NHKの番組で、黒澤明と能についての番組だったのだけど、安田登がインタビューにこたえているのには驚いた。

 この映像を観るチョイっと前に、氏の本を読んでいたので、このタイミングでこう来るかぁ~、と偶然に輪がかかり、当然に驚きの輪がでっかくなって、

「わっ、わっ!

 2度ほど、吠たえてしまったがや。

 安田の文章は明晰で確固としていて、能をこれほどに言葉として紡げるヒトは希有だなぁと思っていたけど、インタビューでの彼は想像した通りの明快さで、明解に黒澤の中の能を語っていて、とても勉強になった。

                番組中の下掛宝生流能楽師・安田登

 

 映画『乱』は公開当時に映画館で観たものの、なんだか顔作りやアレコレ大仰だなぁと思い込んでいた。けども、こたび丸山から頂戴した番組録画でその景観は一変。

 再見しなくちゃいかんなぁ、能表現を映画という表現に合致させようと挑戦した黒澤明の果敢に、今になって拍手をおくりたいような次第なのだった。

 

 同日にはYUKOちゃんより、岡本太郎関連の古いTV録画をDVDに焼き直したレア映像も頂戴しているけど、美味しそうなモノは後で味わう方なので、まだ観ていない。

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 経済評論家の森永卓郎氏はミニチュア・カーのコレクターでもあって、その一部が倉吉の「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」で展示された昨年だかに見学に出向いたことがあったけど……、その森永氏は末期のガンで闘病中。

 本人も遺作となると心決めているらしき本が出たので買って、読む。

 森永は、元日本航空アテンダントで退職後に東大にはいって今は教授職に就いてらっしゃる青山透子(とうこ)氏の本『日航123便 墜落の真実』に触発されて以後は、この墜落事件の真相を追って、青山女史同様に陰謀論だの馬鹿げているといった誹謗にめげず記述を続けてる。

 なるほど読めば読む程に、御巣鷹山に墜落した日航機事件は不可解が極まり、愕然とさせられると同時に恐怖をおぼえさせられる。

 日本政府が米国追従一辺倒となっていく経緯も、本事件が基点となっているらしきを森永は本で伝えようとしていて、オモシロイと云ってしまうとペケだけど、「?」と「!」が湧いては弾け、弾けては湧いてきて、多数の犠牲者が出た惨劇だというのに、ほぼ徹底された真相究明の遮断というのが今も続いているらしきコトに驚愕させられる……。

 一歩足を踏み外せばトンデモ本と烙印されておかしくない状況ながら、真相に迫れる数多の目撃談が封殺され無視されたまま圧力隔壁の破損というコトに話が導かれ、いまだボイスレコーダーの記録すら公開拒否(昨年6月での東京高裁判決)という流れと、その流れのさなかで隠蔽され続ける真実との、まさに“圧力隔壁”的な分断の厚みに唖然とさせられ、読了後にグッタリさせられた。

 闘病中の森永氏にはエールをおくりたいが、ギャグを好む方だから、こういうのもいいだろう。