丸さん・金杯・チャギントン

 

 過日、岡山電気軌道清輝橋線に乗っかって大雲寺前まで行く。

 どこをどうまさぐっても、過去、この路面電車に乗った記憶がない。

 東山線は頻繁に乗っているけど、なが~く岡山市に住まっていながらこたび初体験の清輝橋線。こういうコトもあるんだなぁ。

 

 で、大雲寺前から数分歩いて、ギャラリー108に行く。

 グループ展が開催されていて、友人の丸さん、丸山徹也が幾つか出品している。

 それを見に出向いたワケ。

 昨年に彼は表町の画廊アンクル岩根のギャラリーで個展(正しくは2人展)を催し、当方は惹かれた陶芸小品を一点買い求めたけど、こたびも陶芸に加えて木彫り作品を展示するというので楽しみに出かけたワケだ。

 多数の作家さんが参加というカタチゆえ、出展数は少ないけども、1年ぶりの彼はあいかわらずの元気印でハツラツ炯々として、喜ばしい。

    

 桧を削り、丸め、部分を磨き、部分に彩色施した見事な作品。

 タイトルは「新世界より」。

 一見は牧歌的ではあるが、共生か、こういう生体か、樹木めいた諸々を生えさせ、背には髑髏あり。頭頂にカエルのようでカエルでない生き物を置いて何かに耳をすませる人類の末裔?

 不思議な姿に、前回に鑑賞した作品同様に、しばし固唾を吞むような思いで凝視した。

 カタチの中にストーリーが潜んでいる。

 遠い遠い幻影的な未来の1シーンが確固としたカタチになって今現在に立ち現れただけでなく、この木彫りの中で物語が進行しつつある。

 

 貼り合わせでない、彫刻作品とした、製作中の集中と慎重が眼に浮かぶ。

 粘土造型ではやり直しが可能だけども、木像彫刻はやり直し不可の大勝負。

 ましてや、写真の通りの繊細で大胆な造型……。

       前回、昨年3月に表町の画廊で展示された作品「新世界よりⅡ」の顔部分

 

 こんな作品たちを眼の前にすると、アタマが下がるというか感嘆に痺れ、眺めているだけでデッカイ至福にくるまれる。他の方々の作品群はカタチもおぼろと化し、ただもう木彫り作品だけがギャラリーの玉座位置に鎮座す。他の作家さん達には申し訳ないけど、そう感じたんだから仕方ない。

 

 こたびは、漆塗りの作品も展示していたけど、ウルシの奥深さを探る習作という位置づけのようなので、それにはカメラを向けなかった。

 でもおそらく、来年あたりの個展なりグループ展で、いっそう跳躍した木と漆による新作を観ることが出来ようと、楽しみが1つ増した。

 作家自身も漆の性質に驚きをまじえた可能性を見ているようで、そこも頼もしい。

 今回イチバンに感心を寄せた陶芸小品は、この写真の、金魚をモチーフにした女性像。

 静謐な優雅が髪型に集約され、それが金魚の肢体がごとく後ろになびいているカタチに、感嘆させられた。

 彼は、彼の中で醸造される発想のコトを「妄想」とよんで、クスクス笑うけど、いいぞいいぞ、もっともっと妄想に耽って頂戴とエ~ルをおくる。

 

 こたびは、ジャズフェスのTシャツやら、秋本節のCDジャケットやらやらをデザインしているYUKOちゃんと共に探訪。

 画廊は6時までなので、やや時間が早い。プチパインはまだ開いてないし、この時間で開けてくれそうな店は岡山駅前のタカちゃんの店しかない。

 電話してお願いし、3人ともども移動し、お酒と美味い食べ物でお腹を満たす。

 

 で、その場でYUKOちゃんより、思ってもいなかったモノをプレゼントされビッグに狂喜。

 な~んと70年万博で売られていた24K GPの金杯セット

 箱に貼られた証紙も劣化少なく、当時をしのばせる。GP表記なので、純金でなく金を含んだメッキという位置づけになるけど、輝きが素晴らしい。

    

 彼女は70年万国博覧会以後に生まれたヒトじゃあるけど、ずいぶんと前から、同博に羨望の眼を向けていたようで、太陽の塔が改修される前の2003〜2007年に抽選で当たったヒトのみ入場見学出来た塔内も見学している。

 狭き門を突破。傷んでいるとはいえ、1970年当時の姿をマノアタリにしたワケで、これはとても羨ましい体験だ。

 で、そのさい関連施設の特売でご自身が入手したこの稀少なグッズをば、こたび古希を迎えた当方に贈ってくれた次第なのだ。

  

 ゴム版画で刻印の「祝こき」もシャレてる。古希でなく、コキでもなく、「こき」がいいのだ。

 古希ではいかにも古びた印象が先立ち、コキでは敬意が失せて軽すぎる。彼女はおそらくは、そのあたりを熟考の末でひらがなを選んだのだろう。

 あ・り・が・た・い。

             昨年10月29日の太陽の塔

 同日の塔内。2006年頃にYUKOちゃんが体感した塔内はこんなカラフルさはなかったよう思えるけど、よりオリジナルな空気や色彩を味わったという点がとても羨ましい

 

 ともあれ、嬉しいったらなかったなぁ。

 かくなる上は後日に膝つめあわせ、70年万博バナシの四文字固めで、太陽の塔談義の花咲か爺じぃ~と化してやろうとも思うのだったけど、この日はヤヤ早く起きていた関係でオチャケの酔いが早くって、いけねぇ~、会話中にマブタ下がって眠りモードに落ちちゃった。

 やむなくタカちゃんにタクシー呼んでもらい、早々の退散という次第になって丸さんにもYUKOちゃんにも申し訳なかったけども、やって来たタクシーに、

「あっら~!」

 一転、一瞬に眼が醒めちゃったわ。

 つい最近に両備グループが導入したチャギントン仕様車だよ。

 よもやこのファンタスティック(笑)な車に乗ろうとは夢ユメ思ってもいなかったんで、

「なんだかメチャメチャ良い日に終始したなぁ」

 丸さんとYUKOちゃんとタカちゃんが手を振るのを後方にしつつ、

 充実

 の一語を点灯させるんだった。

 ……乗った感想としては、ま〜夜でよかったなぁ〜というコトかいねぇ。

 昼間、こき迎えたオトコがヒトリ乗ってる図となると、ヤヤ滑稽な気がしないではない。

 けどま〜、タクシーというのは、目的じゃなく、あくまでも運んでもらうための手段ゆえ、万が一、白昼にこれと遭遇してもコチラから乗車拒否なんぞは断固しない。