CMYK

 

  過日、2日半ほどブッ続けの雨模様。倉庫を片付けようと思っていたけど、外に出るのも億劫。

 丸3日、部屋に垂れ籠め、何冊かの本とDVDを眺める。

 大昔30代前半の頃だかに買った古い映画ポスターを紹介した輸入本を久しぶりに取り出し、今とは異なる、色使い、当時の文字のカタチ、構図、配置などなどに小さく感嘆する。

 それらをそのまま現在の映画に適用は出来ないけど、それがゆえ逆に、その味わいに親和させられた。

 去った時代のモノながら、古びず、退色せず、とてもグッドな味わいの数々。

 

 で、フッと思い起こし、パンナムの1960年代頃のロゴのことを調べ直してみるに、米国企業の社名ロゴについての詳細資料をネットでみっけた。

 前々回の記事に書いた通り、映画『2001年宇宙の旅』で使われた宇宙船側面のパンナム・ロゴは1957年に一新(それまでにもアレコレのデザインあり)されたモノなのだけど、これの色についての記述というか、印刷のための色指定をみつけたワケだ。

 表記によると、16進数での色指定は「#2b67ac」であり、CMYKカラー分解での指定は「70 40 0 33」とある。

 これはラッキ~。

 パンアメリカン航空のロゴ色が、これでハッキリしたわけだ。

 1/72スケールというでっかい模型製作にまもなく着手しようとしている身として、このカラー指定はとてもアリガタイ情報だわさ。

 一般には「ラピスラズリ」という名で知れた青色だ。 

 青色というだけでは、薄いのやら濃いのやら、絶妙な色調が多々あって、ホンモノの色というのは見いだしにくい。

 それが「ラピスラズリ」であり、印刷するならば4色分解での指定数「70 40 0 33」、シアン70%・マゼンダ40%・イエロー0%・キープレート(黒)33%、であること必需というポイントを押さえられたのは、嬉しい。

 

 さっそく過日に造った模型用デカールの版下を修正。パンナムのロゴは1色のみなので、作業楽勝。指定色に変更のみ。

 80年代末のホノルル空港のパンナム・ショップで販売されていたマグカップの、そのレプリカを持ってるけど、このヤヤ薄っぽく見えるのが正当色なのだね。

 

 事のついでだ……、1/72のオリオン号の内部パーツを造る。

 運転席じゃなかったコクピット部分と客席部分を構築し、以後の作業に備えようという魂胆。

 本体に組み込めば、ほぼ95パーセントは見えなくなるけど、見えない場所にあるべきモノがちゃんと有るのがイイのだ。

 見えなくば造る必要なしというのが「合理」って~もんだが、模型は合理の産物じゃなく、いっそ合理主義的指向を「理不尽」なものとして哄笑する位置にあるような気がしないではない。

 見えないからジーンズの下はスッポンポンじゃ、居心地悪いじゃないか。

 

 映画のシーンを眺めるに、客室の前面にもう1部屋あり、さらに奥側にハッチがあるのるが判る。

 サービス提供のための乗務員室らしき空間がチャンと描かれているワケゆえ、見えずとも……、そこも造っておく。

 パーツを改造してハッチ部分をカットし、その向こうに小ルームらしきがあるのを“再現”しておく。

 ギャレー(調理室)機能もある部屋だろう、と想像しつつ、ではオリオン号ではその設えはどのようなものかと思いをめぐらすのは、た・の・し・い。

 この新造作業は、2日半の雨のおかげかな?

 と、それにしても映画製作時には液晶モニターは存在せず、液晶という性質の「概念構築とその実験」という段階だったはずなんだけど、早やこの映画の、この宇宙旅客船では、椅子背面に個々のディスプレーが描写されているワケで、1席ごと塗り分けつつ、あらためてその先取に鮮烈をおぼえさせられた。

 

 次いでコクピット部分も造型。

 Piers Bizony著の「2001 Filming the Future」に撮影当時のオリオン号コクピット・セット図面が掲載されている。

 これを参考にしつつ、キットのパーツを活かしつつ、アレンジを加える。

 椅子の1つをあえて後ろ向きに配置し、テーブルめいたモノを置いてみたりする。60年代だから天板はややチープな木目調プラスチックっぽくに……、などと思い描きつつ工作。

 

 LED電飾を考えているから、まだ貼り合わせ出来ないんで、天井などは後回し。

 工作はここまで。

 毎度のことながら、作業後のビールがうまかったぁ。

 まだお昼の3時前だ。

 クピ~っと500ml缶吞み干し、シュポ~ンっともう1本あけちゃうさいの気分良さたるや、昼下がりの情事っぽい、ウフフって〜な背徳味。

 

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 余談ですがぁ〜、映画『キングスマン ゴールデン・サークル』に米国のバーボン製造企業「ステーツマン」を装いつつ実は正義の秘密組織というのが出てきて、その本社ビルも画中に描かれてるけど、このビルが実は、パンナム本社ビルなのだった。

                   劇中でのビルディング

 

 もちろんパンナムは今はなく、現在のビル所有は生命保険会社MetLifeなんだけど、1963年にパンナムが建てたまま今も活用されているのが……、いいな。

       

                       現在の姿

 日本だと、60年代のビルなんて「再開発」の名のもと、取り壊されてしまうのが常だけど、残すべきを残す文化土壌が養われ更新し続けられているのが、羨ましいな。

        

 1963年にオープンした頃のパンナム・ビルディング。ロゴ部分以外ほぼこのまま活用されているようだ。いいねぇ。

 なるほど日本は、法隆寺だの東大寺だのは大事にしてはいるけど、近代のモノに関しては「消費」という経済的原則のみで駆けてて……、いけませんなぁ。

 黒川紀章のカプセル・ビルも壊し、明治に植樹された森を捨てようとしたり……、そんなコト続けてちゃ後世に何も伝わらないし、文化継承という基礎の土さえ痩せちまう。

 100年先には、

「2024年前後の日本は目先利潤のみの、不毛時代だった」

 と嘲笑されるぞ、きっと。