ロケッティア

 

 ある日とつぜん、1本の映画を想いだし、無性ガムシャラに観たくなるって~コト、あなた、ありませんか?

 きっと、あると思いたい次第ですが、当方、時々そういう症状に襲われます。

 降って湧いたように、ぁぁ、観たい見たい、頬張りたい囓りたい~、居ても立ってもいられない飢餓というか、禁断症状……、ですな。

 

 このたびは、ディズニーが製作した1991年の映画『ロケッティア』が、それです。

 公開時に映画館で観たしDVDも持ってるんですが、禁断昂揚のままBlu-rayを買い足しでの飢餓解消でありました。

 

 

 これには、伏線となるべきコトがあります。

 部屋の身辺、重箱の隅をつつくように小物類を片付けてるさなか、その『ロケッティア』のグッズが幾つか眼にとまり、

「ほほ~」

 懐かしみをぬるい湯のように湧かしたのがキッカケですな。

 

 

 グッズは、この映画が米国で公開された直後に、カリフォルニアのJames君が送ってくれたもの。

 彼は映画のキャラクターの2次版権(玩具類などでの使用権)を扱う仕事をやっていて、交流しているうちプライベートでもヤヤ親しくなって、ポップなグッズを贈ってくれたのでした。

(当時は廉価なモノだったけど歳月が流れて今やVintageな稀少Toy扱いのよう)

 そのあたりの詳細は省くけど、ともあれ『ロケッティア』の小物を久しぶりに手にし、映画本編を再見したい気分がモ~リモリと湧いたのでした。

 

 主役のビル・キャンベルがただのイケメンで魅力がほとんどなくってガックリですが、脇をかためる俳優たちが素晴らしく、ジェニファー・コネリー、先々月だかに亡くなったアラン・アーキン、悪役で登場のティモシー・ダルトンなどなど、グッドぐっど。

 舞台は1930年代半ばの米国。ヒトラー独裁政権を作りヴエルサイユ条約を踏みにじって再軍備している頃……。

 ジェニファー扮する女優をめざしているヒロインに悪漢のティモシーがスケベ~心を抱いて、ものにしようとガンバッてるあたりが特におもしろく、あの007の彼がこうもスケベっぽくなれるもんなんだなぁ、なんといっても眼がイヤラシイや、と違う映画まで連想させてくれて、そういう部分もイイのです。

 

 スウィング・ジャズが台頭し音楽シーンが変化している時代。劇中に登場のクラブ・シーンのこの歌手の妖艶さと歌声が、ク〜ッ、最高。

 フランク・ロイド・ライト設計のアールデコな家屋でのロケがワンダフル(カリフォルニアのミラード邸かな?)。その様式美とキザに振る舞うティモシーのカタチが実にまったくグッド・マッチング。

 こたび初めて気づいたけど、『ブレードランナー』で孤独な遺伝工学技師セバスチャンに扮してたW・サンダーソンが、セリフなしの飛行機整備士役で出てました。

 ワオッ!

 このヒトのサイン、ワタシ宛の直筆サインが入った写真を持ってるんだけど、それはJamesが仕事で彼に会ったさい、わざわざ筆記してもらったもの……。

 想わぬ“再会”で2度、ワオッでありました。

 

 飛行するために背中につけるロケットパックに穴があき、激烈な引火物たる燃料がこぼれるのをチューインガムで塞ぐあたりのアメリカンなテーストも面白いし、今もって謎の人物ゆえに興味尽きないハワード・ホークスが重要な役として登場し、自身が設計の巨大飛行機模型が優雅に飛行するのをドタバタのさなかに見いだすあたりの描写も、ワクワクしたギークな疼きを喚起させられまする。

 主役のビルはダメだけど、が、アールデコ仕様の背景とジェニファーとティモシーの組み合わせがダントツ。そこを見るための映画といってイイかも。

  この場合、ジェニファーの胸じゃなく、後ろのカレンダーに眼をむけましょう。1930年代半ばに登場したアールデコ・フォントをチャンと小道具に反映させている。

 

 印象はこたび20数年ぶりっくらいの再見でも、変わらず。

 当時さほど大きなヒットではなかった映画だと思うけど、幾つか印象深いシーンがあって、それらを久々に味わって、

「いや~、いいなぁ」

 嬉々しましたがや。

 

 で、あわせて、今は疎遠になったJames君はどうしてるだろ? 当時、第一子として娘さんが産まれ、幼児の写真を送ってくれたコトもあったけど、それからもう32年経ってるんだから……、その子ももう32歳じゃないか……、あれあらあらっ、時が過ぎいく感触を、まさにロケット的速度で知覚した次第。

 歳をとったゆえの悲哀というか、歳をとらなきゃ味わえない時間速度の面白み……。

 

 次にまたこれを観るのは、さ~、いつになるんでしょうかしら。

 ま~、そんなことはどうでもいいのです。これで禁断症状が飽和し、オマケで、かつての知友を回想できたというコトを今回は書いたまでです。

 ぁ、いや、逆ですね。彼を思い出したゆえ『ロケッティア』を再見というのが正しいような。