夏といえば、蝉。
やや郊外に住まっている身としては、蝉の声は日常のもの。どういうワケだか小庭の金木犀界隈で毎年に蝉が育っていて、いつも2ダースくらいいるのかな? 朝の6時半頃から鳴き出し、7時を過ぎた頃には騒音に近い大音声となる……。
その蝉シーズンも8月に入って早や中盤をむかえている。お盆の頃には個体数が減少し、おのずと鳴き声も減っているはず……。
過日早朝、庭池すぐそばで 1匹の 蝉 が殻から出て来るのを目撃。
セミの羽化は夕方頃と聞くけど、目撃は朝の8時頃。
スローモーながらジワジワと脱皮。
抜け出た頃会いをiPhoneで撮影……。
けども場所が悪い。
脱皮後、チョイと動いた刹那、足をすべらせ落ちちゃった。
お池にポチャンと落ちちゃった。
「さ~、たいへん」
こちらも慌て、助けようと手をさしのべかけたけど、蝉はがんばった。
孤軍奮闘、懸命にもがいて岩にしがみつき、一息いれては移動し、一息いれては登り、自力で水面から脱出。
この顛末を眺めいってたので、撮影どころじゃなかった。
蝉は這い上がり、しばし岩場で休息した後、いきおい、飛んだ。
飛んで金木犀の奥へと消えた。
アトで調べて知ったけど、羽化さなかの事故はとても多く、落下や鳥に食われたりと、な~んと蝉の6割 はそれで死んじゃうらしいのだ。
とりわけ落下が危ない。頭部を守るヘルメットなし……。しかも全身がまだ柔らかな上に、存分に動けない身。そこにアリがたかる。生きたまま解体されていく。
このたびの目撃では池に落ちたのが不幸中の幸いだったか……、ひどく感動する程でもないけれど、それなりのインパクト有り。
生存確率わずか40%の狭き門をくぐった、この1匹に、
「一夏の人生をしっかり味わえよ~」
金木犀を見上げつつ、当方、願うよう呟いた。
ま~、蝉なんだから人生というのはおかしいな。セミセイと云うのがいいのか、この場合。
でもゼミ生みたいで語感わるいな。
適語がないのは誰も蝉の生涯の深い部分なんぞは考えないからだろう、ま~、私もそうだ。蝉が哲学しているとは想わない。
センダンに留まってる別のセミ
一夏の恋は思い出深いものだけども、翌夏には次の恋が生じちゃったりもして、やがて、「どの一夏の恋がイチバンだったかいなぁ?」と苦笑するのがニンゲンだな。身に覚えがある方も多かろう……。ま〜、私にはないけど、な。
けども蝉に来夏なし……。
土中で過ごし木の根ッコから樹液を吸うという孤独な生活を数年やってから、地上に出て脱皮して羽ばたくけど、異性に会ったり景観を堪能したりの、フリーを謳歌できる時間は圧倒的に短小。たいがい2週間前後。なが~く生きても一ヶ月らしい。
気の毒な生き物だ……、と毎夏に想う。ま~、だからこそ愛しい感じアリアリ。
でも、それはニンゲンの尺度ですな。蝉が味わっているホントの気分、一夏のみの悦びや哀しみなどモロモロ、知りようがないっす。
そんなんだから余計、蝉のその生涯に……、崇高を感じるワケで。
以上を書いてるうち、ウルトラQ の1話を思いだした。『ガラモンの逆襲』に出て来たセミ人間。
なんだか気の毒な存在だったなぁ。
どっかの遊星が地球侵略を企んで地球というか日本に送りこんだ工作員なんだけど、男性女性の区別がつかない容姿に化けたうえ、いつもでっかいチェロ・ケースを担いでいて、それを懸命にトラック荷台に積み込もうとしている様子やら、破壊工作失敗で結局は仲間に処刑されるという……、その短き生涯が妙に痛々しく、憎むべき敵というより、哀れみが先に浮上するキャラクターだった。
ま〜、だから子供の頃、「ウルトラマン」でこれがバルタン星人として復活(?)したさいは、
「ふぉっほっほ〜」
と悦んだりしちゃったワケで。