回転する地球

岡山市立市民文化ホールに「星の息子」を観に出向く。
作・演出は坂手洋二渡辺美佐子円城寺あや、鴨川てんし、中山マリ… 劇団・燐光群の方々の演技。
舞台中央に配された高い鉄塔というかヤグラ上の演技に、高いところが苦手なボクは足が竦む擬似感覚を味わったが、渡辺美佐子さんはいいなあ。
はるか昔、高校から大学にあがる頃合いにとある映画館運営企業が経営の「おふくろ」という居酒屋兼定食屋でバイトして、ボクは彼女に朝ゴハンを出したことがある。
映画のキャンペーンで岡山に来ていたんだ。
その頃の彼女は日活専属のスターだった。
彼女の食事のあとに、さらに若山富三郎にもゴハンを出したっけ。
その渡辺美佐子さんの「星の息子」でのフンワリとした演技、でも芯が通っているらしき老女のカタチがカッコ良くって、魅入った次第。
終えて、出口で坂手洋二氏にちょっと言葉を交わし、馴染みな店へ。
トゲがあって、紅い花のような実のようなものがついてるのが瀟洒な瓶壺に活けてある。
「U先生が持ってきて下さったのだけど名を聞いていないの」
とのコト。
それで、何だろ〜なコレ? と眺めつつ呑んでたら、そのU先生がうまい具合にやってきた。
「ロウヤガキという」
のだそうだ。
柿の一種。
渋柿ゆえ食用には向かず、もっぱら盆栽とかの観賞に使われるらしい。
はじめて眼にした上に、妙に印象が濃い形。
それでパチリ。1枚写真に撮った。

ゆったり2杯ばかり呑んで、店を出て、少し迷ったけど、もう一軒。
旧知のF子さんが片隅にいて、「さっきまで芝居を観てた」とのこと。
「な〜んだ、ボクも観てたんだよ〜ん」
てなコトになって、観てきたばかりの内容を話してる所に、その坂手洋二氏と円城寺あやさんがやってきた。
良い偶然だ。
隣席に着座した坂手氏の顔を見つつ、犬島での日焼けは褪めましたね、と申せば、「犬島の後、さらに沖縄でもっとひどく焼けてた」というコトを聞く。
1杯で帰るつもりで立ち寄ったのが、結局は、またぞろ遅くまで杯を重ねるコトになった。
失望し、萎縮するような、時代の流れの渦中にあるからこそ、そこに身を委ねちゃいけない… と感じた夜。
帰路、街路灯のない暗い開けた場所で自転車をとめ、夜空を見上げた。
流星を少し期待したけど、それは見えなかった。
オリオンが西にあって、木星もまた西にある。
夜が明けるにはまだ数時間、ある。