エコー探査

つい1週間ほど前に本年度の岡山JAZZフェスティバルを終え、その数日後に、某国立の医療センターにてエコー検査を受けたのだった。
ボクは模型関連な仕事を本業とするが、この9年間、夏から秋にかけては、その岡山JAZZフェスティバル運営に携わっていて、これがなかなか大ハードなのだ…。模型はいわば1人で可能な仕事なのだけどもジャズフェスはとにもかくにも大勢なスタッフを動員してのイベントなので、醍醐味もあるけど… 大変なのだ。
検査日程は半年前から決まっていて、岡山JAZZフェスティバルを終えたら直ちに受けるというコトにしてた。
左右の首筋の動脈の状態を調べられて、ボクの血管の按配を診られるというワケ。
首にゼリーのようなものを塗られて横たわり、そのゼリーの上を機器で撫でられる。
機器から電波が照射されていて、これが我が動脈の内部で跳ね返って数値となり、画像となる。
ボクは横たわったまま、傍らのモニターを眺めてる。
切開せずともつぶさにボクの血管の様子が判るのだから、今さらながらに、すごい技術と思う。
月に出向いた「かぐや」は、そんな先進の機器を搭載した医療調査団みたいなもんだ。
実際、エコーによる検査器もある。
「かぐや」は大まかに云えば15種の医療器具を搭載していて、月の表層から内部に至るまでを詳しく調査した。
いわば、月は「かぐや」で検診されたワケなのだ。
人体のエコー検査に似たのがLRSと呼ばれた装置で、これは月の地下およそ5Kmあたりまで探査が出来る。LRSはルナ・レーダー・サウンダーの略だそうな。
これによって月の地層が判ってくる。
ボクの血管内のようにデコやボコがあって、それがエコー画像として地球に届く…。
あんまり知られていないけど、実は40年前のアポロ15号や16号でも、このエコー検査を行なっているのだ。月に降りた人達が調べたのではなく、降りた人を見守りつつ月を周回しているアポロ司令船でもって調査を行なったのだよ。
でも、40年の歳月は大きい。
アポロが行なったエコー検査に較べると「かぐや」のそれははるかに精緻で精妙だ。
なもんで… このエコー検診でタバコの吸い過ぎが判明したというのではなくって〜… かつてはドロドロドロに溶けて焼けてた灼熱の月が冷えていった過程が、判ってきたのだ。
層が分別出来るから、ドロドロドロ〜に燃えてた状態から徐々に冷えて固まっていった過程や時間もみえてくる。
すごいね〜、昭和天皇ならば、「あ、層…」な感想もおもらしになるでありましょうな。
ちなみにアポロと「かぐや」の大きさを比較図として掲載しておきましょう。

なるほど、アポロ(CM/SM)に並べると「かぐや」は小さくも見えるけど全長4.8mだ。4.8mといえば、ちょいと大型な車みたいなサイズだけども、その大型な車一台を月に向けて打ち上げたのだから、逆説的にいえば、ホントはすごいのだ。
昨今、やたらに「はやぶさ」が人気なれども、「かぐや」も忘れちゃいかんな。
いや、当初はね… この「かぐや」がどうも好きになれなかった。
かっこ悪いカタチだな〜、と思ったもんだ。
NHKが己のがハイビジョンカメラの成果を誇るために作った番組のひどさ(桂文珍が司会)がこれに輪をかけた。
さらに云えば、本来この「かぐや」は「セレーネ」という名を持っているのだ。正しくはプロジェクト全体を示す名だけど、ともあれ「セレーネ」は「セレーネ」だ。そんな麗しの女神の名を持ってるのに、「愛称」を募集しちゃったもんだから、「かぐや」という名がくっついた。まるで、夜のお勤め、
「本名は加山雄子だけど、お店ではルリちゃんよ」
てな感じになったのが、またイケナイ。
でもま〜… そんな部分は眼を閉じ、月に出向いた実に数少ない"人間の痕跡"としての「かぐや」はやはり称賛すべく、なのである。
人こそ乗ってないけれど、アポロ計画のいわば継承者みたいな存在だったとも思うのだ。
もし、明石市立天文科学館に出向かれたなら、展示室の天井に模型を吊ってあるのでご覧あれ。
あんがい、良く出来ております。とはいえ、手の届かない天井近くのうえ、物体が黒色なので… いささか見にくいのですけども。
本ブログに掲載の模型は、その科学館の展示模型を作るための"製作検討用"に作ったペーパーモデルです。