ダイオウイカ・「深海-挑戦の歩みと驚異の生きものたち」

上野の国立科学博物館
朝9時からオープンというのがありがたい。
なので早起き。
ホテルの朝食を、例によってドッチャリ食べる。

温泉タマゴがあるのが嬉しい。コレステロール過多は気にせず複数を食べ… ニッコリ笑み浮かべて一服後、博物館に向かう。
そう、ダイオウイカ
『深海』をテーマにしての特別展なのだから、このチャンスを逃がしちゃいかん。
あの衝撃ともいえるNHKの番組を観ているから余計に期待がふくらんでた。

でもだ… 見学するに、かの番組ほどのインパクトは頂戴出来なかったんだ。
深海6500の原寸大の模型はあるし、諸々たくさんの深海生物のアルコール浸けもまのあたりにするけども、何かが足りない…。

ポスターやらチラシやら宣材に、かのNHKの写真が使われているから、どうしても、それを上廻る"刺激"を求めちゃってるワケで… 当然に番組内で遭遇した巨大なのはいないワケだし、展示された6mくらいなのは、色が褪せ、萎び、あんまり面白くない。
元より色彩が薄い深海の生き物達なれど、何か重要なものを抜き取られたようで…、
「お〜、すっげ〜」
と、ならない。

何気圧もの重圧下で生きる深海の生き物を1気圧下で見せるというのは、やはりとても難しいのだな、と察する。
ま〜、それゆえ逆に、NHK番組内での映像が鮮烈に際立つということになるんだし、法外なほどの値打ちがあるとも感じられる次第。
テレビの中に観た銀色の光沢、動き。
あの銀は最初から最後までがシルバーではなく、時に部分は金色、時に濃い茶色、刻々色を変じてまたシルバーへと変わってた…。

虹色素胞という皮膚細胞がもたらす効果なのだそうだが、それにしても素晴らしい。
人間の皮膚がこれなら、人はもっと輝くのにな… と半ば本気なジョークが浮く。
そして、眼。
あの巨大な眼の存在は圧倒的だったと思う。
何やら思索しているようでもあり、不動明王の木仏のそれのようでもあり、何よりも、それが"活きて"るコトの驚きがあったワケだ。
ある種の堂々さがその眼には宿っていて、1対1で見詰めあったら、即座に負けるんじゃないか… 揺るぎない自信ある気魄に満ちていて、まさに大王のそれなのだった。

なので、映像のインパクトに較べ… こたびの『深海展』はインパクトが薄いのだった。多くの稀少で貴重な展示物に満ち、実にうまくレイアウトされているとはいえ、標本化された諸々には"深海の生"はないのだった。
展示が悪いという次第ではまったくなく、むしろ、深海がいかに遠く深いものであるかを、容易に眼に出来ぬものとして了解させられた…。


それで念頭に浮くのは… 
やはりジュール・ヴェルヌなのだ。
彼は早や100年以上前、我が国が明治という時代になった頃、このダイオウイカの、それも深海中での群泳を『海底二万里』で描写してるんだから、すごいじゃないか。
しかも、大きく、鋭敏柔軟な複数の足をもっていつつも、クジラとの死闘において最終的に常に負ける存在、というコトまで彼は記述しているのだから素晴らしい。
事実、イカは常にクジラには負けるのだ。
幾つもの触手で絞めつけクジラの表皮を傷つけようとも、クジラは辛抱強く耐え抜いてジワジワとイカを囓り抜くのだ。

というワケで、これは昔の某日のディズニーランドのスーベニア。今も売ってるんかな?
可笑しな云い方だけど、100年前にヴェルヌは小説『海底二万里』でもって、ノウチラス号の窓を通して既にこの「深海展」をやってるワケだ。


ボクが興をおぼえたのは、日常に食べている深海魚たちの実体の展示だった。
「あらま、こんなん食べてたんか〜」
と、これには感心した。
白身魚のフライ、といった表記でしか接しえなかった魚の正体を『深海展』では複数の展示で見せてくれていて… これが面白かった。
「えっ、ウソだろ。あらま〜ま〜」
ってな感じなのだ。


よってボクは以後、白身系なフライに接するたびに、この70〜80cmくらいな大型でヒゲのある、怖い歯形のこやつめの姿を思い浮かべるであろう。
ややグロテスクな顔とは裏腹に、あんがいと、タルタルソースとの相性がエエやっちゃな、おまえさんは… と、チクワの天ぷらと共に思い浮かべるであろう。



さてと、『深海展』のミュージアムショップ。
サンダーバード博』のショップも、ま〜、それなりにグッズが集合してるんだけど、『深海』のオフィシャル・ショップには規模も量も負けてる。
よくぞここまでイカで製品を造ったな〜、とチョット笑った。
見よ、このイカのヌイグルミ達。

大小各種。
すでに照り焼きになったような色合いも可笑しい。
さほど、かわいくもない。
されど、実に無造作に大量に並んでいるのを見ると、深海のイカの群泳をばチョット想起させられる。質よりも量でもって、ある意味、この深海展の見所の1つ… とも思える。
実はこれに良く似た色合いとテーストな逸品をボクは持っている。
7〜8年前、やはりディズニーランドで買ったノウチラス号ヌイグルミ。色に形に柔らかさ、既にしてコレは以下・イカ・同様な感じではあるまいか。


な次第で… ヌイグルミやら、これまたでっかいイカしたクッキーなんぞは買わない。
光るメダマも買わない。


自分用にとオフィシャル・ブックのみ、買う。
高かったけども良い本だ。展示されたほぼ全てがこの全ページカラーの1冊に入っていて深海の学習に最適。
カバーにはホログラフィック(じゃないけど)な印刷が施され、見る角度で様相が転じる。デザインもシンプル。良い。