サンダーバードと原子力

日曜の夕刻に選挙に出向いたんだけど、フタをあけると、岡山県投票率は全国最低2番めの48.88%だったそうな。
半数以上が投票に行かず、他者の選択に身を委ねたということになる。
その48.88%とて、20、30、40代の票よりも、概ねは65歳以上の方々の票が多数をしめているというから… ええっ!? となる。
32歳のAさんと68歳のBさんとでは、思う国の形は違っているはず。
Aさんら若い世代の棄権でもってBさんら高齢な方々が支持の誰かさんが国政を担う。
それでいいのかな?
いい、ワケもない。
揺らぐ憲法
強まる原発依存。
それは直接に岡山に関係ないという方がいたけど… そうかな?


※ 昭和22年に文部省が発行した「新しい憲法のはなし」が、良い。青空文庫で読める。ここに書かれている高らかな理念こそが、現首相がかつて常々に口にしていた"美しいニッポン"じゃなかろうかとボクは思う。これを肯定し誇りにして世界に発信出来ない現首相らの中には"逆説的な自虐史観"が逆巻いているんだろう…。


さてと。
人形劇『サンダーバード』は、実は原発というか、原子力の世界だ。
第1話の「SOS原子力旅客機」を持ち出すまでもなく、飛行機だって原子力が動力源。
主人公たちが住まう孤島(トレーシー島)の邸宅もだ。

なんせ、厨房には電子レンジならぬ原子レンジだって有るんだから…。
よって、ボクの脱原発の気分には似つかわしくないカタチじゃあるんだけど、これは… 仕方ない。
サンダーバード』は1963年(製作時期)頃の、原子力がまだバラ色のコロモを纏っていた時代の作品なのだから、それがもたらす災禍へは焦点が結ばれない。
事故あらば大変なことになるという認識が淡くって、基礎となる知識がまだまだ稀薄だったもんだから、これは仕方ない。
残念なことではあるけれど、なんせ50年前の作品なのだから、そこは寛容な精神でもって接するしか、ない。


そのあたりを踏まえての事かどうかは知らないけれど、『サンダーバード博』の"企業ブース"では、例えば某社が、大きなトレーシー島のディオラマを造って、諸々のサンダーバード施設の電力を、太陽光やら風力やらのエコ・エネルギーで運用するという新規なヴィジョンを見せてくれていたり、する。
原子力じゃ〜ないわけだ。
一方でこの大きな企業は、その原子力事業部が海外へ原発を売り込んでインドやらチェコやらから既に受注を受けたり、地震大国トルコに首相共々に営業に出向くむということをやってるんでボクはこの2枚舌の企業活動に誠意を感じる事が出来ず、ましてや我が愛する「サンダーバード」をそういった"営業戦略"に巻き込んでいるカタチを示しみせているワケゆえに… いささかの不穏をおぼえたりも、する。
安心安全を謳うなら、トレーシー島ディオラマもまた原子力のそれでの"新規"を見せればイイではないか…。

サンダーバード博』はそのような2面性もまた垣間見せてくれるから、ある意味、2重に面白くはある。
1964年に放映されて大人気となった「サンダーバード」を基軸にして、今という進行形の時代の形を透かし見せてくれてもいる。


上記な現実は置き、さてさて人形劇の中のトレーシー家邸宅。小さな孤島に設けられた大規模な施設の中核となる屋敷。
巨大なプールのある60年代風味たっぷりのバンガロースタイルな家屋とその構造は、今もってチャーミング。

居間の後ろに実はサンダーバード1号が隠されていて、それに乗り込んで機体ごと降下移動。前庭に配置のプールから外部に飛び出せるというオートメーション構造は今もって抜きんでて素晴らしい。
お台場の『サンダーバード博』でこの模型をご覧になった方も多かろうけど、今回はちょっとメーキングも混ぜ合わせて、本模型の知られざる部分(苦笑)を紹介しようと思う。

おかしな事にこの邸宅は今まで本格的には模型化されたことがなくって、今回が初めてのことらしい。

製作にあたっては、まずは家屋構造というか部屋割りレイアウトからスタートした。
全話を見直し、劇中に登場の室内シーンをチェックし、辻褄をあわせ、照合しない構造は想像で補って基礎図面を描いた。
もっとも特徴的な居間であり本部でもある部屋、格納庫、5人の兄弟の部屋、おばあちゃんの部屋、ミンミンの部屋、ゲストの部屋、ブレインズの部屋と研究室、娯楽室、厨房、食堂、バスルーム、トイレ、ランドリー、諸々…。
サンダーバード1号が移動するのだから、居間と格納庫とプールの中央は直線状に結ばれる。
プールの下には発射サイロが隠されてる…。
でっかい家なのだ、トレーシー家邸宅は。

劇中に直に描かれているワケじゃないけれど、ジェフ・トレーシーとペネロープは大人の関係性でもって結ばれているようだから… ゲスト・ルームはペネロープが島に滞在するコトを念頭に置いてレイアウトし室内のデザインも決めた。

上の写真は製作中の邸宅1階部分。手前がゲストルーム。その横がエントランスホール。
1階部分は平たくないの。玄関の所で変化あり。これがTVの中でも見られる正しいカタチ。
下の写真は1階部の別角度。


模型として、本作は外装を見ることしか出来ないけれど、LED照明によって、部屋の一部は窓を通して見ることが出来る。
展示の配置上、このディオラマの背部はやや見にくいけど、そこにバスルームがあって、実はミンミンが入浴中だ。
窓を通して、ほのかに入浴中の同女が見えるのだけど、これは模型制作者の密かなオアソビ。
本作の納品時、関係者一同にライトを点灯してのプレゼンを行ったんだけど、弾けるような笑いと共に、かなりウケタ。


下の写真は2階部分。その製作中写真。


格納庫の配置が判る、でしょ。
この部分は屋根を付けちゃうとまったく見えなくなる。なのでちょっと作業は手を抜いた…。というよりは、この部分にはLED照明の配線がゴチャゴチャ這い廻るコトになる。




内装の諸々。いずれもオール・ペーパー、すべて紙。イスは1cmくらいの高さしかない小さなもの。
紙ゆえ、何だか脆弱に思えるけど、実はけっこう頑丈。ここには載せてないけどビリヤード台といった大道具も窓を通して見える。


ジェフのプライベートな部屋は、これはまったく劇中に登場しなかったけど、それはほぼ絶対にあろう部屋だろうから、本作ではちょっとした遊びとして、とある映画の一室をそっくり模倣した。

サンダーバード」も「2001年宇宙の旅」もボクの中では同じ場所にある敬愛する映画なのだし、"模型の愉しみ"として、こういったオマージュもまた結構じゃないか… と思ってる。
上記した通り、"想像で補う"以外に手段がない部分が多々あるわけで、その意味において、内装部は模型作者が濃く関与した"オリジナル"であって、忠実な再現模型じゃない。けれど、想像を膨らませることで、より『サンダーバード』の世界に密着出来たと自負する。


ギミックとしてはプールの開閉。
LEDによる電飾。
展示物としての効果を踏まえ、LEDは光量が高いものを内蔵。
ただし模型の主素材がペーパーなので、そのための放熱対策として照明はあくまでもスイッチを押している間のみ点灯するというスタイルをとった。
プールは手動で開閉する。発射サイロの一部を見せるというコトに主眼を置いて、内部はかなりディフォルメしてある。


発射サイロを埋め込んだ台座部分の基礎工事。ここはペーパーじゃなくスチロール板。ハデな色合いは、切り出したパーツがゴチャゴチャにならないようにとの… 配慮ゆえのもの。

基礎工事パート2。


基礎工事パート3。


サンダーバード』というTVシリージは上記のように、遊びを容認出来るような拡がりと深みがあるんだ。ま〜、その点のみにおいては、先に記述の某社の大型のエコロジカルなトレーシー島全域模型は、ある種の意義を持っている。それ自体はけっして悪しきじゃない。

上写真:側面から見た邸宅。プールを見下ろすフロント部分が右側、だよ。



思えば、「サンダーバード」で描かれるのはボランティア活動だ。
大富豪らしきトレーシー家と英国貴族階級でやはり富豪のペネロープ家の少数な人と、その支援者若干による、極めて大規模な災害救助活動。
でもって、そのボランティア活動たるを徹底して秘密にしているという、いわば現在におけるプライバシーの有りよう… と、これは見事に今の時代に重なっていて、オモシロイ。
今と明確に違うのは、TV劇中では人の死が直接には1度も出てこないこと。
(映画館で公開の『サンダーバード6・劇場版』をのぞく)
そして何より明晰なのは、描かれている世界においてはその未来像が極めて明るいものだということ。
たぶん、その明るい将来の描き方に、ボクらは今もって魅了されているんだろうと、思う。
希望がたえず見えている世界といっても良いかしら。
今がそう思えないもんだから余計に頼もしくみえるのが「サンダーバード」のいいところ、だな。むろん、そこには原子力も含まれているんだけど… それを抜いても尚、良性の理想が垣間見えるんだ。

邸宅内の格納庫。これは別の大型模型として『サンダーバード博』で展示中。
2階の居間というか指令室の背後にこんな施設があるワケ。乗り込むと、発射台共々に地階にゴトンゴトンと降りてって、プールの真下に運ばれてくという設定が、やはり、良いな〜♡
この模型の詳細はまた後日に記しましょう。