謎の海底サメ王国

メガマウス
ビッグマックをメガ級にでかくしたカタチの、パソコン付属の外部入力デバイス… ノンワイヤーの光学式… であろうワケはない。
海に住まうサメの名。

とてもいかつい、幾度となく打たれまっくた挙げ句にカウント4あたりでユラ〜リ起き上がってニッタリ笑い、
「まだまだまだ…」
すさまじい形相のままにファイティング・ポーズをとって相手を挑発するがごときな顔。
でかい口。
ゆえにメガマウス

が、一見のそのいかつさと裏腹、このメガマウスはでっかい魚を襲って喰っちゃうという野蛮がなく… 小さな小さなオキアミだの小エビ(主たるは桜えび)だのしか食べないという妙なかわいらしさを醸す。
ボクはサメのカタチを模したライターを持っていて、真夜中にこれでシガレットに火をつけて、スパスパプ〜〜、自身をケムに巻いたりしてるんだけども、とても、このサメの典型的スガタカタチと、メガマウスとでは、親戚に思えない。



7/28の夜にNHKが放映した深海モノの第2弾。
ダイオウイカの驚愕の映像をみせてくれたアレの、その2発め。
足かけ4年を費やしての番組、だそうな。

『謎の海底サメ王国』なるタイトルが実にまったく扇情的で素晴らしい。
大昔の藤子不二雄の名作『海の王子』のエピソードタイトルがごときな旨味あるテースト。
むろん天下のNHK、SFファンタジーを見せてくれるワケじゃない。
近年になってよ〜やっと判って来たメガマウスなどの深海サメの生態をば披露してくれるという番組。
深海に住まうがゆえに生息の実態がなかなか掴めず、当然に100数十年前には、このサメの存在を我らがヴェルヌも知らなかった…。
とはいえヴェルヌが『海底二万里』の記述を日本のごく近海からスタートさせたのは、オモシロイ。
出版の2年後の1872年に、英国の科学調査船チャレンジャー号(軍艦を改造したようだ)がその日本の近海で幾種もの怪物的なサメを発見するんだから…、海にまつわる史実としての連鎖じゃあるけど… オモシロイ。



ともあれメガマウス。サメのくせに桜エビを好む。
桜エビは、東京までの高速道路移動のさい、静岡の富士川SAにてほぼ毎回というワケでもないけれど、あんがいとボクはこれの寿司を食べている。
2巻だか3巻で420円だか560円くらいだっけ。高いぞ…。
岡山では干したそれしかありつけないから、生にしてフレッシュな寿司としては食べられない桜エビ。その巻き。
巻きというより、のっけてる感じ。
極度な印象を持つという味でなく、どこか潮っぽく、噛んで呑み込む間際に微かな甘みをおぼえるといった程度…。
これをばメガマウスは狙う。

お住まいの深海からゆったり浮上し、浅い所に生息する桜エビの大群の中に泳ぎ入って大口をあける。
あけた口の中のエビがそのままお食事という感じ。
数mの巨体だから、たぶん、かなりの量を食べるんだろな。また、食べなきゃその巨体は維持出来ない。
前回のダイオウイカの場合もそうだったけど、これらサメの生態を調べる学者がたのお顔がズイブンいい。
どこか少年を彷彿するところがあり、冒険譚の渦中にあって自らワクワクしているような、その印象がまた『海の王子』に連なる。潜水艇の中で「キャ〜キャ〜」云ってる姿が学者の興奮を伝えてくれてオモシロイし、また頼もしくもある。



この番組で面白かったのは、まずはいきなり富士山が登場したこと。
一瞬、チャンネルを間違ったかと思ったけど、そうじゃなかった。
富士山を隆起の頂点にしての巨大な地形の1部として、相模湾が登場してくるワケだ。

常々、海と陸をボクらは別離させてモノゴトを考えたり眺めたりしてるんで、この"地続き"な感覚をあらためて見せられて、それがちょっと衝撃だった。
火星のようにお水を抜き取ってしまえば、海抜はドド〜ンとさがり、相模湾の1番に深いところを平然とお散歩出来るのならば、そこから見上げる富士山は標高5700m越えのスゴイ屹立山ということになろう、ね。
ま〜、それはともかく、この満々たる海水のただなかに、そこは相模じゃないけれど、いま悪しきな物質が流れ込んでるワケで、これをば、選挙が済んだ翌日にやっと発表するというあざとさは罪でしょう。
電力というインフラの根幹を握っての、いわばインフラを人質にしての蛮じ方に、ほとほと呆れる。いっそ、これは暴力だろうとボクは思う。
人によっては、
「騒ぎ過ぎよ。人体に影響が出る量じゃないんよ」
など、申される方があるけれど… 影響ない範囲なら放射性の悪しきを垂れ流していい、と云ってるようなもんで、これは…。
とばっちりの最終沈殿場所は、海底だ。
そこに住まう深海の生物たちは選挙にゃ参加出来ないし、糾弾の声も持てないから悲しいな。
上記の通り、もしも海水がそこになくば、汚染物は眼下の"低い陸地"に放置してるだけという凄惨じゃないか…。そこにもまた"生"があるのに。
でもって、その"生"を夕食のオカズとしてる自分たちであるというのに…。


番組中、実に驚くべきだったのは、餌の少ない深海での生物たちの共存のカタチの良さだった。
5mだか6mクラスのクジラの遺体を実験として海底に置いて観察するに、すぐにそのクジラと同寸のサメ(名を忘れた)が登場し、まずはガブリと囓ったけど、以後は、それを守るように周辺を巡回し出す。
その合間にアナゴだのカニだの諸々な生物が、この遺体をご馳走にする。
サメがガブリとやった場所を足がかりにして、くらいつき、むしゃぶりついてく。
巡回には縄張りとしての意味もあるけれど、サメはそれらを追い払うことを断じて、しない。
自身が空腹になれば、またガブリとやるけど、その時も他を追い払ったりしない。

このメッタとないでっかい食事の機会を大事にして、自分以外の生物達と共存してまったく欲張ることをしないという… その風情にボクは感嘆したワケだ。
争うがまま、競うがまま、欲望のまま、都合悪けりゃ隠蔽す… の人間サマ世界よりも、ホントは豊かで秩序ある世界が海底にあると感じさせられたワケだ。