下関にて


30代の若さで逝ってしまった人の、その1年目の法要。
下関市の、彼女が生まれ17歳まで住んで育った生家にはじめて出向く。
山口県内有数のホタルの生息地…。豊かな緑と静けさ。
周辺は山また山だけども、それは遠景にあって圧迫するようなことがなく、むしろ実家からの眺めには広い景観が拡がっているといった感触が濃く、
「なるほど… この広がりが彼女の大らかさの根幹にあったのか」
そう読みとった。
同行のH嬢を遠景に置いて、MIHOちゃんの実家前で1枚パチリ。
蝉が鳴いている。

法要。ついで会食と、いささか慌ただしい時間が過ぎ、ご親族に謝辞申した頃にはもう3時を廻ってた。
そこから車で50分ばかし。下関港の唐戸市場へ出向いてみる。
関門橋が眼の前。やや高く早い潮の流れ。右手に巌流島。
市場内で販売される高名なにぎり寿司の数々は午後3時で終了しており、それを口に出来なかったのが残念ながら、活気の片鱗は存分に感じとれる。
MIHOちゃんがこの市場に足繁く通ったとは思わないけども、良い魚と肴の滋味を知っていたのは、これは確かだったから、きっと幼少時から17歳頃まではこの市場界隈から運ばれたであろう海の旬を口にしていたろうと想像する。


市場のすぐそば、幾つものイケスが海にあってハマチの大きなのがグルグル群雄・回遊している。
なるほど、これは即座に調理出来るなと思うと、つくづく、にぎり寿司が眼の前を群雄するけど、
「さっき法要のお食事でたっぷり頂戴したばかりじゃないの」
笑われる。
この市場だけにあるサバ缶を探そうと思ってたのに… どういう次第かコロリ忘れてしまってた。
ま〜、いいや。
海風にあたりながら"塩ソフト"なるものを舐める。
いささか色がどぎつい。


ま〜、せっかくだから… 関門トンネルをくぐる。
九州へ上陸。
チョイとさらに進めば、『サンダーバード展』会場の北九州イノベーションギャラリーも近いけど、今回の下関はそれが目的ではない。
煉瓦のレトロ街を少し走り、前を走行中の西鉄バスに旅の感慨を湧かせ、また関門トンネルに潜り込む。



海底トンネルをくぐり出ると駆けている車のナンバーが山口ナンバーから北九州ナンバーに、またその逆にと、それは大いにあたりまえのコトじゃあるけれど… 急に日差しが照ったようなくらめきをおぼえる。ごく短い合間にそれが現出するから、県境を意識するというのじゃなく、メリとハリの入れ替わりみたいな醍醐味をおぼえる。
国境の近場で、といっても小1時間の距離はある場所ながら… MIHOちゃんという人が育まれ形成された背景に、その醍醐味に似る何かがあるよう思えもする。
むろん、そういうのは勘ぐり過ぎであるにしても…。
また、出向きたい場所、下関。


帰りの高速SAでみかけた、なかなか良い名のお土産。しゃれてる。
けども買う勇気が出なかったので、許せ"月でひろった卵"… 写真のみ。