1/96アポロサターン

1/96スケールのアポロ・サターンロケットが米国のサイトで無料ダウンロード出来る。そのPDFをシゲシゲ眺めるに、いささかディティールアップの必要があるぞと判っちゃったので、一年ほど放置していたんだ。でも、最近、資料も充実してきたので作る気になった。
たまさか同じ1/96スケールでアポロ17号CMのペーパーモデルの図面を作り出したのもキッカケで、同時進行でアポロ三昧と気合をいれたんだけど・・ なんせサターンロケットはでかいのだ。実物はおよそ111メートルある。
岡山市で一番に背の高いビルはグレースタワーで、これは108メートルだそうだ。最近やや高層化の傾向のある岡山市内だけど、このビルは周辺を席捲して屹立しているので、いわばランドマークとして機能もしていると思うけど、アポロよりも背は低いがほぼ同寸といってよい・・。だから、ボクはこのビルを眺めるたびに、
「これよりデッカイのが発射台から打ち上げられたんだ。すげ〜な」
と比較対照としてのグレースタワーにアポロをダブらせ、この背の高いヤツが飛んでったんだと、好感めいた親近をもったりする。建物の形がいくばくか発射台にも似ているようにも思えるし、グレースタワーにゃ迷惑だろうがボクはいつも、このビルを眼にいれるたび、アポロを連想するのをヘキとする。
で、話を元に戻すが、そのアポロ・サターンの1/96サイズモデルを第1段め(一番下ね)から作り出したんだけど、組み上がるに連れ、やはりその大きさに迷妄するようなトコロがあった。
元来、ボクはその仕事がら、独立した工作専用の家(小屋に近いが)を持っていて、そこで模型工作一切を行なっていたんだけど、近来、原稿めいたものは書けど模型の工作そのものからが遠ざかっていて、それと同時期に自転車への興味が高まって、自転車をドンドン買ってしまって、工作ハウスは自転車置き場と化してしまった。
今も7台が収納されていて、おまけにそこで自転車のメンテナンスまでヤラかすので、もはや模型工作はほとんど不可能な状況になっちまったというワケで・・ ペーパーモデルに関しては自分の部屋で、マックの前でシコシコおこなっちゃってるというのが現状なのだった。幸いかな、ペーパーモデルというのは塗装はイランは、プラスチックがごときヤスリがけはイランはで、部屋が汚れるといった点でラクな部分が多い。
が、こたびのような、工作が進む内に1メートルを越えるシロモノとなってくると、いささか状況がかんばしくない。垂直方向にだけ長大というモノながら、サターンロケットの特質たる各ロケットブースターの分離を前提に工作をしているので、一段目の上にただ二段目をのせ、さらにその上に三段めを重ね、その上に… と、接着せずにロケットタンク部を乗せ上げるという最終形態のモデルだと、狭い部屋での工作と、その保持は容易ではなくなるのだ。なにしろ、この1メートルを越える物体は実物のそれ同様、7つに分離出来る仕組みになっている。それが災い、する。
部屋は狭いのだ。
部屋が狭いのではなく、モノにあふれていて狭いのだ。すでにモノを置く場所がない状態の渦中に1メートルもの長さのモノが増しつつある・・。
成長するタケノコがごとく、スクスックと屹立していくアポロ・サターンを眺めるのは小気味よい次第ながらも、その狭さがあいまって、やがて、突発性の事故を起こす羽目になっちゃった。
工作は前記の通り、机の上、マックのモニターの前でやってるワケで、やりつつボクはiTunesで音楽を聴いたり落語を聴いたりしてるんだけど、CDをそのマックにローデングしようと手を伸ばしたはずみ、卓上で塔と化してるサターンに触れてしまって、あえなくもそれを倒壊させてしまうといったミスを起こしてしまうのだった。
なにしろ、デカイけれども先方は紙なのである。サイズはヘビーながら目方はライトなのだ。不用意に衝撃を与えると、ましてやロケットの段ごとに重ねているだけなので、すぐに転倒、倒壊してしまうのである。苦心で自作した先端の脱出タワーが折れちゃうは、小パーツは卓から遠くへ飛散するは… 歯がみするような自損事故を起こして、いささか自棄を起こすような思いとなるのである。これを3回くらい繰り返したら・・ 懲りるよ、普通は。
ちゅ〜〜次第もあって、このサターンロケットの工作は中座してしまった。
かなりディティールのアップも施し、これぞアポロ・サターンの模型なり〜! とご自分でもって云わしめるだけのモノにしたかったものの、何度か倒壊させて、せっかくの自作小パーツも歪んだり無くなったりで、散々なままに、とりあえず、手の届かない場所へ鎮座させるコトとした。作る意欲がやや後退してしまったのだ、倒壊事故の連鎖で。
判る人には判別出来ると思うけど、ご覧のように第1段ロケットはタンクはあれど、ロケットブースターも、フィンもない。その部分を着手しないまま、中座とあいなった。
模型工作というのはある種の熱狂がたえず必要で、いざ電圧が下降するとなかなか工作に取り掛かれないという宿痾がある。放っておくと、いつまでも工作に着手できないといったコトになっちまうので、このアポロサターンは、手が届かない場所に移動はさせたものの常時メダマからの視線を浴びる場所に置くコトとした。こうしておけば、常に気になるワケで、なんとかしちゃらにゃ〜〜〜な感触が、良性のカビのように蔓延するであろうとの予測もある。という次第で、写真のごとくモニターの向こう、ウーハースピーカーの上にアポロ・サターンは居座わった。その一画なら取り合えず倒壊事故は起きない。こちらの気合が充電されるまで、しばし放置とあいなった。