ケネディが鼓舞する

日常、常々、マッキントッシュの前に座っている時はiTunesが動いてる。マックで何かしつつiTunesが音を提供してくれてるワケだ。最近は、文章を書くといった、コトバと対峙する時以外は、音楽よりも落語を聴いてる時の方がアンガイと多い。それも枝雀。桂枝雀だ。亡くなって久しいが、彼は素晴らしい。
で、時に、フッと、自分を鼓舞するがために聴く音源がある。
それが、ジョン・F・ケネディが1962年の9月12日に行なった、ヒューストンにあるライス大学での演説だ。14分に満たない演説だが、その中に登場する一節がボクを奮い立たせてくれる。
その一節は演説のほぼど真ん中。8分めくらいにある。(ここで紹介するyouTubeの映像では最後尾)

We choose to go to the moon. We choose to go to the moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard,

私達は月へ行きます。私達は月へ、この10年以内に行くコトを選択しました。たやすくはありません。それが難しいから選択したのです。

あまりに有名な一節で、これは確か、アップル社が最初のあのボンダイブルーの半透明のiMacを世に出した時、その付随アプリケーションとして、これまた初登場の、iTunesの音源の一つにもなっていたと思う。ジョブスが何故この演説を最初のiTunesのサンプルの一つとしてチョイスしたかは自明だ。
実際に聴くと判るが、この時のケネディの音声は力強く、また良く脂がのっている。上記の一節の後はより熱がはいって早口になる、周到に準備しての、アドリブではないスピーチだけども、聴衆の熱狂が、このスピーチが何であるかを今によく伝え残しているように思える。
この演説は、創立されたばかりのNASAにライス大学が広大な敷地を提供したコトにはじまる。その譲渡式典でケネディ大統領はライス大の客員名誉教授として声を出す。
上記の有名な一節の前に、Why Rice play Texasという短い言葉がはいる。
ライス大はフットボールに力を入れてはいるが同じリーグに名門のテキサス大がいて、全米レベルではテキサス大が上位にあるのに対し、ライス大はその他ヒトヤマ程度の差異があるという状況ながらも、なぜかライス大のホームグラウンドでは、その強豪のテキサス大に勝てるのですね。でも、テキサス大のホームグランドに出向くとコテンパ〜にやられちゃう。
この状態が10年も続いている・・ というワケで、全米レベルでは無名のフットボールチームながらテキサス大にとっては、なかなかパワーが拮抗したチームがライス大だという認識なのですな。
でも、テキサス大に出向くと、ライス大は勝てないので、当然に全国区の試合にも出てこない・・。
けど、俯瞰的眺望で見ると、実はライス大は全米屈指のテキサス大に優るとも劣らないチームというコトになる。
けれど、この1962年度のライス大のチームは負けが込み、10年に渡って、ホームグランドでは勝っていたが今年はダメかも・・ との諦めめいた風評もたっているというアンバイ。
ケネディはそこを、暗に、当時のソビエトとの宇宙競走に見立てるという実に比喩的な言葉として、そのライス大を持ち出すワケだ。
勝った負けたともいわず、ただ、「なぜライス大はテキサス大でプレーする?」といい、その直後にいきなり、「私達は月へいきます・・」とやらかすのだ。
「簡単じゃない、難しいからやるんだ」と。
これを聴いたライススタジアムに詰めたライス大の人達は、当然、熱狂したと思う。
この演説があったゆえにか、その秋に行なわれたテキサス大との試合でライス大は同点というきわどいトコロでもって牙城での勝敗を守って、米国フットボール界のこれは伝説的試合となったらしい。
ま、そういった後日談はともあれ、このケネディの言葉はまばゆい閃光として、遭遇する難局のたびに、ボクの頭の中で明滅するのであった。