豆ごはん

福子さんとこの前、BARでのんでたさい、
「どうも目眩がする」
早々に退座されたんでいささか心配していたら、アラアラ… 翌日には足がむくんで痺れ、痺れが全身に至るという妙な症状になって、入院ということになったのだった。
数年前、芝居の練習だか某所でだったか忘れたけど、転んで足を大いに傷め、以後は芝居から朗読へと活動の軸足を変えて、この5月にも朗読イベントを予定している彼女なのだったけど、入院となればスワ一大事。
たまさか抱えた仕事の山場だったんで即行で駆けつけるワケに行かず、入院3日めにしてお伺いしてみれば、アンガイと元気な顔なので安堵した。
足が原因でなく、ケッタイな痺れはどうやら首の界隈に元凶の巣があるようだ。
それでまもなく手術に挑むというコトになるようだけど、ともあれこちとらは、回復を願ってやまないのだった。


「パジャマの変えがもう1着欲しいぜよ」
そう申されるんで、入院時からお世話しちゃってるBARママと共にユニクロに出向いて、安いのを(苦笑)、1着。
そのユニクロ原尾島店の同じ敷地に「ザ・めしや」があって、チラッと眼をやると、
『豆ごはん』
の宣伝文字がある。
何を隠そう…、豆ごはんは大好きなのだ。
豆ごはんと赤飯とどっちかを選べと云われたら、断固に豆ごはんを選ぶ方だ。
豆ごはんと焼き鯖の組み合わせが史上最高なのだと我が舌は20代の頃からそう訴える。
…なんだから、まったく磁石に引き寄せられるようなアンバイで… パジャマ抱えて「ザ・めしや」に入店したのだった。
同行者が、
「旬じゃんか」
と微笑するから、さらに、ワカメとタケノコのお汁も添えて春を演出し、ま〜、焼いた鯖がなかったから、では一応、お肉っぽいものをとトンカツをチョイスしてのやや早い夕食。
セルフゆえ自分で以上をテーブルに運んでお箸をつかってみるに、これが意外なほどに美味かったので、
「ん? あれっ?!」
悦んだ。

豆ごはんとはいえ… ピンからキリまである。期待をしていなかったんで意表をつかれた。
豆の風味とそれが御飯に沁みてるアンバイが実にボク好みの絶妙なのだった。キリどころかピンな味なのだった。
(この頃ピンとキリを逆に思ってる人があるんで一言しておくけど、ピンが最高でキリが最低なのだよ)
BARママは肉じゃがをチョイスしていたのだけど、彼女がよそ見した隙にイモ1つを盗み喰ってみるに、これもまた実に味がよく沁みてる。
この場合、浸みてると書いてもいいのだろうけど、感じとして沁みてると書いた方がいい。
むろん、イモ1つがなくなったのに直ぐに彼女は気づき、今度は我がトンカツの切れ1つが奪われて、そうやってパワー・オブ・バランスは保たれて平穏が維持するんだけど、彼女も味が意外であったようで、
「悪くないじゃ〜ないか」
眼元をほころばせるのだった。


という次第で病室に戻ってパジャマを福子さんに渡した頃合いに、病院も夕食だ。
四肢に痺れがあっていささか不自由というコトなのであろう、かなりキメ細かい配慮がされた食事で… 箸を用立てなくとも"つまめる"よう工夫されてる。
「どう、1つ、食べてみるかい」
福子さんは笑って誘ってくれたけど、ま〜、一応遠慮し、写真のみパチリ。
豆ごはんのことは黙ってた。