7月ネオン


ごく個人的な、この7月の…、以後に残るであろう記憶の1つ。
急逝した小学校の同級生がいて、追悼に、あえてワイワイやろうと葬儀後四十九日を過ぎた夜、少数の同窓が集ったのだ。



酒が好きな奴だったし、こういう場こそふさわしいとの気分で、皆なで献杯し、生前の彼の善行悪行ともどもを笑いつつ共有して偲んだ。
で、その帰り。
7月15日の22時頃。
暗中、この光景がやってきた。



千と千尋の神隠し』みたいな突然の眩い光景に、しばし、感嘆した。
我が宅に近い場所。
ちょうど、稲苗を植える時期で、そばの田圃に水がはられ、この光景が産まれてる。
ま〜、それだけのコトじゃ〜あるんだけど、虚栄とか繁栄とかが反映した図式というか、突然現出したラスベガスみたいな、妙に象徴的な構図にも見え、しばし、見とれたワケなのだ。
むろん、水面に像が映ってるこの"VERGIN"は、かの英国のレコード会社にも航空会社にも関係なく、まったく別物のパチンコ屋。
妙にそそられ、近寄った。



暗くて細い農道を恐る恐る進むに連れ、もう1本、映画を思い出した。
地獄の黙示録』。
雨期で水かさが増したジャングル中の米軍基地。
「プレイボーイ」誌のグラビア嬢らが慰問にやってくるあのシーン。
しかし、パチンコの「VERGIN」は遮音が行き届いて喧噪がなく、ただネオンが眩いだけ。『地獄の黙示録』のライトアップされた乱痴気は皆無。
浮き立って明るいのに、孤独な寂しさにくるまれていた。



外に人の気配がなく深閑として…、異界を感じるには充分。
いっそ今風の、わび・さびの枯淡をみるようで、ものめずらしかった。