魚が出てきた日

 月が変わり、一冬、およそ4ヶ月ほど放ったらかした庭池の水替えを実施。

 オーバーフロー対策の機能はあるものの、浄化の仕組みがない池なので、手動でエッサホッサッと水を掻い出さなきゃいけない。

 いつもなら3月半ばにこの作業を行ってたけど、今年は遅れた。

 さすがにひどく汚れてた。澱んで暗緑色の水の中で呼吸している金魚どもは、まことにお気の毒のかぎり。

 そのせいもあってか……、水を抜いてみると、昨年冬前には5匹いたはずの赤いベベちゃんがわずか2匹になっていた。

 

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 庭池は、ボクが横になって背筋を伸ばせるサイズがあり、深さは横になったボクが肩までつかれるくらいはあるから、50匹越えの金魚が住まえるスケールなのだけど、そこに5匹というのは贅沢ゆとり環境のはず。しかし……、水が汚れてちゃ~いけない。

 広大なお屋敷も荒れ放題のゴミ屋敷という次第だったから、そりゃま~、5匹が2匹に引き算されたのもワカラナイ話でない。

 けども、一気に3匹いなくなるというのは、いつもとチョット様子が違う。遺骸もなければ骨すら、なくなってる。

 

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 さてそうやって水替えて3日が経過。

 しかし透明になった水に、2匹の姿がまったく見えないのだった。たいがい水替えた翌朝には、新鮮復帰に小躍りしたような遊泳姿を見るのが常だったのに、姿がないのだった。

 おかしいな? と思ってアミをいれ、隠れ家となる部分あたりまでまさぐってみたのだけど、頭も尾ッポも出て来ないのだった。

 近年、庭池のあるウチの小庭にはアレコレ野鳥がやってきては、葉を喰らい花を散らすという”休憩処”という有様で、今年はウグイスまでやって来て、ホ~ホケキョ、早朝から騒々しい。

 けど、そやつらが金魚を食べちゃう、というのは考えにくい。

 数年前にシラサギが狙ってたという事はあったけど、今年サギシの姿はない。

 なので、ケッタイな消失現象をマノアタリにして、ミステリ~ゾ~ンに消えてったか……、困惑するのだった。

 けどまた一方、

「ならば買ってくればイイじゃん」

 気分切り替えも素早い。

 

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 この池に入れるのは、金魚すくいの気の毒なヤツを救いだす程度の、ずいぶんと安いのに限ってた。

 けども数年前だかに熱帯魚屋で買った1匹50円ホドの赤いベベのうち数匹は、次第に色が変わり、紅白まだらなものに変じてた。どうやら、和金とコメットが混ざって生まれた金魚だったようだ。

 ま~、そんなこともあり、レッド単色より華やぎがあるから、こたびサカナ屋に出向くや、あえてコメットを求めてみた。

 50円で買える赤いのに比べると、ちょっと高い。

 ちょっと高いといっても、ベラボ~でない。

 5匹調達。

 

 で、池にいれてやった。

 むろん即座にドボンはいけません。水温水質ジョジョに慣らすという手間をかけ……。

 初体験の場所にやって来たゆえ、自由になった5匹はしばし呆然。その後、身隠れ出来そうな岩場の影に入ってった。

 その翌日だ。

 何とか新空間の掌握が出来た頃合いだろうと、昼頃、水辺によって眺めるに、

「え?」

「あれ?」

 7匹いるじゃないの。

 幾重知れずと化してた2匹が、出てきたんだ。

 でもって、新参と一緒に静かに群れなしてるんだ。

 

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 庭池がちょっとした手品を見せたようで、かといって拍手するような性質でもなく、

「なんでかな~?」

 安堵するより、ボクは首をかしげちまった。

「やれ変わるぞ!」

「げんご、げんご~!」

 ここ数日のガラパゴスで激烈にトリック政治的な元号一色の騒擾と、ガラパゴス庭池のミステリ~の相乗とで、首傾けたままポカ~ンと口をあけてるのだったけど、1日付けのワシントン・ポストBBCなど海外メディアが、「令和」を、

〈Order and Peace〉

” 命令と平和”と訳したもんだから、あわてて〈Beautiful Harmony〉、”美しい調和”だと3日めに発表。

 何でハナッから英文で「令和」の意味を伝えてなかったのか……、閉じきったガラパゴスっぷり大いに発揮で、これまた口あんぐり~、Get Angry!