また1匹いなくなり

 天気が荒れると庭池はアッという間に汚れる。

 過日、数日に渡って嵐みたいな風がピ~プ~ふき、とどめにジョボジョボと雨。

 おとなしい雨ならそうでないけど、風混じりの雨は少量ながらも土砂を池に流し込む。汚れの元になる。

 その上で、今度は快晴というより怪晴な空模様。猛暑な日差しに睡蓮はスイスイ葉を広げるけども、水温が一気に上昇で、これがヨロシクない。

 あったかい泥水と化して、ドンヨリ。

 しゃ~ない……。

 ポリバケツに金魚を避難させ、長靴はいて水替えだ。

 しかし数時間後、カルキが抜けた頃合いに水辺に寄ってみると、バケツの中の金魚が1匹、消えた。

 庭池中央界隈にバケツは浮かせていたから、猫が悪さをするワケがない。

 跳ねて庭池に戻ったかとも思って探ってみたけど、そうでない。

 では、鳥か?

 

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 ったくもう……。

 今年の庭池はどうも不安定。

 しゃ~ない……。

 またぞろに、近場のサカナヤに出向き、コメットを数匹買う。

 買い増す必然はないけれど、いささか口惜しいじゃないか。

 

 けども実は、ビッグマックを猛烈に食べたくなったんだ。

 サカナヤのお隣さんがマグドナルドだ。

 マクドナルドを食べたくなる衝動というのは、年に1度か2度やってくる病いみたいなもんだけど、いざ火がつくと、いてもたってもいられないというジャンキーのそれ同様、麻薬的ジャンクの魅惑と誘惑でいっぱいになっちまう。

 たまさか、その衝動が到来ゆえ……、次いでですがな、おサカナは。

 生き物の命とビッグマックを天秤にかけると、どっちが重いというようなコトは云いっこなし。

 むしろこの場合、両天秤のバランスが取れた振る舞いと思いたい。

 熱帯魚売り場の狭い水槽の中で数十匹ひしめいている中から、数匹とはいえ、やや広い庭池に移動させて、いわば救済したのだという勝手な思い込みと、一般常識的にはこの年齢でマクドナルドを渇望するか? という問いを不毛にさせる「若さだよ山チャ~ン」のアグレッシブなスタンス保持こそ大事、チッとも天秤のバランスは崩れてないじゃんか……、とそう納得しているのだった。

 いわば欲望の二重奏、その成就。

 5月にしては異例のフイの暑さゆえにフィーバーしちゃったか? いや、そうではあるまい。イチバンに悪いのはサカナヤとマクドナルドが隣接してるって~コトだろう。そうでなくば、コメット1匹を失ったゆえにの、コメット数匹とビッグマック2ケのお買い上げ……、には至らない。

 

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 と、締めくくればいいのだが、そうは問屋がおろしてくれなかった。

 サカナを自転車に搭載したまま、カギもかけず駐輪し、

ビッグマック、2つ」

 窓口の女の子に声弾ませたら、

朝マックの時間ですので、ビッグマック扱ってません」

 ガッピ~~ン

朝マックって、何時まで?」

「10時30分までです」

 時計を見るに10時12分……。

 18分も待機するなんて、出来っこない。いかにビックマックを渇望しているとはいえ、そも、待たされるのはビッグに嫌い。ましてやサカナ搭載の無施錠の自転車。

 マクドナルド・イコール・ビッグマックというのが我がマクドナルドへのスタンスだけど、ジッと我慢のお子ちゃまでもなく、されど手ぶらで退出も嫌な爺ィ……。

 結局、朝マック・メニューからチョイスで持ち帰り。

 ちっとも嬉しか~なかった、というのが本音と実態の某朝10時過ぎ。

 ビッグマックを食べていない以上はマクドナルドを食ったことにはならないワケで、それではまるで初デートにワクワクしてたら彼女は来ずに代理で妹がやって来たみたいな、絶妙かつ根本的に断固違~~うガックシなのだった。

 

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 で、買った金魚はといえば、庭池に入れるや、既にいるコメットらが新参をば追いかけ廻すのだ。

 オレらの縄張りだ~、と新入りをいじめるのだ。

 その執拗っさたらナイよ。追いに追ってお腹の辺りを突っつき、逃げるのをさらに追う。

 コメットという種類は柔和そうな見てくれに反し、かなり鼻息が荒い。

 1日経って観察するに、やられてる方は、早やウロコの一部が剥離し、あきらかに弱ってる。このままじゃ殺されてしまう……。

 やむにやまれず、1番の被害者(魚)らしきを救出し、ポリバケツに隔離だ。

 ホントはいじめてるヤツの方を隔離し、闘争本能をまぎらわせてからまた池に戻すのが良いらしいけど、眺めてみるに、どいつが1番の乱暴者なのか判らない。

 新参は新参で自衛のみかといえばそうでなく、古参が攻撃するならコチラもやっちゃうぜ、みたいな勢いで、どいつもこいつもが暴れん坊将軍、立場立ち位置によって被害者と加害者が入れ替わるようでもあるし、同胞愛憐れむ、というような気配は微塵もなし。

 1番の弱者を隔離してやったら、今度は次の弱者ねらって虎視眈々なアンバイ。はたして穏やかに皆さん仲良く群泳って~コトになるのかしら?

 かつてアイザックウォルトン卿は『釣魚大全』で釣師としての自身に向け、

Study , to be Quiet.

  自戒の念こめてそう呟いたけど、庭池の金魚どもにも適用しちゃえと、

「穏やかなることを学べ〜、学べ〜ッ」

 日本語訳リフレーン付きでもって囁きかけてみるのだったけど……、聞かんわな~、たぶん。

 

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