庭池改変

 腰痛でございと、かまけていても庭池は待ってくれない。

 治療開始から1ヶ月弱、池は放ったらかし。オマケに天気不順が続くゆえ、しっかり淀んでしまった。

 腰に自由が戻ったとはいえ、”仮釈放”の期間中っぽい。雨降りの夜に1度呑みに出て、目的のBARが臨時のクローズ、別店のカウンターで、

「オンモチレ~♪」

 止まり木で足をパタパタ泳がせはしたけど、バケツのヨイショはまだご法度。

 しかたない。人力による掻い出し水交換をあきらめ、排水用に小型の水中ポンプを買った。

 ホース取り付けてこれを沈め、スイッチ・オン。

 

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               ポンプは濁った水の中。みえない〜。

 さて、そうすると、吸い上げられる水をただ眺めるしかない。

 額に汗することもなく……、正直、これはつまんない。

 豪快も愉快もない機械じかけ。

 やはり……、バケツで掻い出すのをボクはオモシロがってたわけだと、あらためて嗜好の在り処に気づいたりもするけど、腰がまたヒョンなことになるやも知れずだから、だまって、排出されるのを眺めてるしかない。

 捨てた分と同量の新たな水道水を入れ、カルキ抜きをば入れ、ハイおしまい。

 

 ま~しかし、次いでというか、こうなれば、それはそれで改良してみましょうかと、野蛮な気分もわいてくる。

 フィルターを通してたえず濾過循環させてやれば、水替え頻度も少なくなるわけで、7年ほど前まではそういう装置を付けてたんだけど、壊れて破棄、以後今に至るまで、人力による水遊びをやってたという次第で、それをばこたび復活させる気になった。

 排水ポンプを買ったばかりで、また別種なポンプを買うというのもナンだけど、思い込んだらヤルっきゃ~ない。

 

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 庭池用のこの手の浄化装置は、ショボいデザインが多い。

 20年前も今も、いかにも庭池用でござ~いみたいな和式テースト。

 ショボというのは何ですけど、グニュっと曲げた松とか石灯籠にはダンコ似合うけど、そうでない場合は実にそぐわないという手合い。

 熱帯魚やらの室内水槽や周辺機器は驚くほどに発展し、種々な形で展開、価格もこなれて活況のようだけど、ことアウトドアの庭池用途というのは……、たぶんに需要が少ないんだろうな。

 その「代わり映えしない、いかにも和風」が苦手なんで……、さて、そうすると購買選択の幅が極度に薄い。

 池の容量にみあった濾過能力がないと水質維持は出来ないから、さらに限られる。

 

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 ともあれこうして、腰痛対策というか、横着仕様というべきか、庭池環境を変更した。

 しかし、ペットショップという場所は、いつ行っても賑わってるね。

 わざわざワンちゃんやミャ~ちゃんを抱っこで連れて来てる人もいる。

 魚コーナーじゃ、水槽内を食い入るように眺めてる若いのや古いのがいる。

 子犬や子猫の入ってるケージの向こうでは、若いカップルと店員が着座し、ローンの計算書だかにサインしてる。

 ワンちゃんやミャ~ちゃんを連れて来てる人は、

「ほら、ここがおまえとの出会いの場所だよ」

 みたいな気分があるんだろうか?

 なんだかよく、わからない。

 ペットショップという空間は他にない独特の空気があって、不思議。

 模型店も独特な味わいある空間だったけど(町から模型屋さんが消えたので過去形)、何かはとても近似るけど何かは決定的に別種。

 

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 その昔に読んで衝撃させられた、つげ義春の『無能の人』の、河原で石を売ってる男や和鳥専門店を営む男らの滑稽な寂寥に通じるような感が、拭えない。

 男が”石の品評会”に出る辺りで、寂寥はピークに達し、華道家・茶道家の華やぐ「侘・寂」とは対局のワビた心とサビた眼を知らされて、ただもう感嘆したことがあったけど、そのさいおぼえた可笑しみがペットショップの華やぎの裏っかわにあるよう、思えてしまうのだった。

 石や鳥など同じ磁力に吸い寄せられた方々が、けれど、群雄でなく個々人バラバラのままに、自身どうしてよいか判らぬままに、それでも1点集中で萌えた熱量を持っている、その奇妙さの中の縮まらない距離の狭間の可笑しみある寂寥だ。

 もちろん、当方とてペットショップでお買い物だから第三者じゃない。『無能の人』の男が並べた小石の1つには違いない。

 

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 な~~んちゃって書いてる内も浄化ポンプは廻り、汲み上げられた水がまた池に戻って、やや涼しめな水音をたてている。絶えない音と水面のゆらぎに、金魚めらはまだ馴染めないのか、どこかソワソワした身振りで睡蓮の葉陰をウロチョロしてる。

 でもって、それを眺めてる我が眼もまたウロチョロリン。

 24時間晴天雨天に関わらず毎日連続で可動させるゆえ、電気代ナンボかなぁ? わびしいことをよぎらせてらぁ。

 

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              『無能の人つげ義春 日本文芸社刊 

 全6話で構成されいずれも傑作。わけても第3話『鳥師』の密度と最終章の俳人・伊月を描いた『蒸発』の尋常でない精度は最初に読んださいは固唾をのまされた。