庭池が不調。
コメット2匹が昇天した。朝の6時に1匹おちているのを見つけ、ついで10時頃に睡蓮の葉陰でまた1匹。
降雨があった翌日でやや水が汚れていたものの、それが原因に思えない。
他の連中を眺めるに、いささか覇気がない。動きが緩慢に思える。
長い尾が半分ほどになってるよう見えるのもいるが、確証はもてない。
その尾を根拠にするなら、細菌系の病気が池に発生していると思うしかない。
10年ほど前にも1度あった。
次々に落命した。
金魚には、カラムナリス病とか、水かび病とか、尾ぐされ病、白点病、とかとかな病気があり、水温低下でもって水中の菌に犯されるというコトがある。
そうそう滅多に発生しないけども、感染症なので1匹やられると他にうつる。院内感染というか、あってはイケナイ池内感染だ。
しかし、10年前と同じく、こたびも病気の特定に至らない。
至らないけど、異変が進行形であるのは確かなようだから、しゃ~ない。イケナイ感染に向け、10年前と同じ処置をやってみた。
ポリバケツに水をはり、カルキを抜き、塩およそ30グラムと、メチレンブルーという薬剤を混ぜる。
そこに生き残っているコメット達を入れる。
濃いブルーに染まった水はそれはそれで綺麗だけども、生き物を入れるというコトになると、いささか抵抗があって良い感じじゃないけど、しかたない。
薬浴、だ。
その環境で1週間ほどを過ごさせる。
メチレンブルーはオキシドールやイソジンの部類に属し、活性酸素を発生させ、殺菌消毒の効果が高い。魚体に付いた菌を滅ぼす。
効力が高いので水草のような水性植物は枯らしてしまうから要注意、あくまでバケツにコメット達を入れての治療。強制の隔離入院だね。
魚体への影響としては、体色が青になる。なんせ浸透性のあるブルー。全身がいささか汚い感じの色に染まってしまう。ま~、これは薬浴後の1週間ほどで元に戻るから、さほど案じるより団子汁、片目閉じて見てみぬフリ。魚眼からみる世界は青色1つの単色だから気持ちイイはずもないだろうけど。
塩は金魚の浮力を助け、弱った身体をいわば楽な状態に置く効果がある。金魚自身の塩分濃度と水のそれを出来るだけ合致させ、水の浸透圧を軽減させるワケだ。塩を入れることで水そのものを介護ベッドに変えるようなもんかな。
お江戸の時代、金魚飼育が大ブームになって、時に素晴らしくカタチが良く状態もいい1匹が家1軒の価格で売買されるというバブルになって幕府が規制に乗り出したコトがあったようだけど、そのブームのさなか、金魚の病気の塩浴は秘伝として扱われていたようでもある。
どれくらいの量を入れるか、どのような塩が良いか、やはり赤穂の塩か……、というようなコトが経験で裏打ちされた処方箋としてあったようだ。その秘伝書が密かにコピーされ、ちょっと記述を変えただけのパチモン本も出たりしてテンヤワンヤだったようでもあるけど、金魚と美女が描かれた浮世絵が当時多数刷られているのが、金魚がトレンドであったことを示してる。
歌川国芳の『歩く金魚』 ベルギー王立美術館蔵
三代目歌川豊国の『二十四好今様美人金魚好』
で、一方、池の水は全量を排出。せっせと掻い出し、石を洗い、睡蓮の鉢をタワシでこすって洗いと、刷新清掃にこれ務めた。
おかげで汗だく。
腰ギシギシ。(このコトは次回に。実は腰を痛めたのデス)
清掃後、あらたに水をはり、金魚を戻すまでの数日、放置する。
魚影のない透明な水面はちょっと奇妙な感、無きにしもあらず。睡蓮などあって、いかにも魚がいそうに見せて実は不在という、そのシーンとしたヘンテコな感覚を多分「不気味」というのだろう。
しかし思えば、最初に虐められて弱体化していた1匹は、狭いとはいえエアレーションされた水槽の中でもって悠々とし、病いとは隔絶されてエサを頬張ってる。
他者に疎んじられたがゆえに逆に結果として、難儀をまぬがれたワケで、こういうのを運命というのか? 虐めていた側の2匹はあえなくも昇天で……、これは宿命というのか?
この隔離されたコメットが事態を知れば、
「ま~、そんなもんさ」
ヴォネガットみたいにさら~っと云ってのけてニヤッと苦笑するのかもしれない。
隔離されていてアオ漬けにされなかったヤツ
アオ漬け中のコメットたち
アオ漬けの4日め。青というより黒
とかなんとか云ってるうち、もう6日が過ぎた。
青くなったコメット達を退院させ、庭池に戻してみた。
結果がどうなるかは、まだ判らない。しばし様子見という次第。
なんかきたない感じのヤツら……
色は1週間ほどで元に戻る……、はず
◯ え~、ちなみに……、魚を診察する病院というのは、日本にどれくらいあるのでしょう。
◯ 答え
全国15797軒ある動物病院のうち27軒が、魚も診ます。
岡山にはないですね。広島や山口には1軒あるみたい。1番多いのは東京で、9軒あるみたいっすよ。
いずれもフィッシュ専門じゃなくワンちゃんやネコちゃんを診る次いでというか、動物病院という括りの中で一応は診てくれるって~コトかしら? 営業の看板に掲げてるだけかもしれませんが実態不明。
こと魚に関しては江戸時代同様に個々人の”秘伝”めいた処方が今も……、というコトかもしれませんなぁ。