毎年毎度の行事となったパッションフルーツの、INからOUTへの移動。
この作業はちょうど1年の真ん中にあたるゆえ、
「ぁ、早いね、もう6月かぁ」
とか、
「あと6ヶ月でまた餅喰うのかぁ〜ん」
とか、世界情勢なんぞま〜るで関係ない、私的1年の折返しポイントに立ったのを意識する。
株分けで4鉢あるけど今回外に出すのは大きい2鉢。
穴を堀りネットを張り、鉢ごとそっくり地面に埋めてやる。
たいした作業じゃないけどそれなりに汗をかく。
こういう作業は午前中にやっちまい、終えて午後の早いうち、缶ビールをグビ~~ッが大変よろしい。
かたや環境大変化でパッションフルーツはこれからしばし、元気を失う。
環境に順応するまでチョットしんどい思いをするであろうコトは、毎年眺めてるんで概ねわかってる。
半年以上浴びたコトのない直射光に晒され、風に揺すられ、アリがチョコマカと幹を登ってくるくすぐったさ。そういったアウトドア環境に慣れるまでは、葉もうなだれる。
気の毒な感もチビリとあるけど、しかたない。慣れるまでのシンボ~だ。
園芸の本やネット情報を眺めるに、庭の草木の水やりに関して、アレコレな見解がのっている。
あるヒトは、毎日定時にたっぷりお水をあげて下さい、という。
あるヒトは、出来るだけあたえず放置した方が丈夫な栽培法、という。
近頃の医療で、たとえば、
「糖質制限の食事を心がけましょう」
強く主張される一方で、
「糖質制限の食事は逆効果、失うものが多い」
正反対の見解が旗をひらめかし、ド素人の病者はどっちを選択していいかわっから~ん……、肩をすくめるようなところがある。
場合によって、どうとでもいえるといった、選択はあなた次第というていたらくを投げつけられるだけのような気がしないでもないけど、水やりに関しては、ほぼ毎日、夕刻にホースを繰り出している。
なるほど確かに、新幹線高架下の空き地なんぞでは、誰もお水を与えはしないけどもアレコレな草木が大いに茂って、植物の旺盛な活力を見ないではないけど、一転、庭に眼を向けるや……、放ったらかしにするというのは気がすすまない。逆に、気がかりになってしかたない。
この「気になってしかたね~」が草木への過保護をうむ要因だろうとも思うけど、水を与えぬより、水をまいたさいのニンゲン様満足の方を、ここは優先だ……。
水やり後に缶ビールをあけてグッパ~~な、のどこしがたまらん。草木同様にこちらも水分補強のつもりでいるワケだ。
そうやって夏場はビール摂取が増え、熱中症対策おこたりなし……、なワケでもないけど、ビール消費と庭の水やりは絶妙に関連してるコトはまちがいない。
かつてジュール・ヴェルヌは『地底旅行』で、リーデンブロック教授たち3人の旅人が地底の深くへと降りていくに連れ、水筒の水はとっくに空っぽ、ジンを飲んで喉の乾きを何日も癒やすというような描写をしていたけども、さて? はたしてそれは正しい科学か?
ジンの携行は了解するにしても、ジンはウォーターでなくアルコール。
ジンのみでしのぐというのはいささか妙なアンバイ。盛大に酔っ払って探検どころじゃ~あるまい。
ドイツのシュヴァルツヴァルト蒸留所製のジン
ハイキング なくっちゃこまる~ 缶ビール あってもなくても ス~昆布
みたいな行楽じゃない。
もちろんヴェルヌは、そこはしっかりわきまえてた。
水筒空っぽ、やがてジンも空っぽの飢餓状況を克明に描き、主人公アクセルが発狂寸前に追い込まれるところをクライマックスの1つに置いて、たっぷりハラハラ、地底の閉塞感をみっちりズキズキ凝縮させた上で、ほとばしる地底の激流を登場させてくれるんだ。
ただ、さすがはヴェルヌ、すぐに飲ませてくれない。
熱湯だ。100度の奔流、温泉の源流だ……。
で、そこからピョ~ンとユーモアな記述となって、
「熱湯? な~に、冷えるさ」
「このお湯、鉄分が含まれてますね」
「胃に効くぞ。おっ、ミネラルも豊富じゃな」
岩波文庫の朝比奈弘治訳をよりくだけた感じで書くとこうなって、暗澹は一転にして安堵と爽快にくるまれる。
たぶんに数多の読者は、真面目一辺倒の主人公のつまらなさとリーデンブロックの飄々とした姿をみて、笑いを響かせたと思う。
その辺りの緩急をたっぷり味わわされた後に、いよいよあのでっかいキノコの森が出てくる。
地底深くの巨大な大植物園……。
大昔、中学生の頃だかに挿絵を初めてみたさいは、しばし見惚れてしまったなぁ。
エドゥアール・リウーの装画
庭池にお水をまいてるさなか、チョクチョクと、そのキノコの森を想いだす。小庭に冒険はないけども、まき水に時に小さな虹が現出するのを眺めつつ、ヴェルヌの恩恵をクチャクチャ噛んでいる。
ジェームス・メイスン主演の『地底探検』(1959)は原作の味をよく咀嚼した上でオリジナル脚本に仕上げた秀作で、大好きな1本じゃ~あるけど、そろそろリメーク版が出たっていい頃だと思うけどねぇ。
原作には登場しないグラマラスな大人の女ムンムンな夫人(アーレン・ダール)を旅の一行に加えた事で、まさに大人の映画に仕上がってたし……、だけど今はメイスンを越える役者さんがいないような気もするし、さて、強いて起用するなら誰がよろしいかしら?
楽しく妄想しつつお水まく。とりわけパッションフルーツにたっぷり。
映画『地底探検』より
ジェームス・メイスンとアーレン・ダール。
アーレンさんは2019年現在も健在のようだ♡ 90歳半ばじゃないかな? しっかり水分補給でこの夏も乗り切っていただきたいですなぁ。