桂そうば岡山落語会

 過日の午後、『桂そうば岡山落語会』。

 自分にとって年1度の落語を直に”見る”日。

 落語は頻繁に聴いている。かなりの量をCDからiTunesに置き換え、概ね2日に1度くらい、どこかの時間で、1席か2席、誰かの何かを聴くというアンバイ。

 ローテーションとしては五代目志ん生が1番多く、次いで圓生、枝雀と続く。

 気品ある話っぷりとして三代目の桂三木助の『芝浜』か『へっつい幽霊』、ガガガっと迫って来るようなのを聴きたきゃ三笑亭可楽の『妾馬』、すっとぼけたのなら春風亭柳好の『牛ほめ』か『かぼちゃ屋』、枯れた味わいなら彦六と、その時々の気分でコロリン変わる。

 

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 そういう次第でボクにとって落語は耳で聴くものという感が濃く、直に眺めて愉しむというのは2の次になっている。

 けれども、年にただの1度、桂そうばのナマを味わうというのだけは繰り返しているワケだ。

 だからこれのみ、頭の中に舞台上の落語家の姿カタチを空想しなくていい。

 イメージを喚起するのじゃなくありのままのライブを味わうという点で、これはボクにとっては特異点、いやもちろん、ナマのライブこそが落語の醍醐味じゃあるのだけど、そこがいささか倒錯している。

 実は……、フタをあけるまで演目が判らないというのは好きでない。ま~、これは絶妙な感じなので声を大にして好きじゃ~ないというコトを云いたいワケでもなく、場の空気の中に溶け込むまでの自分の体内感覚の問題だ。

 自室で演者と演目を選び、スピーカーから届く声と自分とは擬似的ながらも1対1の関係だけど、ナマの落語会では自分の前や隣りに大勢がいて、方々の頭の動きとか咳払いとかがあって、けっして1対1じゃないところが、でもって聴くべき演目が直前まで不明というのが感じとして絶妙なのだ。

 独占したいとかではなくって、落語ライブにはそれなりの「構え」を要するという次第で、それを含めての年に1度のオモシロ体験。

 

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 さてと、場内はいつも通りの満席。

 こたびは桂そうばと、桂竹千代の2人。いわば関西と関東の味合戦。

 竹千代の講談調まじりの『古事記』は悪くなかったね~、いいねぇ。間の取り方が実にいい。緩急の速度もいい。

 

 桂そうばは枝雀のような天才じゃなく、積み上げの努力でもって芸幅を広げている噺家だと思ってるけど、1年ごとにその伸びが大きくなっているのも、頼もしい。

 彼の、身体というか骨格がでかいのも好感だ。

 落語と体躯はあまり関係ないとは思うけども、このヒトの場合は、その体躯自体が演目をヨイショするようなところもある。なので、もっと太った方がよいのじゃないかしら? とも大きなお世話ながら思ったりもし……。利口すぎて馬鹿になりきれない部分を身体のデカサがそこを補う……、という感じかしら。

 今回初めて人情噺としての『子はかすがい』を演ったけど、人情談は若い噺家じゃカタチにならないのが相場。そういう意味でそうばはもう人情噺が出来る年齢になったんじゃなぁ……、ともシミジミ思う。

 おこがましいけども、応援しているということは、ま~、そういうコトも含む視線をおくるというコトなのだ。といって、後援会に入ろうとかな応援じゃない。あくまで年1度の逢瀬のた・の・し・み、として。

 ま~、願わくば、そうばと竹千代、このカップルをもう1度、あ・じ・わ・い・た・い、な。

 今回はそうばが2席、竹千代が1席ながら、え~~っと……、竹千代に座布団2枚。

 

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 庭池続報。

 アルビノがかった目立つ体色のコメットが庭池から出てくや、おかしいホドに池は静かになった。 

 残った6匹は、1匹の白いのがいなくなった途端、憑依した何かが抜けたようにおとなしい。アルビノを追いかけ廻した凶猛さは消えて、水辺にこちらが近づけば、ゆるやかに群泳しつつ媚びたように寄ってくる。

 1匹を隔離したことによって様相がガラリンと変わったワケだけど、個と集団、共生共存……、むずかしい問題が水の中にもあると思うと、なにやら、

「ハッピ~じゃ~ん♡」

 とは云い難い。

 集団とは和をもってなすけど、和は輪でもあって、輪内に嫌うものは入れずという閉じたカタチでもあって、そこがもどかしい。

 ともあれ、

「わーっ!」

 ってな狂騒で1匹をいたぶり、時に死に至らしめる「落ち」は要らない。

 

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