水槽掃除

 

 前々回に庭池と岡山城郭の堀の汚れについて記したけど、今度は、室内水槽について。

 これとて、汚れますがな。

 3週間ほど放置すると、フィルターやら温度調整のヒーターやガラス面やらに、緑がかったコケが生じ、なんとも落ち着かないうらぶれた様相になる。

 水温、餌の量、金魚の糞、あれこれの要素が絶妙なサジ加減で影響しあう。

 生態系の維持と美観の保持というのは実にむずかしい。

 そもそもコケの定義がむずかしい。コケは苔であり藻であったりする。

 さざれ石の いわおとなりて 苔のむすまで

 国歌に登場のコケは、細(さざれ)石が大きな岩に成長し、そこに苔が生じてる長〜い時間を示すわけだけど、そのコケと我が水槽内の緑っぽいのも光合成の産物だから親戚のようなもんかしら。

 

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 コケが生えたわけじゃないけど、閉じた宇宙(くうかん)であったアポロ司令船が月から地球に帰ってくると、ピカピカ新品だったのが、わずか2週間でずいぶんに人間臭く汚れた感触になっているのにも、興味をおぼえる。

 アポロ8号の月周回飛行では船長のフランク・ボーマンがひどく船酔いして何度も嘔吐しちゃって、そのたびに船内に吐瀉物が散って、3飛行士は掃除に追われるやら匂いにクラクラやら、掃除出来たと思ってたのにまた何ぞが浮遊してきちゃったりで、ひっちゃかめっちゃか。閉じきった宇宙(スペース)というのは、窓開けて新鮮を吹き込むことが不能なんだから、ま~、しかたないとはいえ大変な”3密”であることは間違いない。

 

 トム・ハンクスがプロデュースに加わったTVシリーズ『From The Earth To The Moon』は、アポロ計画の全体像を浮き上がらせた大秀作だったけど、ボーマン船長の奥さんアルコール依存症に陥ちいって難儀する)役だったすごい美人がいて、「へぇ、綺麗なヒトやなぁ」と関心したが、このシリーズ後にトム・ハンクスと結婚。

 

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『From The Earth To The Moon』第4話「はじめての地球」より

デヴィッド・アンドリュース演じるボーマン船長。吐く寸前。右のヒトね。

 

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『From The Earth To The Moon』第11話「勇気ある妻たち」より

依存症克服のために入ってる精神科施設でのボーマン夫人と面会に来たボーマンの交流シーン。右がトム・ハンクス夫人となったリタ・ウィルソン。

このシリーズは華やかな月着陸がテーマながら、その背景での人生模様を描いたことが素晴らしい。ちなみに離婚率が高い宇宙飛行士カップルのなか、ボーマン夫妻は今も一緒にいらっしゃる。もう90歳半ばかな。

 

 このまえ、コロナ・ウィルスに感染しちゃってハンクス夫妻が隔離されちゃった~のニュースがあったねぇ。2人とも復帰で良かったよかった。

 それはおき、さすがにTVシリーズでは宇宙船内の異臭までは伝えきれないけど、人体あるがゆえの汚れていく感覚は、ま~ま~、味わえた。

 

 夜になりきった直後の川辺で見るホタルの乱舞は、束の間の夢幻世界めいた光臨を見せてくれ、事実一度、数年前、山口県の某所でわたしとわたしの仲間は、希有な事象めいた不思議を味わって目元をウルウルさせたこともあるのだけど……、

水辺環境としての実際は、多様なはずである自然界で1種類のみが大量発生するというのは、あまり適正な自然とはいえないのだった。

 

「原生林の中では、ホタルは群舞するほどたくさん生息しません。特にゲンジボタルはあまり清流だと幼虫が生きられない。数が増えるのは、ホタルが人間の作った田園環境に適応したから。適度に汚れていて、隠れ処もあり、餌となるカワニナもたくさんいるから、大発生して飛び回るわけ……」

 

 淡水生物研究所の森下郁子所長は、『「森を守れ」が森を殺す』(田中敦夫著・新潮OH!文庫)でそう云ってる。

 夢もチボ~もない云い方だけど、ヒトのロマン感情とは別、実像とは、ま~、そんなもんなんだろう。

 この場合、ヒトが作ったある種の汚れある環境がホタル乱舞を促すワケなのだ。

 

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 結局どういうコトかといえば、ピカピカ新品でもなく、ひどく汚れたのでもなく、適度に汚れつつで循環された環境というのが、まさに適度に良いのかな……、というような結論。マッ、ありきたりなハナシじゃあるけど、という次第を受け入れつつ、室内水槽をば清掃する。

 視点を変えて云えば、”汚れる”というのは悪いコトだらけでなく、良性な面も多。

 だから、ちょっと手を抜く。

 徹底的な掃除、しない。

 

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 ガラス面のふき取り

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フィルターの汚れ

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フィルターの交換とパーツの清掃

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濾過器のモーター部分を分解して掃除

 

 だいたい判ってきたのだけど、尾っぽが長くて優美でヒラヒラしたタイプの金魚は、遊泳がヘタなの。

 本人の意思でなく、優美なカタチがゆえ逆にそれがスイマーたるを阻害し、尾っぽの短い流線型の金魚に較べると、餌を食べる行為1つが、とてもブッサイク。

 狙った餌にたどり着く時間も、それを口にいれる時も、かなり難儀してる。

 わけても水面に浮いてる餌の取得に苦労イチバン、身体を上向きに保っての遊泳に不向きだ。

 だから同じ領域に住んでいても流線型タイプのヤツの方がたくさん餌にありついてる。

 当然、体躯に差が出てくるワケだ。

 なんとも気の毒というか……。

 この遊泳ベタがせっかくの餌をにがし、フィルターがそれを吸い込む。

 結果として水質が富栄養化して悪くなる。

 ま~、そんな悪循環だ。

 

 6月になったら、金魚どもは庭池に移そう。池は池でアレコレな面倒もあるけど、遊泳面積は日本国土からオーストラリア大陸に変じるというのは大袈裟にしろ、やたら広い場所となるから、泳ぎまくって足腰強健になってもらおう、と願う。

 足ないけど、ね。

 

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