5日早いお彼岸 ~ラッキョウ•ラブ~

 毎年のことながら……、ほんのついこの前、お盆で坊さんがやって来たと思ったら、早や今度は、お彼岸。

 わずか数週、2度の坊さん来襲だ。

 むろん事前に「行きますよ~ん」の通達あってのお越しだけども、ヤヤせわしない。本来は20日からお彼岸らしいから、5日早いよ。

 べつだん、だからといって非難も批判もあるワケでない。寺の都合、コチラの都合もござんしょ~。組み込まれた行事の1つとして、タンタンと受け入れる。

 拝んでもらい、仏間にちょいとお線香の香りが漂い、終えるや、いつもの茶碗(坊さん用だ)で茶と菓子(わざわざ華宵庵に買いにいくんです〜)をすすめ、ヨモヤマ話をやって、お布施渡し、適度にお辞儀してハイおしまい。

 

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 仏間に座布団敷いて座り込むのは坊さんが来た時だけだけど、むろん、故人を偲ばないワケはない。

 といって、深々に思いを馳せ飛ばすワケでもない。

「また1年、経っちゃったな」

 やや色褪せしはじめているファーザー殿の写真に視線をそよがせつつ、同時に季節を思い、これも1つの句読点、マル1つが置かれ、秋への移行の感触をば、チビっと味わうのだった。

 こういう味わいも、わるくない。もちろん、庭先に出りゃ~、まだ暑っつっつだけど、雲の形が秋のそれ。

 

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             パッションフルーツの葉影の向こうに眩い空。

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 淡いムラサキの粒が連なってるのが面白いけど、名を忘れちゃったよ。

 

 連なって、といえば、過日にケッタイな夢。

 なが~い列車に乗っている。1つの車両が途方もなく長い。

 それも食堂車。連なるはずの別車両の入口がはるか遠くにあって何両編成なのかもわかんない。 

 両脇のテーブル席を眺めつつ、通路を歩く。

 左右の車窓の外に見える景観がやたらリアル。電線が上下してる。

 その食堂車に、もう50年くらい営業を続けてる中華屋さんのような油じみた匂いを感じ、早く通り過ぎるべく足早になるけど、とにかく車両がなが~い。

 いったいカーブじゃどうやって曲がるんだろう? 歩きながら考えていると、何人か知り合いがテーブルに座って、こっちを見てる。

 ジャズフェスの仲間に混ざって、津山にいる従妹(いとこ)がなぜか座り、ビックリ顔で、

「どけぇ~行きょん?」

 津山弁で問うてくる。

 少し先に立ち喰い屋台が幾つか並び、それだけで目測20mっくらいはある。車両窓際にはタオルやおしぼりが干してある。

 で、屋台の提灯には「麺震度一番」と書いてあって、床にバネが見える。

 ラーメン、うどん、そば、スパゲティ、がメニューとわかる。

 長細いその屋台をS新聞社文化部のK女史が取材していて、こちらに寄って来ると、

「お客さんは震度を選べるようになってるそうなんです」

 説明してくれ、

「どう思われます?」

 ひとなつっこく笑う。

 列車の揺れに加え、さらに床を揺さぶった状態で立ち喰うらしい。

 激辛とか甘辛とかでなく、激震か

「やっぱ、世も末ですな~」

 とか、返事した……

 ワケわかんないけど、麺震というのは我れながら快作だ。免震とマチガエた可能性もあるけど、しかし、そんな夢をなぜ見たか?

 きっと、『阿房列車』のせいだろう。

 

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 この本を買った憶えがない。いつから自分のところにあり、何故にあるのか、ズ~っと不明だった。

 けども、数週前だか、夜中のBARでEっちゃんとヨタバナシしているさなか、

「そりゃ、あたしのじゃ」

 Eっちゃん、半オクターヴ高くいい、

「おまえさんが、持ってたかぁ」

 のたまうのだった。

 あらま~、そっか、借りてたんか~~。

 すっぽり記憶がないのを訝しみつつも面白がった。

 そういうコトがあっての、この夢なんじゃなかろうか。

 目覚めると、食堂車から出た憶えがない。

 ずっと通路を歩き続けたような感触ばかりで、目覚めた後で、食堂車の窓辺に干してあった屋台のタオルやおしぼりのなさけない風情が気になって、車掌を呼んで苦言を呈すりゃよかった……、ちょっと口惜しかった。

 

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 そ~いうコトがあって、そんな夢をみたんだろうけど、上写真、数日前にさらに借りた『阿房列車』の次刊などなど。今度はチャンと返そうと、証拠写真を撮った次第。

 

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 そのEっちゃんとKちゃんのカシマシ・シスタ~ズが列車に揺られて玉野に出向いての……、みやげ。

 らっきょう。

 某高名ベーシストのママで玉野在住のTサマから、既にこの玉野築港商店街・山下食品のらっきょうの事は情報を得ており、出向くとして11月頃かしら、などと密かに思うてたのだけど、らっきょうの方からコッチにやって来た。

 あ・り・が・た・い・な・あ~

 想定していた以上に高額なのね……。御礼にと、鳥取は倉吉の梨をばご両名に。ブツブツ交換。

 

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 このらっきょう漬けは、いわゆるラッキョウ酢ではなく、お酢と砂糖での自家調整らしい。

 我が舌はそこの絶妙を判別できない。

 らっきょう漬けワールドの広大な甘酢ゆい海に小舟を浮かせ、やっと漕ぎ出したに過ぎないビギナーだから、「うまい」とか「いい感じ」とかの表現しか、まだ出来ない。

 それが、ま~、もどかしいワケだけど、もどかしさがまたらっきょうの魅惑を押すようなところもあって、今のところ、「ラッキョ、ラッキョ~」と吠えてるダンシもないようであるから、開拓者の愉悦みたいなケッタイな優越もチビっと味わって、さ~、今日もまたポリポリ。

 舌が老人のそれに変化してんじゃね~の? との嘲笑もあるにはあるけど、舌先三寸なそんなご意見なんぞは聞く耳もたない。

 

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親戚のソレと玉野のソレ。親戚のはもう半分食べちゃった……。並べてみると、玉野は粒が大きい。

 

 大野朱香にこんな句があった。

 

箸とどかざり瓶底のらつきように

        句集『一雫』(ひとしずく) ふらんす堂

 

 何のこともない情景だ。瓶の奥までお箸が届かなかっただけのコト。それをそのままただ詠んだだけなのに、何でこんなにこの句は浸透してくるんだろう? 堂々としているんだろう?

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 ちょいと昔日、2006年のつま恋での吉田拓郎ライブに中島みゆきが突如現れ、2人の共作たる「永遠の嘘をついてくれ」を、ほぼ直立不動、まさに堂々に謡い、彼女がそこいらの歌手をはるかに凌駕する存在だったことを示し見せてあまりに圧巻、そばにいる吉田がスチャラカで軽い存在に見えるほどに圧倒されたことがあったけど、どういう次第か、その堂々にこの句の旬な堂々が重なり、想い返せば……、3万5千人の観客を前にした中島みゆきの揺らぎのない顔が白いらっきょうにダブって重なるような気がしないでもなかった。

 

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 このあたりの消息が、ま~、ボクの今のラッキョウ・ラブなんかしら。

 要は、食品という狭い範疇にらっきょうを置いておきたくなく、他の五官に委ねてしゃべってもイイじゃん、な気分なんだ。

 タピオカ入った甘~い紅茶を歩きながら啜ってワタクシもブームの中にいる~、も、ま~、いいですけど、ブームでも何でもないらっきょうに言及する方が、2センチほど先んじて背が伸びたようで、おもしろみの増量感ありという次第。