古いヤツだとお思いでしょうが

 ああぁぁっ……、という間にもう7月。

 この半年の天災と人災。

 さっぱりワヤ。やってられませんなぁ。

 けど、やってかなきゃ~いけないワケで……

 なるほど、こういう状況で鬱屈晴らしなテロ行為が萌芽するというのは、わからなくもなく、といって、ぼくも暴発しちゃうぞ~んな無謀傍若なゾーンの持ち合わせはないんで、要は、ながされるままという、ていたらく。

 

 数週、トヨタのBLADEに乗ってた。

 オイル漏れの原因を探ってもらうべく、懇意なF氏にMINIを預けての代車。

 数年前にG社からC社に彼は職場を換えたけど、氏はず~~っと我がMINIの面倒をみてくれてる。

 BLADEは既に販売されていない。

 トヨタはヨーロッパ市場向けの高級車として開発販売したものの、ベンツやらBMWのそのクラスには劣るということで不人気、アチャラの評価はすぐコチャラに伝搬で国内でも不振。

 わずか数年で撤収を余儀なくされた気の毒な車種。

 

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 映画『BALADE RUNNER』が公開され、やがてこれがカルト的人気となった頃合いで、ブレードという呼称を意匠登録し、数十年後に商品化したわけだけど、期待通りにいかなかった。

 なが~くMINIに乗ってる我が身としては、そのでっかいサイズもさることながら、至れりつくせりのSF未来カー以外の何物でもなく、ライトもエアコンも自動可動だし、シート・ポジションの位置調整なんぞは、

「うっそ~」

 ってな程にコマめ微細な調整がワンタッチで、MINIとはウンデンの差。

 BMWに劣るという評価なれど、良い。

 

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 けど、正直なハナシ、良いけれど……、一向に面白くない

 運転してる気分がかいもく湧かない。

 勝手に運ばれてくようなアンバイ。エンジンは静音きわまりなく、回転してんの? と訝しむほどで、機械としては申し分ないながら……、人馬一体的な醍醐味はさっぱりナイのだった。

 な、次第ゆえMINIが戻って来たさいは、密かに小躍りした。

 

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 MINIはライトも車内灯もメチャに暗いし、いまどきのに較べて加速は劣るし、装備も古い。古いなんて~モノじゃない。ピッピッとドアの施錠が出来るわけもなく、なんせシガーライターさえ、ないのだ〜。ハンドルはゲキ重い。走らせるたびにアチャコチャからギシギシと音がするし、エア~バックなんて安全装備もない。

 けど、これに自分が乗っかって運転するんだぁ、という感じ良さは激烈にして濃厚。

 なかなかコチラの云うことを聞いてくれない、いわば個性が濃くって、だから、運転時と運転後の、

「今日は良く駆けてくれたね〜♥」

 みたいな、親密をおぼえられるのだった。

 

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 MINIはエンジン・オイルとミッション・オイルが別々でなく一緒という他の車にない構造ゆえ、それにくわえ、新車で購入していらい既に27年も乗ってるから、経年劣化もはなはだしい。

 ミッションとリンクしたハンドル・シャフトの根元部分からのオイル漏洩というコトが今回点検してもらって判ったのだったけど……、これの根治はムズカしいという。

 完全分解してのパーツ替えとなり、経費甚大。程度のよいMINIが変えちゃうくらいな金額となりそう。

 な、次第ゆえ、そこは人馬一体、傷ついた馬を養生し~し~に乗る……、というコトにした。

 昔、鶴田浩二が、

「古いヤツだとお思いでしょうが……」

 と、歌った昭和な気分ではないけれども、『愛着』という名のLOVEをこのMINIに感じちゃってるんだから、ま~、それでいいのだ。

 たぶんF氏とてそうなのだろう。ぼくより年若く、それゆえ仕事上のあらたな展開を希求して、斜陽ぎみな英国車専門店から国産者販売の店に移動したものの、いまどきの車は整備士という資格をさほど問わない精妙ゆえ、故障となれば、パーツ全体をどかっと換えるだけの作業。いわば整備士としての腕のみせようがなく、

「ぶっちゃけ、誰にでも出来るんです。張り合いがないというか……」

 とのこと。

 我がMINIに関しては、そこが違い、彼なりのアレンジの上でのエンジン回転やら調整が加わってる。

 なので、

「このMINIとは、まだ付き合わせてよ」

 と、破顔してくれる。

 彼もまた、きっと、

「古いヤツだとお思いでしょうが……」

 な、1人なのだ。

 

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               (ロイター=共同が報じた写真)
 

 ぁぁあ、それにしても、フランスのフォションがウィルス騒動で経営破綻というのはビックリしたな、も~ぅ。

 観光客ほぼゼロゆえに破綻原因となったらしきパリの本店カフェで、はるか大昔、夕刻に、

「こーひー・しるゔぅぷれ」

 とオーダーしたら、ホット・ウィスキーとハムをはさんだバケットが運ばれてきて、けども、

「ちゃうがな、コレ」

 に、相応のフランス語がわからん珍なので、黙って、ホット・ウィスキーを啜ったのを、懐かしむ。

 この珍事は、フォションの年配ウェイターがこちらをジャップと見下してのイタズラだったか、あるいは、こちらのハチュオンが、

Mauvaise prononciation(これじたいカタカナ表記がむず痒い)

 だったからなのか、その時は判らなかったけども、42年経った今は……、生粋パリジャンたるその年配ウェイターには未知な、ケンゾーでもイッセイでもない、東方のダイエー・ブランド装束の、我が方のジャニーズっぽいカッコ良さげにポ~っとしちゃって、ついで嫉妬し、受注の品を間違えちゃったと決めている。

 ダイエーとて今はないのだし、かなり年配であったウェイターとてもう鬼籍のヒトだろう。

 許してあげよう。 

 でもってパリのFAUCHON本店復活を切に願う。この店はね、明治半ばの岡山に突如現れた「亜公園」とほぼ同じ時期FAUCHON開店は1886年、明治19年)に営業をはじめてるんだ。遠くにあって実は近い存在でもあるわけで~~~、これもまた、

「古いヤツだとお思いでしょうが……」

 なのだ。