中華料理四千年

 またゲラが届いて、真顔になっていささか傾注。

 ほぼ最終となる3回目の校正。

 編集者と連絡しつつ、あっちをつつき、こっちをつつきと、時間がかかる。

 しかし、フィニッシュまぎわ。そこの松林をまがったらゴールが見えるというアンバイ。

 

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 とある作業を継続中で、いささかの筋肉痛。

 ゆえに適度の息抜き。

 2月の半ばに届いてた諸星大二郎西遊妖猿伝-西域編』の第2巻。

 ちょっとだけ愉しもうと読みかけたら、止まんない。

 ホントはチビチビと読み進めたかったんだけど~、さすが諸星大先生、展開の妙味が素晴らしく、途中で止められない。

 アッちゅ~まに読了で、なにやらもったいないコトをしてしまったような……。

 次の巻は秋に出るそうな。

 あせらず、あわてず、の諸星御大の速度をば見習うべしかな。

 

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 以前、腰痛でO整形外科に処方されてた塗り薬をば、あちゃこちゃに塗布。

 筋肉痛の緩和を願いつつ、寝っ転がり、中華料理についての本を読む。

『中華料理四千年』、とタイトルがでっかいが、なかなか面白い。

 

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 例外も多いが、中華料理は基本、4文字で書かれる。

 そのポイントさえ掴んでおけば、「食材-調理方法-味付け」が瞬時に判るのだそうな。

 

 (ロウ)と書いてあれば、豚肉をさす。

 牛肉なら牛(ニウ)、鶏肉なら鶏ジー、羊肉なら羊(ヤン)、と肉の前側に固有名が置かれる。

 それらに「(ピエン)」がくっついていれば、スライスした肉、「(デイン)」とあればさいの目切り、「(スー)」で細切り、「(クァイ)」でぶつ切りとなる。

 

 で、調理方法を示す部分として、

 (チャオ)    炒める

 (バオ)     強火で炒める

 (ドウン)    とろ火でじっくり煮込み

 (ヂャー)    揚げる

 (カオ)     じっくり炙る

 (チン)     澄ます・素材は1つで醤油味ではないものを意味する

 (ゴン)     片栗粉でとろりと

 清蒸(チンヂェン) 下味をつけて蒸す

 紅焼(ホンシヤオ) 炒めて醤油味で煮込む

 撹拌(バン)    混ぜる

 などなど。

 

 それらにさらにくっつくのが、味付けで、

 (スアン) 酸っぱい

 (ティエン)あまい

 (シエン) 塩からい

 (ラー)  からい 主として唐辛子のからさ

 (クー)  にがい

 この5つが基本。「辣」が基本の1つになってるのが、いかにも中国だっちゃ。日本なら「醤」か。

 

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 概ね以上の組み合わせ4文字でメニュー内容が知れるというコトらしい。

青椒肉絲(チンジャオロウスー)」  

 {青椒}でピーマンやらシシトウを、{絲肉}で細切りの豚肉をいう。

紅焼海参(ホンシヤオハイツアン)

 {海参}でナマコ、これを{紅焼}、炒めた後に醤油煮込み。実にストレート。

炒魚片(チャオユイピエン)」    

 スライスした魚の炒め物。何という魚なんだか判らないところがポイント。食べてのお楽しみという次第か? 日本にも似通うネーミングあるね、「白身魚のフライ」とか。(たいがいスケトウダラらしいが)

清炒虾仁(チンチャオシャーレン)」 

 これを分解すれば、むいた{仁}・エビ{虾}・だけの{清}いためもの{炒}と個々が意味されるが、たいがいキュウリなども入っていて必ずしも単品素材でもない。が、メインとなるモノの調理具合はこの4文字で判るという仕掛け。

 

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満漢全席」が、日清戦争の頃、西太后の全盛期に頂点に達した宮廷料理ということは薄らボンヤリと知ってはいたけど、西太后が没した3年後に清王朝は滅亡。その動乱辛亥革命-君主制が廃され中華民国ができる)と共に宮廷料理人達も方々に逃げるしかなく、調理の秘伝やら伝統も四散。今の「満漢全席」とはまったく違うものだったということを知る。

 客が店に予約を入れると、日時の指定は店側がおこなって客はそれに従う。

 3月3日の午後6時から食べたいは通用しない。3月4日の午後7時に来るなら食事を出す……、という次第。

 一皿の料理は全部食べてはならず、必ず残す。

 箸は1度手にするや食事終了まで置いちゃダメ。

 などなど、あれこれの決まり事の上で、信じがたいような料理が続々に出ていたようだが、さらに年数が経ち、あの苛烈な文化大革命が終わった1979年には、北京で「満漢全席」が食べられる店はただの1軒にまで「粛清」されていたというから、中国では政治動向でもって料理までが右往左往するというのが、ま~、いわば1つの伝統的習俗というか、生きるがゆえの処方というか、連続と裁ち切りがせめぎ合っての4千年の大河というコトなんだろう。

 

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              箸は縦に置かれる

 

 4文字メニューが増えてったのは清の時代以後のようで、清王朝全盛期西太后が産まれる100年以上前)の詩人・袁枚(えんばい)が残した料理本随園食単』を眺めると、あんがい3文字が多い。

 時代の変化が料理メニューにまで浸透したような感じもありあり……

 

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 ちなみに「酢豚」は、「咕咾肉(クーラオロウ)と3文字だそうで、「咾」はオトナを意味するから、脂分の多い豚肉を使ってるというコトになるらしいけど、「スブタ」という方がなんだかボクには美味っぽ~い。

 これにパイナップルを入れちゃうのは日本がオリジナルと思ってたけど、違ってた。

 清の時代に欧米人の居留地が出来て(英国がアヘンを清に売ってた頃ね)、そこのレストランやらで使われだしたそうな。

 当時のパイナップルは稀少な食材だったから当然に酢豚単品のネダンは高かったろう、思うがや。

 要は、清国に駐在の英国人らが悦ぶ味だったわけで、中国人が好みとしていたワケじゃ~なかったんだねぇ。

 当時の英国は清(中国)から茶葉や絹や陶磁器を大量に買うんだけど、逆に清に売るモノがない……。支出ばっかりじゃ~、いわゆる貿易赤字となる。

 ま~、それでアヘンを清で売って、「輸出入」のバランスをとったわけだな。ひで~なぁ。

 パイナップルが入った酢豚は、そんなドサクサのさなかに産まれ、すぐに定着して中華料理の大きな顔となり、今や我が舌をも悦ばせてくれてるワケだけど、フムフム……、酢豚の背景にも「歴史あり」だな。 

 

 この3月1日から中国政府は台湾産パイナップルの禁輸をおこなう。 

 台湾で作られるパイナップルのほぼ9割が中国へ輸出されているんだね。

 台湾の農産物収益として、これはかなり大きい。

 それを全て禁じ、要は……、云うことを聞かない台湾に圧力をかけようというわけだ。姑息というかエゲツナイというか、チカラづくのムテッポウ。

 対して台湾、産地の桃園市の市長は、

決してたじろぎません

 と決意表明だ。それもあえて日本語でだ。

 日本に向けてメッセージを送ってるわけだよ、SOSとして。

 詳細はこちらこっちやら。

 なんか、応援したいね……。むろん、台湾の方を。

 現状で、日本には西友などが輸入し、売ってるみたいだけど、ま~、日本政府は中国にビビッて何もアクションしないと思う。コロナ渦の右往左往をみるまでなく、将来を見据えた決断は遠い夢。

 が、そうであるならホント、な・さ・け・な・や、の中国と日本。

 

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 台湾のパイナップル(年中食べられるけど、旬は4月~8月だそう)。この写真は台北ナビから転載