らっきょう好感

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『BladeRunner』の印象を決定づけたロイ・バッティ。彼を演じたルトガー・ハウアーが亡くなった。(75歳・オランダにて逝去)映画の中の死を迎える直前の最後のセリフは、

「思い出はすべて消える」

 といった意味合いのものだったけど……、哀悼しつつも、同映画にまつわる思い出の数々が切なさをおびて、めぐる。

 故ニ〜ゼキ君と香港の某模型メーカーと東京で会合し、ロイ・バッティのフィギュア開発を進めたのも、もう遠い昔と思えば、切なさに愛おしさもからむ。

 香港経由での版権取得ができず、結局、android 001 という名で商品となったのが残念だったけど、ロイ・バッティの象徴としての鳩をパッケージに入れることは出来た。

 映画の中の鳩は、ロイの手を離れ、雨中に飛び立っていったね……。

 

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 この夏の長雨。『BladeRunner』の酸性雨ではないにしろ、日々浸透され、夏という感じが薄い。

 けども庭の植物どもは大成長。アッという間に雑草が土を覆う。

 

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 小庭では玉砂利の通路にまでポリゴナムが延び茂る。

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 アスパラも大きくおごって、ちょっとオバケっぽい。

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 さてと___。

 長雨が影響したワケはなかろうけど、食べ物の好みが変化し、従来はさほど食べなかったものを率先購入の今日この頃なのだった。

 フランス料理のアレとかイタリア料理のソレとかならカッコ良いけど……、カッコ良さとは無縁な「らっきょう」を買って悦にいってるんだから、どうかしてる……

 なので、上記1行を書いてマルを置いた途端、

「書くのヤメよ~かぁ」

 と、思わないでもなかった。けども、嗜好変化を否定するワケにもいかない。

 

 だいたい、「らっきょう」というのは子供の頃から好きでなかった。

 サルに「らっきょう」を与えると、皮をむきにむいて、に何も入っていないと判って顔を赤らめて怒り出す……、という実話だか創作だか判らん話があるようなシロモノで、自ら買ったことなど、ただの1度もなかった。

 カレーに添えられたのを黙って食べる程度な、まさにソエモノの一品以外の何物でもなかったワケだ。

 ところが突然、その添え物が白磁の宝石みたいに輝きだす思いにかられ、スーパーの漬物コーナーでもって、一袋を買い求めてしまったのが変容のスタートだ。

 どって~コトのない袋入のヤツ、ね。

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 その1粒を口にするや、

「うまいじゃないか!」

 第1声として、そう呟かざるをえなかった。

 歯ごたえのシャッキり感が良い。酸味と甘味の風味良し。淡く鼻に抜ける特有の匂いも良し。

 この3連良しヨシで勢いづき、気づくと、一袋ぜんぶ食べちゃったのだから始末が悪い……、というか、

「始末しちまったぜっ」

 なのだ。

 そっすると~、また欲しくなる。

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 次にスーパーで求めたのは、鳥取産を鳥取で漬けた、いわば本場モン。(もちろんビニール袋に入ってるよ。自宅にて容器入れ替えね)

 20粒入ってない程度なボリュームのくせに、先に買った中国産らっきょうを日本で漬けた~ァ、とは大違い。

 酸味と甘味の、見合ってハッキヨイのバランスが格段に良くて美味しいのだった。

 先に食べた中国産日本漬けのモノより、シャープさがあり、視力検査的に物申せば、中国産日本漬けのそれが0.80.9あたりなら、鳥取鳥取漬けは1.21.4くらいにクッキリ感が明瞭なのだったからタマンナイ。いわば視界クリア、味覚が全方位的に明るいのだ。

 

 さほど好きでもなく、どちらかといえば無視に近かった「らっきょう」が、突然に価値あるものと化して食卓の上位に赤丸急上昇してきたのが不思議でしかたない。

 さらに深追いして云うなら、ラッキョウという名が好みでもなく、なんだか落語家の名のようでもあるし、楽して狂う、みたいなケッタイな連想もしちゃって、辣韮という漢字なんか読めもしなかったワケだ。

 ともあれ、トシをとると食の嗜好も変わる、というのは判るハナシではあるにせよ、いきおい、それが「らっきょう」というのはカッコ悪い。

 しかし、事実は「らっきょう」に今まさにチャンピオン・ベルトを渡してるんだから、しゃ~ない。

 いっそこの場合、トシは関係なく、我が舌の味覚中枢が拡大したか、あるいは衰退だか減退したか、そのどっちかかも知れないと疑ってもみるけど、理由はわからない。

 だからあえて、カギカッコ付きで「らっきょう」と記して、

「これ1つの特異点ね」

 自分の中で区別化を図ってもいるんだけど、パリポリバリ、噛みごたえ愉しめ、味を愉しめ、うまいコトに変わりなし。

 ここ2ヶ月近く、サバ缶を食べていないから、何かそれに変わる刺激を求めてというハズもない。

 近ごろのサバ缶ブームで、新規参入の商社らしきが中国産、フィリピン産、韓国産、などで店頭攻勢をかけて来て、けれどいずれもチープ、ボクは合格点をあげられず、いっそ、

「要らない、こんな不味いのは」

 ブームの擾乱に眉をしかめて、それでつい国産モノにも遠ざかってしまってる。永くサバ缶に取り組んできた日本のメーカーズにも迷惑なハナシじゃあろうけど、それと「らっきょう」は、ま~、たぶん関係ないだろう。長雨も関係はない。

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「らっきょう」はビールに合う。

 これを日常食とする国は日本以外にないと思われるけど、ビール大国のドイツでもスーパーで売ってるようだ。

 乳酸発酵による酸っぱいキャベツをビールで流し込む国民ならば、甘酸っぱい味付けの「らっきょう」が売られて、おかしくはない……。ひどくポピュラーではないにしろ、そこいらのスーパーにあるということは、そこそこ売れており、ビールのお伴になっているという次第じゃなかろうか。

 ただ厳密にいえば材料はラッキョウじゃない。パール・オニオンとかいう小粒なタマネギのようだ。でも、在ドイツの複数のヤパーナーがネット上でこれを「らっきょう」と公言してるようでもあるから、味覚似の仲間であることは間違いないだろう。

 オニオンではなくってラッキョウそのもののベトナム産瓶詰めもドイツのスーパーにはあるようだから、やはり酸っぱい系列なこの小粒はそれなりに好まれているのだろう。

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 カクテルの世界では1粒をそのままグラスに沈めた酒があるようだけど、飲んだことはないし、さほど興味もない。むしろ、そうやってドイツで売っているなら、それってソーセージとかウインナーとかフランクとかと相性がいいというコトじゃなかろうか?

 舌を焼くような熱々ジューシーなウインナーと冷やしまくった「らっきょう」。

 うん。ゼッタイに似合うと思う。

 もはや「らっきょう」はカレーのそばでジッとうずくまっていなくてイイ。大手をふってウインナー6本の横にドド~ンと20粒ほど、大きな顔で居座っていてヨシ。

 であるなら、「らっきょう」業界は自信をもってドイツの食品界に売り込みを図ってもイイのでないかしら。

 ご飯と「らっきょう」がメチャに相性が良いとは思えない。軽度に焼いたパンにバターを塗り、熱々なウィンナー2本に「らっきょう」を刻み込んで挟んじゃう、というようなのは考えられるけど、ご飯にのっけての1対1な関係となると、なんだか絶妙に間(ま)が埋まらず、やはり、ご飯とおかずの中間点でのワンポイントとしてのクッションが妥当かとも思うと、なかなか置き所が難しくって、お・も・し・ろ・い。

 むしろ、単独単品で存在誇示が1番に似合うのが「らっきょう」と云ってよいような気がするが、見極めにはもう70粒ほど、ポリパリ噛んでのみ込んでみなきゃ~自信がない。♬