左側を走ってね

この所、徹夜が多い。
といっても、24時間フル稼動という次第ではなく、昼間や夕刻の早い時間に仮眠はとっているので正式には徹夜というワケではないのだけど・・ 夜間から午前中にかけて、極めて懸命に仕事をしておりますという図式。大小はあれど複数のプロジェクトの、その一部の仕事をこなすために、奮闘しておりますのですワイ。だいたいが夜行性の習癖があって、それがここ数週、ややひどくなってるというアリサマだ。
数日前だか、その徹夜のさなか、身体中が硬張ったので、ちょっと休憩と思い、自転車に乗ってフラリと外に出たよ。

朝の7時半くらい。
平日だから当然に通勤と通学の時間だ。
ゆえに人っけの少なめな住宅街の中をゆったりと彷徨うみたいな感じで自転車散歩をしたのであるが、細い三差路でいきなり女子高校生の自転車が飛び出てきおった。
細いといっても道路は道路であるから、当然に自転車は左側を通行し、ましてや、見通しのきかない三差路ゆえに自転車とてもソ〜ロソロというのが我が常識なのだけれど、この女子高校生はそうでなく、右側から、それもけっこうな速度でもって三差路にバ〜ッと出てきおった。
運悪く、そこにボクの自転車が通りかかったワケだ。
避けようもない。
出合い頭の衝突。
このコがチャンと左側走行しておれば、衝突など有りえないのだが、なんせ右側から出し抜けでニュッと、だ。
視界はブロック塀でさえぎられてる。
こっちはほぼ停止に近い状態ではあったけど、南無三・・。
『ガチャン〜!』
ボクは全身を突っ張らせ、かろうじて転倒はまぬがれたけど、高校生はもんどり打ってその場にひっくり返った。
彼女の自転車のカゴの中のカバンが1メートルばかし飛んだ。
「おい、ダイジョウブか。気をつけないとダメだよ」
カバンを拾ってやりながらそう申すと、そのコは、
「えっ? あたしがですか〜?」
起き上がりながら顔を上気させている。
一瞬、あたしがですか〜の意味が判らず、まじまじとそのコの顔を覗いてやった。
意外とかわいい。
転倒して、ブラウスの前ボタンが外れ、紫色に花の刺繍があしらわれたブラジャーが見える。近頃の高校生のブラは紫かよ〜〜・・ と興味が即効でそっちに向いちまったのは恥とせねばイカン。
イカンが・・ あたしですか〜の意味するトコロもイカンでのはないかと視線を変更しつつ、
「自転車はね、左側を通らなきゃイカンよ。見通しの悪いのだからスピードも気をつけなくちゃ」
と、クレームをいれ、
「で、ダイジョウブかい?」
もう一度尋ねる。
起き上がり、自転車を起こした彼女は、ふてくされたような笑みを浮かせ、
「ダイジョウブです」
すぐにその場から去ってった。

「・・・」
う〜ん。やはり、高校で自転車走行の勉強を教えねばイカンな〜〜・・ 小学校に入学したさい校庭でちょっと教わる程度じゃイカンな〜、と思ってしまうのだったが、足と手と肩が痛い。
こちらの自転車のハンドルは曲がってる・・。
見ると、右足のスネの界隈が僅かだけど出血だ。
フレームに取り付けてる輪っか状になったワイヤーロックに足が押しつけられたと見える。
左足の外側の腿は、これは先方の自転車がダイレクトにぶつかったのだろう・・ 打撲だ。
転ばぬよう咄嗟に懸命に踏ん張ったゆえ、それらの傷は相手の衝撃をもろに吸収した痕跡というワケなのだが、数日が経って、いま、その打撲痕は硬くなり、黄ばんだ色になってズッキンズッキンと痛んでる。
いくら気をつけて走行していても、突っ込んでこられてはタマラナイのだ・・。
なワケでだな・・ 思わぬ散歩になって帰還したものの、やはり電圧が下がるよな〜。
仕事する気が失せるというか、即座にまた集中に戻るって〜〜のが出来んわな〜。
結局、朝の8時過ぎにビールの栓をカパ〜ッと開け・・ 友人に取り溜めしてもらった「鬼平犯科帳」のDVDを眺める。
あんがい・・ 好きなのさ。
仕事する気力が出てくるまで・・ のつもりで鬼平を見る。
でもね・・ 見始めると、オモチロイじゃんか・・
「もう一本、ビール開けるか・・」
って〜なコトになっちまいやがんの。
これって二次災害と云わんか、の・・。