サターンVの永久展示

Google Earthの画像はちょくちょくと更新されているので、今まで見られていたモノが見られなくなるというコトも、ある。
テキサスのヒューストンにあるジョンソンスペースセンターにはアポロを打ち上げたサターンVの実物が横たえられていて、これは1977年からズ〜〜〜〜ッと展示されていた。

屋外にだ。
だからGoogle Earthで探索すると、当然ながら、横たわったサターンVのでっかいボディが眺められ、そこに実際には行ったコトがないけれども、ちょっと嬉しい眺めとしてあった次第なのだが・・ なにしろ1977年以来、いわば雨ざらし状態での展示だったがゆえ、相当に傷んできていたようである。
塗装がはげ、あちこちが腐食し、錆び、ボロボロな状態と化していたようである。
展示物とはいえ雨ざらしゆえ、日本の自動車修理工場の片隅でホコリにまみれて朽ち果てつつある自動車の風情を思えば、どのようにボロになっているかは自明であろう・・。
そこで、より堅牢な永久展示品とすべく2004年から、このサターンVの修復と共に、サターンVをそっくり屋内展示とすべく工事がはじまっていたのだった。
すなわち屋根が出来ちゃうのであるな。
このレストアと新造の工事が今年の7月に終わった。
Google Earthの画像更新は部分的に行なわれるので、まだ、しばらくは、旧来の画像が出てきて、屋外のアポロ・サターンVを拝めると油断してたら・・
おやま〜。
更新が早い。
屋根で覆われた展示場が画像として出てきちゃう。
ちなみに、サターンVの実物は、アラバマのU.S.スペース&ロケットセンターにもあって、これも長らく屋外展示されていたのだけど、ヒューストン同様こちらも屋内展示されるコトになった。
アラバマといえば、海もない内陸で、なんでNASAの施設があるのと訝しむ人もあるけど、ここにある NASAマーシャル宇宙飛行センターは、フォン・ブラウン博士が、米国陸軍のために、ジュノーやジュピターミサイルを開発した場所なのだった。 そのジュピターミサイルを発展させたのが、アポロを打ち上げたサターンロケットというワケゆえ、大いにユカリある地なのだ。
修復工事が終わってオープンは来年、2008年の1月末だそうで、実物を空から眺めるコトが出来なくなるのは寂しい気分もあるけれど、屋内展示の方がダンコいいのは判ってる。大賛成だ。
てな次第ゆえ、こちらはGoogle Earthで今も、屋外展示のアポロ・サターンVを眺められる(07年の11/4現在)。
ボクは正直なところ米国という国のコトを、さほど好みに思わないのだけれども・・ お金を費やして施設を整備し、それを多くの場合、無料で観覧できるという・・ 文化資産に対する考えがキチリとしている点は、とても羨ましい。

国家も動くし、企業も個人も、こういったプロジェクトにお金を出す構図が、米国にはあって、そこも感心する。
ヒューストンのジョンソンスペースセンターの展示修復費用に関しては、ざっと250億円くらいだそうな。
その半分を国が助成し、半分を寄付でまかなっている。
寄付金を集める仕組みがキチンと出来ているから、こういったコトが出来る。また、その仕組みにのっとって寄付金も集まるんだ。半分とはいえ125億円も集まるのが、ス・ゴ・イわ・・・。
U.S.スペース&ロケットセンターのホームページを見るに、ここでも寄付を募っているが、それが"乞い"としてあるのではなく、"一緒になって博物館をより良くしましょう"という感触が濃厚にあって、そこもいい。
http://www.spacecamp.com/saturnv/
ご当地の行政もこの寄付金収集に協力し、たとえば、このロケットセンターをモチーフにしたオリジナルの自動車のナンバープレートを交付し、その収益の一部を寄付に廻すといったコトまでやっているようである。
そのU.S.スペース&ロケットセンターには、実物大のサターンVの模型が立った状態で置かれて、その"高さ"としての威容を眼で確認でき、そのそばの大型の建物内にて実物のそれが横たわった状態で展示というコトになる。
この模型は実は1999年に完成しているのだけど、サターンV・ロケットの"高さ"を見せるがために、わざわざ100メートルを超える等身大の模型を構築するというトコロに感嘆をおぼえる。
「親切やな〜」
というよりも、立った状態では、
「実際にはこ〜だったのですよ〜」

という大きさに対する訴えが明白で、ボクなんぞはそこに凛々しさをおぼえもする。
人を数名、他の天体にまで運ぶには、これほどの大きなモノが必要であったのですよ〜、というストレートな表現として、"縦方向に設置"の、この実物大模型は大いに価値ある逸品と思える。
その長大な大きさに比して、今のスペースシャトルなんぞは小さなもんだ。比較しちゃ気の毒だけど、シャトルはあくまでも地球の外には出られない乗り物なのだ。
いずれ、そのスペースシャトルも博物館入りする時期が来る。
米国は、きっと、このスペースシャトルも素敵な方法でもって展示するに違いない。
今、30代を過ごしている人に云わせると、
「アポロって何か歴史って感じですけど、スペースシャトルは自分と同じ世代のもんだから、強く魅かれるし、強く親しみを持ってますよ」
ってな・・ コトを申される。
至極、当然であります。
で、そのシャトルが廃止される時、たぶんに方々は寂しさを募らせたりもするんだろうな〜・・ と予測するんだけど、きっと・・ 米国では、品のいいシャトルの博物館が出来ると思うよ。
だから、寂しく思わないで、イイ。
ボクが住まう岡山市にはデジタルミュージアムという、実に可能性高き"箱"が出来てはいるのだけど、大容量のデジタルアーカイブを集積したサーバーという使い方さえもされず・・  作られて早々なのに早や風化させられつつある現状が残念だ・・。