続・ペルー南部に隕石落ちた

昨年のいつだったか、ペルーに落ちた隕石について触れたけど、その詳細というか後日談がやっと届いた。

つい一週間ほど前、日野市の明星大学を会場にして行なわれた「日本スペースガード協会」主催の研究会にて報告があったのだ。

07年の9月15日の白昼、人間くらいの大きさの小天体が大気圏に突入した。
衝突角度が45から60度という高角であったから、アポロやスペースシャトルのような大気減速はほとんど受けず、音速の15倍〜20倍くらいの速度で、いわばまっしぐらに落下したようである。
チチカカ湖の近隣、デサグアデーロ(Desaguadero)のプーノ(Puno)地区に火球が落ちた瞬間に、現地から1600キロ離れた地点でも地震計の針が揺れた。隕石がもたらした地震計での記録というのは過去になく、この世に地震計なるものが現れて以来、これは初の、地球外の物体がもたらした記録というコトらしい。
衝突時刻は16時40分14秒(世界時)。
落下点は赤茶けた荒涼がだだっ広く連なった場所であったゆえ、死傷者こそなかったけれど、農家の牛は衝撃に転んでツノが折れ、おっちゃんやおばちゃんは腰が抜け、ちょっと経って、おそるおそるに外に出てみると、飛散した土砂に直撃されて屋根にバコバコ穴があいてて、またビックラしたといった按配であったらしい。
直後、頭痛やら吐き気を訴える住民が多々出てきた。
ペルーには隕石の専門家がいないらしく、要請により、ペルー地球物理研究所のイシツカ・ホセさん一向が現地に赴き調査した。
簡易的調査でもって放射能汚染はないと結論づけられたものの、頭痛や吐き気の主たる要因は判らない。
現場には深さが6m、直径13mの深いクレーターが出来、計測するに。衝突時の質量は2.5トン。推定直径は80センチから1.1mくらいであったようである。
13mもの大穴をうがつ衝突の凄まじさというものは、いったいどのようなものだったろう。
はるか遠方の地震計が揺れを感知した程だから、その振動はものすごかったであったろうと想像する。音も揺れも尋常ではなかったろうなと茫漠と想像する。
めったなコトで牛は転ばないのだ。四つ足でしっかり立っていたであろうはずが、転んだ上にツノまでが折れたというのだから、とんでもない衝撃であったろう。牧草をはんでたらいきなり風圧が寄せ、吹っ飛んだような感じだったのか・・。
ニュースは直ぐに世界を駈け、一週間もすると米国から、隕石ハンターなるものが現れて、現地住民に、
「隕石を掘り出して大金持ちになりましょう」
と説明会めくものを開き出し、クワやらスコップを持ってクレーターを掘り出し始める。
ホセさんや地元警察はあわてて市長やら国会議員に連絡。
さすがにこれは問題となった。http://www.livinginperu.com/news/4840
10月1日に保全命令が出て、ヤマ師らの掘り出し作業は中止となった。
でも、周辺に飛び散った隕石片と思われるものは持ち出され、すぐに、Desaguadero-meteoriteとして市場に出たようであるから、逞しいなぁ、人間は。
ちなみに、なんと日本でも買えるのだ。
http://store.shopping.yahoo.co.jp/specimen-lapiz/lapiz2200.html
しかもだよ、隕石ハンターさんのサイン入りだというから、ある意味、ものすごい。
幸いかな、落下直後に熱帯性の降雨があって、たちまちクレーターはちょっとした池になり、掘削という次第にいかなくなった。
地磁気測定によると、クレーターの最深部あたりに推定直径が40cmくらいの隕石の本体がある可能性が高いとのコトだ。
水をたっぷりたたえたままクレーターはいま、ビニールシートで覆われている。
1000年に一度か2000年に一度あるかないかの、これは"歴史的遺物"であろうから、今後はこのクレーターの上に屋根を作り、博物館を作り、あわせて天文台の建設もと・・ 心ある方々は夢と意気込みを膨らませているようながらお金はそんなにない。
雨季になると延々と雨が降る地域なので、そうなると、いま溜まっている水はあふれ、ヘタをするとクレーターそのものがかき消されてしまうようなコトとなるらしい。
それを心配し、太陽系小天体を専門とするゴンザロ・タンクレディさんといった天文学者が現地を調査し続けているという。このゴンザロさんはウルグアイ共和国の人だ。わざわざ出向いて調査しているワケだ。
持ち出して売ろうとする人や保全しようとする人・・  おもしろいなぁ、人間は。