エウロパ

年があけてほぼ2週。
先の連休。この10年来の慣習となったK夫妻の訪問と静岡はT社H君のあいつぐ訪問。
長々とヨタバナシを繰り出すだけだけど、いつのまにかの習癖として、ここからボクの"新年"が始まるような感じ。
いわばこの2週はエンジンをかけたけど暖気させるだけでギアは入れずで、彼らの"年始"訪問によってやっとローに入れるみたいなアンバイ。
年末年始の「サンダーバード博」もあった関係で… およそユックリしちゃっているワケだ。
今年は福山のY君もやって来てのヨタバナシ連弾。
尊顔拝しつつの聴いたりしゃべったりの時間は愉しいもんだ。個々人の中の変わらないものと多少に変わったコトなどなど、1年のうつろいを濃く感じるこの逢瀬がイイのだ。
"逢瀬"というのは男女間の密かな会合という場合に用いるようじゃあるけれど、その昔には逢瀬と書いて"あふ"と読んで広義な意味あいで使っていたそうであるから、使用してはいけない法はない。


その連休もあけ、深閑な朝の3時過ぎに外に出ると、冷感の中、西の空の低いところに真ん丸い月があり、左斜め上に木星が光ってる。

最近、その木星の衛星エウロパの画像が新たに作られて、これはNASAの作品なのかな? 
なかなかイイ。
ハッブル宇宙望遠鏡の観測に基づくイメージ画で、毎秒3000Kgの大量の水が地表からおよそ200Kmまで噴出している様子。
この観測の成果でもって、今まで謎だった、木星の外粋に水の分子が極めて大量に存在していることのメカニズムも説明できそうだ。

このようには肉眼視は出来ないから絵が作られたんだろうけども、これっくらいエウロパから水が外宇宙に向けて噴出されているという構図。
衛星の軌道が超巨大な木星の引力から1番に離れた時点でこの噴出は起きているようであるから、かねて云われた通り、表層の氷が潮力で裂けて、内部の"海"から水が散るというアンバイ。
ドラマチックじゃないか。
これほどの規模となると、潮力による運動エネルギーの熱エネルギー転化も途方もないだろうから、水は熱水かも知れない…。
なにより、このビジュアルの秀逸はエウロパ木星に1番に近い所を廻っている時の情景を、エウロパ側から想像できることかな。

エウロパの地表(氷だ!)から見ると、空中全域が木星なのだから、壮観じゃないか。眩いくらいな明るさでもってガスがうねってる光景が空いっぱいだ。
その色彩とベチャリと申せばサイケデリック感あふるる渦というか、フラクタル的様相というか… 圧される感覚ではあるまいか。
ま〜、そんな次第でデスクトップに絵を置いた。

これは1度、直に味わってみたいもんだ…。
デートの場所として、エウロパは最高じゃなかろ〜か。
おいしいレストランも豪奢な一夜を堪能のスイートルームも確保出来ないけど、尋常でない迫力は保証されるはず。
この場合はちゃんとした"逢瀬"でもあるから、ま〜、お忍びだね〜。
その不穏にして隠密な気配を煽るべくの背景としての木星の雲。
昂揚の果ての絶望か、それとも一縷の光明か… そこを今は知れないがゆえの暗示としての異形の厚き雲。実に"絵"になる。
ゆるやかに変化(へんげ)する雲模様には常に何かの形が刻々顕れては消え、失せてはまた出てくるのではなかろうか。


その昔に小松左京SF小説で、木星の厚いガス大気の中を浮遊するでかいエイのような生物が描かれているのを読んだことがあるけれど、今のボクには、それはかのダイオウイカめくな姿であって欲しいな。
全長50Kmとか100Kmみたいな、地球尺度でない法外サイズなジュピター・ダイオウイカが何百匹もゆらりと浮遊して、もちろんこの場合、それは生物ではなくって雲が彩なす偶然のカタチなのもかしれないんだけども、それがガス雲に見え隠れしているのをエウロパから眺めるという構図、ね。
エウロパからはそれは微少な点にしか過ぎないだろうけども、ライブで眺めるわけだ。
見上げつつ彼女が、
「なんだか淋しそう…」
とでも告げてくれたら、イイね〜。
稲垣足穂は『弥勒』にてこれに近似する場面を描き…、その直後、彼女の両方の掌はこちらの顔面にふいに押し充てられ… 唇を求められるワケなのだけど、
「貴女にも似合わぬ!」
咄嗟に、一応、タルホ同様な当惑な拒絶の言葉をつぶやくにしても… 後の展開はボクらは… きっと違うな〜。形而下的なコトになっちまうわな〜。
そもタルホなら、色恋沙汰をジュピター軌道に持っていきませんわいね。


さ〜、妄想はよして仕事しよう。(苦笑)
課題の… 某所で展示予定の電車を造らなきゃイカン。
それも複数1ダース近く。
電車でゴゴゴ〜・風が泣いているんだ。